3 連行
箱に入れられ、3時間。退屈である。
「有馬くーん。好きな本はー?」
「なんだろ。グリとグラかなー?」
「わたしもー。」
会話が乏しくなり、返答も面倒になってきた。
「有馬くーん。好きなサイゼリヤはー?」
「なんだろー。京都駅前店かなー?」
「わたしもー。」
実際、京都駅前にサイゼリヤは無かった気がするが。
…さらに時間が経ち15分後
「有馬くーん。好きな線路はー?」
「なんだろー。五反田駅の2番乗り場の△4番乗り場の前あたりかなー?」
「わたしもー。」
もはや回答なんてもんじゃない。
五反田も行ったことないし、そもそも△4番乗り場なんてあるのかどうかも知らないし、傷があるのかも知らない
『着いたよー。おまたせ。』
ようやく着いたことに安堵する。
「や、やっとだぁ。」
『あの…水、欲しいです。』
『え、あ。ごめん。』
ムダルリッチは箱の中にペットボトルの蓋に水を注いで入れた。
ちなみにブロブディンナグにはペットボトルはあるが、アルミ缶しかないことが最近わかった。
『そういえばさ、ムダルリッチって器用だよね、私たちの服作ったり水注いだりさ』
沢野は水を飲むとムダルリッチに聞いた。
『うーん、そうだね。裁縫が趣味だったっていうのが活かせてるのかもね』
『そんなことより、俺たちを何処に連れてきたんだ?』
『あっ、説明してなかったね。ごめんごめん』
ムダルリッチは苦笑しながら話してくれた。
『実はさ、王宮からグリルドリグと同じような人が来たら連れてくるように言われてたんだ』
まあそういうことかと思ってたけど
『かなり遅くなったけど、寛容な人なの、王女様って?』
『んー、知らないけどそうなんじゃない?』
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一方王宮では……
『妾は動きとうない』
『そうは言いましても王女陛下。人民に白い目で見られてしまいますよ』
メイドらしき人物に説教されて、王女と呼ばれた少女は口を尖らした。
『そもそもグリルドリグのようなちみっこい人間がおるとは思えん、伝説みたいなものであろう』
『しかし、街で何人もが噂をしておられますし……』
『現に見たものはおるのか?妾はおらんと聞いておる』
『うっ……』
メイドの方は何も言い返せないらしく、口をモゴモゴさせた。
『なんじゃ、何も言えんのか。胸だけは立派だというのに……』
『体は関係ありません!』
そうはいいながらも腕で豊満な胸を隠しながらなので、説得力に欠けている。
すると、突如男の声がドアの前から発された。
『へ、陛下!!グリルドリグと同じ人種を保護しているという少女が王宮に尋ねて来ました!』
『……まことか?』
王女は眉を顰めながらも問いただした。
『わかりません、しかし本人曰く2人連れてきたとのことです』
『ふむ、面白い。動くとするかの』
『なんですか、自分の興味あることにはヤル気じゃないですか』
メイドは呆れながらも口は笑っていた。