お酒の神様
降って湧いて出たネタの投稿です
クリスマス近くになると流れる曲で、美玖は不思議に思うことがあるのだ。
ここは一応「教師」と名のついた職に就く「父親」に聞いてみるべき、そう結論付けた。きっと授業の如く、分かりやすく教えてくれることだろう。
「……えっと」
「どうしたのかな? 美玖君」
昔の癖をわざと残したまま、養父の良平が笑顔で訊ねてきた。
「ずっと、『お父さん』に聞きたいことがあって……」
「質問を聞く前にもう一度聞きたい!」
何を? そう思ったのはごくごく自然のことで。どうやら良平は、「娘に質問される」というのを心待ちにしていたらしい。
「『もろびと』さんというお酒の神様のことをうたっている歌が、どうしてクリスマスに流れるんですか?」
この質問に、良平の笑顔が凍りついたという。
美玖の中ではこう訳されている。「『もろびと』さんが来てお酒が湧いた」と。
それに気づいた良平は、とある人物二人を助っ人として呼んだ。
「Little Ladyの質問に答える機会が出ると思わなかった」
そう喜ぶクリストファーを美玖は不思議そうに見ていた。もう一人助っ人として呼ばれたはずの保は、美玖をぎゅっと抱きしめている。
「一応賛美歌だからな」
「……賛美歌だったんですか?」
そこからか、と頭を抱えるのは無論、保とクリストファーである。良平と悠里は「あ、やっぱり」という顔だ。
「My Dear Sonの言うとおりだよ。クリスマスキャロル『民みな喜べ』に別詞をつけた日本のクリスマス賛美歌だね」
「クリスマスキャロル?」
「映画や物語もあるが、クリスマスに歌われる宗教的な民謡だよ。私としては『民みな喜べ』の方が馴染みはあるんだが」
それはさておき、とそこからは保が話を繋げてきた。
「『もろびと』というのは、漢字で『諸人』。つまり多くの人。ただし、『こぞりて』は『来て』と訳さない」
「え!?」
その解釈に悠里と良平までもが驚いた声をあげた。
「せんせぇ……」
「専門じゃねぇんだからしゃーないだろうが」
保とクリストファーの非難めいた視線に、良平は開き直っていた。
「『みんな集まる』と訳したほうが正しいんだ。で、次は区切るところを勘違いしているんだな」
「区切るところ、ですか?」
「『酒、湧きませり』ではなく、『主は、来ませり』だ」
そこまで説明すれば、美玖はすぐにわかる。既に泣きそうである。
「ぶっちゃけ、『イエスをみんながずっと待ち望んでいました』ってことになる」
「……そういえば、クリスマスはお誕生日でしたね」
しょんぼりとする美玖を保が撫でまわそうとしているのを、良平と悠里が奪い取った。
「欧米ではね、クリスマスは家族と過ごすものなのです。ですが、今年は両親にも遠慮してもらって、お祖母様を招待して、四人でゆっくりと過ごしましょう」
美玖ちゃんの好きなケーキと料理を用意して。そう、悠里は締めくくった。
元になった話は、活動報告にて!!




