表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「初心者VRMMO(仮)」小話部屋  作者: 神無 乃愛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/47

「嘘」にまつわるエトセトラ ――その一――

エイプリルフールにちなんでいくつかを四月中にUPしていきます

晴香はるか冬樹とうきの場合


「ったく! あいつらいい加減にしろっての!」

 VRゲーム上で怒り狂う女性、スカーレットをあやしているのは、ディスカスだ。

「また見合いか?」

「そうよ! 何が楽しくて、あたしよりなよっちい男と見合いせねばならん!」

 その言葉にディスカスはものすごく不思議そうな顔をした。

「お前より強い男っていないだろ」

「いるから! 兄貴とか親父とか! 他にもいるっ」

「……その時点でアウトだ、阿呆。お前の性格知らなかったらただのブラコンにファザコンだ」

 ただ単に強いものに惹かれているだけというのが始末に負えない、そうディスカスは思ってしまう。

スカーレットの父親は武において言うに及ばず、兄はある意味規格外。そいつらと比べるのが間違えていると説教したい気分だった。

「そういや、この間兄貴がぎっくり腰やらかしてさぁ。年なんだなって思ったわ」

「さり気に俺をディスってないか? 俺、ディッチよりも年上なんだが」

「ディスをディスるって洒落?」

「ほぉぉぉ。これ以上俺に愚痴を聞いて欲しくないようだな」

 ディスカスも暇ではない。しかもゲーム内において、作成依頼を受けた武器が山のようにある。

「すまん」

 その謝り方もどうなのだ。

「強いというなら、クリスさんあたりはどうだ?」

「アレかぁ……。ジャッジと親戚にはなりたくないわ」

「お前ね」

「ってか、あの人の場合、あたしが逮捕しそうでやなのよ」

 余裕があると思っていたら、そちらが本命だったらしい。何となくだが、分かってしまった自分が恨めしい。

 間違いなく、色々やらかしている人だろう。


 そのあとも、どちらともなく愚痴を言い合っていた。

「兄ちゃーーん!!」

 唐突に聞こえたその声に、ディスカスは飲んでいた茶を噴いた。

「……知り合い?」

「俺の兄貴の子供。親父の跡取り」

 一番来てほしくないやつに、ゲームストーカーをされていたようである。

「やっと見つけたーー!! 兄ちゃん、帰ってきて……」

「断るっ!」

「何でだよっ! 帰ってこないと父さんと祖父さんにこのゲームしてるって言うぞ!」

 何故そうなる。

「もうすぐ見合いもあるんだしさ」

「聞いてないぞ!」

「電話でない兄ちゃんが悪いんだろ。それに今言った」

 ふざけるのも大概にして欲しい。留守電の一つでも入れればいいはずである。この時、ディスカスは折り返しの電話をしていないというのを、棚に上げていた。


 ぴこん、とゲーム内で使っているスマホにメール着信があったと知らせが来た。

『なんだったら、私と結婚前提に付き合ってるって嘘つけば? 今日は幸いにもエイプリルフールだ』

 後日言われたら、それで誤魔化せばいい。そういうことだろう。

「残念だが、見合いは受けれないな」

「なんでっ!?」

「結婚前提に付き合ってる人がいるからな」

「そんなウソ通用しないぞ!」

「目の前にいてもか?」

 すっと、ディスカスはエスコートするかの如く、手を差し出す。

「初めまして。結婚前提に付き合ってるの」

 言い方がものすごく軽い。長年の付き合いがある人間なら、間違いなく嘘だと気づく。

「え? リアルも女性?」

「そぉよ~~。信じられない? 声までは誤魔化せないものよ」

 くねっとしなを作るな! 気持ち悪い!! ディスカスは内心で毒ついた。


 こういった対応に慣れていない甥っ子は、顔を真っ赤にしてログアウトした。

「……サンキュ」

「どぉいたしまして。あとでなんか奢って」

「なんだ? 酒か? そのうち色々見繕ってディッチのところに送っとく」

「ありがとー」


 これで一安心……おそらく日付を見て甥っ子も後日「エイプリルフール?」と聞いてくるだろう。


 のはずだった。

「本当ですってば! ディスカスさんがそうスカーレットさんを紹介してたんですっ!」

 ギルド本部でそんな声が響いていた。

「なぁ、誰一人お前とレットが結婚前提で付き合ってるって聞いてないんだが」

 ぽん、と肩を叩いたのはディッチだ。

「あれは……」

「だって、ディスカスさんが、スカーレットさんをエスコートしたり、優しく抱き寄せたり……」

「うん。ありがとう。うちの奔放な娘をもらってくれる決心つけてくれて」

 にこにこと微笑むのはパパン。

「あ。ちょっと待て……いや、待ってください」

「挨拶は特にいらないよ。ディスカス君のことはある程度分かってるし」

「結婚式はどーすんだ? あり? なし?」

「ちょっと待てや!」

 ギルドないが別の意味で暴走している。

「あ、本当に結婚しないとカナリアが落ち込むぞ」

「そう来るか!?」

 見ていた相手が悪かったらしい。


 埋められた外堀。これをほじくり返すにはかなりの労力が必要そうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ