光る石
登場人物
少年:第二次性徴を迎える前の、透明感のある声。好奇心旺盛だが、少しナイーブな一面もある。
店主:見た目は青年だが、落ち着き払った口調。言葉の端々に古き良き時代のニュアンスが混じる。
SE:カランカラン、と落ち着いたドアベルの音
SE:扉が開く音。店内の静かなBGM(アンティークな時計の音など)が少し強まる
少年:「おはようございまーす……」
店主:「あァ、君か。いらっしゃいませ。……ふふ、注文を聞くまでもないね。いつものホットチョコレェトでいいかい?」
少年:「(少し元気なく)うん。ありがとう、お兄さん」
SE:カップを温める音、ミルクを注ぐ微かな音
店主:「この時間にここへ来るってことは……学校の方は、今日はお休みかな? 今日は見逃してあげるけれど、明日からはちゃんと行くんだよ」
少年:「……ごめんなさい。今日はどうしても、退屈な授業の気分じゃなかったんだ。ここに来れば、何か違うことが起きるような気がして」
SE:コト、とテーブルにカップが置かれる音
店主:「(優しく)はい、ホットチョコレェト。……ちょうど良かった。久しぶりに面白い品が入ったんだ。店内を見てまわるといい。気分転換になるかもしれないよ」
少年:「わあ、おいしそう……。あ、本当だ。新しいのが入ってる。ここの商品は見てるだけでも楽しいよね。……あれ? お兄さん、これ、何?」
店主:「ん、あァ、それかい。それは知り合いの旅人が譲ってくれた物サ。――不思議な石らしいよ」
少年:「緑色の中に、少しだけ紫色が混ざってて、なんだかキャンディみたいだ。綺麗だなぁ」
店主:「なんでも、満月の夜の光をたっぷり浴びせると、内側から淡く光りだすそうだ。……そして、時々ね。その光の先に特別な扉が現れるらしい」
少年:「特別な扉? どこか、別の場所に行けるの?」
店主:「さァ。僕は試していないからね。でも、その旅人は信頼できる人だよ。僕の祖父の頃からの付き合いなんだ」
少年:「(石をじっと見つめて)旅人さんが持ってた、光る石……。ねぇ、お兄さん。僕、これ買ってみようかな。なんだか放っておけないんだ」
店主:「そうかい? なら……銅貨二枚で良いよ。いつも来てくれる君への、特別価格だ」
少年:「えっ、そんなに安くていいの? ……えっと、はい、銅貨二枚!」
SE:チャリン、と硬貨が触れ合う音
店主:「(微笑んで)丁度今日は満月だ。……扉が現れると良いね」
少年:「そっか、今夜は満月……。なんだか、夜が来るのが楽しみになってきた」
店主:「さァ、チョコレェトを飲み終えたら、もうお帰り。学校をサボって外をうろついているのが見つかったら、せっかくの魔法も解けてしまうからね」
少年:「そうだね。見廻りの先生に見つかったら大変だ。……帰って、夜まで少し眠ることにするよ。ありがとう、お兄さん! またね!」
SE:少年の駆け出す足音、ドアベルの音
店主:「(少年の去った扉を見つめて、独り言)……うん。彼にふさわしい、美しい扉が開くことを祈っているよ。ご来店、有難うございました」
SE:カランカラン、と扉が閉まる音
SE:時計の秒針の音が響き、フェードアウト
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