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「初心者VRMMO(仮)」小話部屋  作者: 神無 乃愛


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24/47

良平の災難

久しぶりの小話です(^▽^)/

今日は三話同時更新ですので、よろしくお願いします

 日頃から身体を鍛えている良平(ようへい)だが、今回ばかりは間が悪かったとしかいえない。


 美玖のことを誹謗中傷する()教え子の後始末に追われ、しばらく身体を動かせていなかった。学校にて重い資材等を運搬し、「腰が少しおかしいな」とは思った。

 まさか、翌日腰痛で起き上がれなくなるとは思いもしなかった。


「兄貴、四十過ぎたんだから、そのあたりも気を付けないと」

 お前だって今年四十になるだろう、という言葉は飲み込んだ。今晴香()に何かされたら、間違いなく良平は負ける。

「親父が定年退職してて助かったよ」

「ほんとだね。そればっかりは」

 良平は結婚しており、妻である悠里(ゆうり)も一応免許は持っているが、何せ取得してから一度も運転していないペーパードライバー。病院に行くにも、買い物に行くにも、運転させるのは心許ない。

「……んでもって、なんで晴香が?」

「今日非番だから、揶揄(からか)いがてら手伝いに」

「揶揄いは要らん。……助かる」

「帰りがけに湿布買ってこないとね」

 湿布の世話になるのは、学生以来だ。そして、仕事を休むのは、数年前にひいたインフルエンザ以来である。

当時は進学校で教鞭をとっており、受験期のお馬鹿が特効薬を飲んで無理やり学校に登校し、クラス中をインフルエンザで蔓延させた。そこで良平も罹患し、悠里から二人の両親、そして晴香まで感染したという、懐かしい話である。

「よ……良平さん」

「悠里、この世の終わりみたいな顔をしないで。今の状態じゃ、ハグも難しいから」

「ぎっくり腰でもいちゃつくのか、このバカップルは」

 晴香の言葉に、悠里の顔が真っ赤になった。

「お義姉さん、このあたりに調剤薬局か処方箋取り扱いのあるドラッグストアってある? 出来れば、ドラッグストアがいい」

 そこで良平に聞かないあたりが晴香である。

「処方箋取り扱いのあるドラッグストアなら、近いところだと隣の地区にあるショッピングタウンにあります。調剤薬局だと、この近くにある小児科クリニックの隣かしら」

 学童でボランティアをしているだけあり、医院系も頭の中に入っているらしい。

「つか、湿布位近場のドラッグストアで……」

「最悪ね、第一種薬品の取り扱いがあるところがいいらしいのよ。同僚がそんなことを言ってたの」

 同僚も冬場にぎっくり腰をやらかしたらしく、情報を仕入れたらしい。

「親父も年だしさ、なってもおかしくないと思って情報仕入れたけど、まさか兄貴で活用するとは思わなかったわ」

「……やっかましいわ」

 弱弱しい声で良平は文句をつけた。……まともに動けない己が悔しい。



 結局、ぎっくり腰ということで、晴香が聞いたお勧めの整骨院でマッサージしてもらい、その整骨院の院長もお勧めするということで第一種薬品のテープと鎮痛剤、そして腰痛ベルトを購入して帰宅した。


「オッサン、やっぱり年か」

「君()まで留めさしに来るのヤメテ」

「ヤダ♪ 楽しそうだもの」

 帰宅すると、紗耶香が遊びに来ていた。しかも級友を連れて。紗耶香の級友も良平の様子を見て笑っていた。

「……何なの、君ら」

「オッサンが弱ってるところ見れるよ、って言ったらついてきたよ」

「揶揄うのは通常の時だけにして。俺は今、すっごく心折れてるの」

「オッサン、昨日あんた、腰おかしいまま重い荷物持ったり走ったりしてたって聞いたよ。そのあたりは自業自得。保健室で湿布薬貰えばよかったんだよ」

「……うっさい。寝れば治るはずだったの」

「これだから健康優良児は」

「さすが、脳筋なマッドサイエンティスト」

「先生、サイボーグじゃなかったんだね」

 紗耶香もその級友も言いたい放題である。

「……君ら、悪いけど帰って」

 もうヤダ。なんで揶揄われなきゃいけないの。良平は心の中で静かに泣いた。

「うん。帰るよ。じゃ」

 あっさりと紗耶香たちが帰り、家は静かになった。


「良平さんごめんなさい。ああ見えて紗耶香ちゃんたち、心配してたの。良平さんの姿見るまではあんな風じゃなかったし」

「……そなの?」

 ベッドでうつ伏せになり、テープを張ってもらいながら悠里とそんな話をした。

「えぇ。皆で出し合って腰痛用のベルトとか購入してきてくれたの。あとはスポーツドリンクと湿布」

 そう言って悠里が渡してくれた腰痛用ベルトはかなり「いいお値段」のするものだった。

「良平さんの顔を見たら安心して、あんな言い方になったみたい」

「……そっか」

 近場とはいえ、そうやって来てくれるだけでもありがたいのだろうが。……こういう時は軽口を叩かないでほしい。

「学校で礼を言った後、そのあたり注意しとく」

「どこまでも『先生』なのね。良平さん」

「そりゃ、教師ですから」

 隣に悠里を横にならせ、良平は悠里の頭を撫でた。


 そんなことをして数日過ごし。まだ腰に違和感があるものの、動けないほどではなくなったため、学校へと向かった。

「センセー、だいじょぶ?」

「動ける程度にはなったから、問題はないかな。しばらく車通勤の上、重いもの持てないが」

「部活はー?」

「……もうしばらく休ませてくれ。そこまで回復しておりません」

「らじゃー。部長に伝えとく」

 良平を見るなり、学年問わず生徒たちが声をかけてきた。一人一人に返事をしつつ職員室に向かう。



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