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ブクマ1500件突破お礼小話~マープルさんのとある一日 その1~

少し前に本編で予告していたお礼小話です。

長かったので数話に分けます。ただしまだ書き終わっていませんOTZ

 マープルがゲームに繋ぐ時間は大抵決まっている。


 昼過ぎに一度、そして夜に一度である。夏場であれば、一番暑い時間に繋ぎ、夕方に色々と動く。冬になれば逆転し、二時くらいまでに家の仕事をして、それから繋ぐ。


 だいぶ暑くなってきた今は、お昼を食べて食器を洗ってしまえばログイン時間だ。


「マープルさん、こんちゃっす」

「あら、今日は早いこと」

 顔なじみになったプレイヤーに、マープルが返事をする。


 この、世界最大のVRMMORPG「World On Line」に関してだけ言えば、まだVRがメジャーでなく、「VRゲームは危険」と言われた時期から夫と共にやってきているゲームだ。去っていったゲーマーもいれば、新しく入ってくるゲーマーもいる。


 その中で、マープルが経営する、喫茶「安楽椅子」はβテストの頃から店構えを変えていない。ある意味夫とのもう一つの思い出の場所でもある。


 最初の頃のVRMMOは酷かった。五感を刺激するはずなのに、食事に味がしない。痛みなどばかりが酷いと言われていた。それに、明確なガイドラインがなかったため、事故が多発したのも大きかったはずだ。

 今までのMMORPGでは「それなり」のスペックで妥協していた夫が、「World On Line」を始めるにあたって、最高のものを取り入れてゲームをしたのが功を奏した。子供たちもやったが、誰一人昏睡状態や精神崩壊に繋がったものはいなかった。

 β版から使い込んでいる、見た目二十代のエルフ女性キャラは、「World On Line」の名物キャラとして殿堂入りをしている。……ドワーフ男性で作成した夫のキャラも殿堂入りして伝説となってしまったが。

「さぁて、今日の営業のために食材を狩って来ましょ」

 エルフでありながら、得意武器とされる弓を使わず薙刀を使うスタイルは、皆が模倣している。途中で弓に逃げるエルフも多いが。

 ヒューマン族以外は、得意武器と魔法に「特化補正」というものがかかることでも有名だ。エルフの場合は弓と緑魔法。ドワーフはハンマー関係と土魔法だった。

 エルフの弓補正は、よほど変なうち方をしない限り、外れるということがなく、遠くから弓を当てた場合は、モンスターに捕捉されにくい。

 最初の頃はそれが嬉しく、使ったものだが、現在(いま)よりもマナーの悪いプレイヤーが多かったため、獲物を横取りされることも多かった。それからポアロ()に頼んで、薙刀を作ってもらったのだ。そこから薙刀と緑魔法をメインに戦っている。


「今日は、ラビリットとウケッコウが多い日ね。ラビリットの煮込みと、ウケッコウのから揚げ、それから卵料理がメインになるかしら?」

 ラビリットは兎のようなモンスターでウケッコウは鶏のようなモンスターだ。ラビリットは肉と毛皮をドロップし、ウケッコウは肉と卵をドロップする。

 最近では料理にも味がするようになり、喫茶「安楽椅子」は繁盛している。冒険者ギルドで待ち合わせをせずに、「安楽椅子」で待ち合わせをして狩りにいく者も多い。

「ギュウギュウもいればもっといいんだけど」

 欲しいモンスターを口に出してしまうのは、今に始まったことではない。

 ちなみに、ギュウギュウは牛のようなモンスターで、下級であれば牛乳と赤身を、特級になると霜降り肉に生クリーム、チーズにバター、それから赤身と牛乳そして、牛皮まで落とす優れものだ。

 モンスターを狩りながらも、ビービーンの樹でバニラビーンズと蜂蜜を採取し、木の芽が食べられるものは、採取していく。

 月桂の樹は庭に植えてあるため、他にも植えられるものがないかも見ていく。

 庭に植えておけば、それなりの量を確保できる。


 ある程度アイテムボックスが一杯になったので、今日の狩りは終了だ。



 裏口から店に入ると、孫のリリアーヌが来ていた。

「あ、お祖母ちゃん。これから仕込み?」

「その前に、小麦粉とお米を買ってこなくちゃいけないの。それから畑から野菜と油とかも持ってこないと」

「じゃあ、あたしが買ってくる。量は?」

「昨日のうちに注文してあるから、小麦粉は百キロ、お米は五十キロ」

「……一昨日もそれくらい頼んでなかったっけ?」

「それだけ食べにきてくれる方も多いのよ。それに今日は予約も入ってるし」

「予約?」

「ブラジルサーバーの方と、イギリスサーバーの方が連絡を寄越してくれてね、今日から日本サーバー限定で始まるクエストをやりたいんですって。そのパーティ結成のために安楽椅子(うち)を使うって」

「うっわぁ。いっくんあたりが喜んで連れて行きそう。あとパパとかさ」

「そうねぇ……。りりちゃんも行ってみる? 一応自動翻訳だってついてるし」

「そう思って一回だけついてったけどさ、二人とも英語で話すんだもん。なんかむかついてそういう時は一緒に行かないことにしたの」

 語学力が苦手な孫娘は、こういうときは消極的だ。逆に孫息子のイッセンは喜んでいく。そして、自動翻訳機能をオフにしながら楽しんでいる。

 人の楽しみ方は、やはりそれぞれだ。そして海外でも有名なゲームはこういうときに凄いと思う。


 夫が亡くなった時も、次々とお悔やみの言葉がゲーム上で届いた。しかも現実よりも多かった。二人とも現実世界でも社交的である。それなのに、それを上回ったのだ。

 そして、お悔やみを言うためだけに海外サーバーからきてくれた方も多い。


 それもあってか、日本と各国の運営会社からまでお悔やみをいただくことになった。


 それが、殿堂入りの始まりである。


 尚更この店が有名になり、繁盛しているのだ。


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