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「初心者VRMMO(仮)」小話部屋  作者: 神無 乃愛


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カナリアのイースター その一


 毎度のことながら、「TabTapS!」内でも「World On Line」内でも、イベントが溢れているとカナリアは思ってしまう。

 本日は「World On Line」に招待されている。

「カナリアちゃーーん!!」

 ぎゅっと抱きついてきたのは、カナリアの従姉、リリアーヌである。思わずカナリアも抱きつき返した。

「今日はイギリス方面に出張だ!」

「えぇぇぇ!?」

 二人の従兄、イッセンの爆弾発言に、二人は怯えた。


 そう、二人揃って英語は苦手なのである。

「んなこと言ったってしゃーないじゃん。日本は桜まつりイベントだけど、キリスト教圏はイースターイベント真っ最中なんだから」

「……いっくん、もしかしなくても」

「うん。ルーファスさんに誘われた。ロイさんもいるよ」

「ご免こうむりたい」

「俺がりりと付き合ってるの、ロイさんも知ってるから大丈夫」

 にっこり微笑んでイッセンが言うものの、リリアーヌは嫌な顔をしていた。

「……だって、俺とロイさんでりりのどこが好きかずっと競ってたんだもん。りりが誰かを選んだら、潔く身を引くっていう約束で」

 リリアーヌの顔が一瞬にして真っ赤になった。それを見たマープルが「やっぱりカナリアとリリアーヌ(ふたり)はそっくりね」なんて言っていたなど、二人は知らない。

「で、二人から。『最近付き合いが悪い。祝いとして一緒にイギリスサーバのクエスト強制参加』って言われた」

 で、どうせならカナリアも二人に紹介しよう思ったということらしいのだが。


 カナリアは人見知りを発動したのだ。そんなカナリアを見つつ、イッセンは「こっちでもウサ耳つけたら可愛いだろうなぁ」としか思っていない。慣れとは恐ろしいものである。

 そんな思い()に油を注ぐがごとく、リリアーヌの父親・リュートがぼそりと呟いた。

「これ、クリアするとイースターバニーのコスチュームがドロップするのか」

 きらん、イッセンとリリアーヌの目が一瞬にして狩人と化した。

「りり」

「いっくん、もちろん!」

「ウサコスは絶対に貰う!!」

 二人の声が重なった。


 慌てふためくカナリアの手を引っ張り、あっという間にイギリスサーバへとたどり着いた。

<やる気になってくれたのは嬉しいんだが、イースターコスチュームは最低でもイギリスサーバの人間が二人いないとドロップしない>

「えぇぇぇ!?」

 ルーファスの言葉に、すぐさま残念そうな声がイッセンとリリアーヌから出た。

「美玖にウサコス」

「美玖ちゃんのウサ耳は正義なのに」

 不特定多数の前でカナリアのリアルネームを呼ばないと決めているはずの二人が、無意識に口に出し、リアルorzの姿になっていた。

<どうしたのさ>

 遅れてきたロイドがそんな二人を不思議そうに見ていた。

<彼女にイースターコスチュームを着せたかったんだそうだ>

<……誰?>

<イッセンとリリアーヌの知り合いらしい。詳しいことは聞いていない>

<名前をお伺いしても?>

 見知らぬ二人に声をかけられたカナリアは、後退ることも出来ずに硬直していた。

<俺とりりの従妹。プレイヤーネームはカナリア>

 何とか立ち直ったイッセンがあっさりと紹介する。カナリアはイッセンの後ろ(というか、その後ろのリリアーヌ)に隠れてしまっている。


<イースターバニーのコスチュームを着せたいと思うのが分かってしまったよ>

<ルー、君もか。僕もだ>

 二人はあっという間に意気投合した。

 とするならば、ともう一人誰かをイギリスで登録しているプレイヤーが必要になる。適当なプレイヤーでは、何となくだがイッセンが許しそうにもない。

<どうするかな>

 誰か知り合いはいないか。イッセンならばいるだろうが、一人だけとなると難しい。

<ジャッジさんなら喜んで来てくれそうだけど、日本で登録してるしな>

<私の知り合いでいいというのであれば、一人呼ぶが>

<ん~~。み……カナリアに言い寄らない、怖がらせない、非常識な動きをしても怒らない、が最低条件かな>

<私達ともあまり組ませたがらない理由が分かったよ>

 カナリアの非常識な動き。もうすでにしている。NPCに挨拶と自己紹介をしている上に、アイテムを差し出していた。……「World On Line」ではその辺りにいるNPCにアイテムを譲渡することは出来ない。そして、何故かお茶まで振舞おうとしている。

<さすが、ミセスマープルのお孫さんというべきか>

「美玖――!! こっちでそれやっても意味ないからね?」

「そう……なの? みんなと仲良くなれないの?」

 仲良くなるためかーい! 日本語を解する二人は思わず突っ込みを入れた。

「美玖ちゃーーん! その辺の草は薬草違うから」

「え? ただの草むしり」

「やっても意味ないから!」

 イッセンとリリアーヌがカナリアの行動にいちいち突っ込みを入れている。そして、それに対する頓珍漢な回答に、ロイドもルーファスも突っ込みを入れている。

 ……なんというか、カオスである。イギリスサーバで一番人気のない場所での集合だったのかが分かった気がする二人だった。


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