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オフィスラブは禁止のはずですが ~天然部下に落ちた敏腕ディレクター~  作者: 蒼狐


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7/11

第7話 オフィスラブは禁止のはずですが、花火大会の夜に並ぶ肩

猛暑のロケから数日後、プロジェクトチームで「慰労を兼ねた夏のイベント」が企画された。


場所は、会社から電車で40分ほどの場所にある大きな河川敷公園。

毎年恒例の花火大会が開催される夜で、社内有志の参加者が20名近く集まることになった。


藤原みおは、浴衣姿で少し緊張しながら集合場所に到着した。

淡い水色の浴衣に白い花柄、髪を緩く結い上げ、桜色の髪飾りを付けている。

普段のオフィスルックとは違い、ふわっとした印象が強くなり、天然な可愛らしさがより際立っていた。


「みお、浴衣似合ってるじゃん! 藍田さんに見せたいね〜」


加藤遥が、紺色の浴衣姿でからかうように言ってきた。


「遥、からかわないで……藍田さん、今日は来るのかな?」


みおが少し照れながら聞くと、遥はニヤリと笑った。


「来るよ。藍田さん、意外とこういうイベントにも顔出すタイプだから。楽しみだね」


河川敷に着くと、すでにブルーシートが広がり、ビールやつまみが並べられていた。

夜空の下、提灯の明かりが揺れ、夏の風が心地よい。


みおは周りを見回し、すぐに藍田朔の姿を見つけた。

朔はシンプルな紺の浴衣を着て、長い脚を組んで座っていた。

クールな顔立ちと浴衣の組み合わせが異様に似合っており、みおは思わず見とれてしまった。


(……藍田さん、浴衣もかっこいい……)


みおがぼーっとしていると、朔がこちらに気づき、冷たい視線を向けてきた。


「……藤原」


「藍田さん、こんばんは! 浴衣、すごくお似合いです!」


みおは明るく頭を下げた。

朔は短く頷き、みおの浴衣姿を上から下までじっと見つめた。

その視線は冷たく、しかしどこか熱を帯びているように感じる。


「……浴衣、着慣れているのか」


「えへへ、実は久しぶりです! 今年は頑張って着てみました。どうですか?」


みおがくるりと回ってみせると、朔の視線が一瞬、細くなった。


「……悪くない」


短い言葉。

しかし、その一言にみおの胸がどくんと鳴った。


しばらくして、花火大会が始まった。

夜空に大きな花火が打ち上がり、色鮮やかな光が河川敷を照らす。

みおは朔の少し後ろの席に座り、目を輝かせて空を見上げていた。


「わあ……綺麗……!」


みおが無邪気に歓声を上げると、朔が静かに隣に移動してきた。

肩と肩が、ほとんど触れ合う距離。


「藍田さん……」


「風が強い。近くにいろ」


朔の声は低く、冷たい。

しかし、みおの肩を守るように体を少し寄せてくれる。

みおは浴衣の袖をぎゅっと握りしめ、心臓の音が花火の音にかき消されそうだった。


花火が次々と上がる中、みおは勇気を出して小さく言った。


「藍田さん……花火を見ていると、なんだかドキドキします。藍田さんと一緒にいると、もっと……」


言葉が途中で止まる。

朔がゆっくりとみおの方を向いた。

冷たい視線が、夜の闇の中でみおの顔を捉える。


「……もっと?」


低い声で促され、みおは頰を赤くした。


「もっと……安心するんです。クールなのに、時々すごく優しくて……このギャップ、なんだろうって」


みおの素直すぎる言葉に、朔の表情がわずかに変わった。

冷たい仮面のまま、しかし瞳の奥に熱が灯る。


「藤原」


「はい……」


「お前は、本当に天然だな」


朔が低く呟いた瞬間、大輪の花火が夜空に広がった。

金色とピンクの光が、二人の顔を優しく照らす。


みおは朔の横顔をそっと見上げた。

冷たい横顔と、肩の温もり。

その落差が、夏の夜に甘いざわめきを生んでいた。


少し離れたところで葉山圭介が爽やかに笑いながらこちらを見ていたが、朔の視線が軽く彼を牽制するように動いた。


遥と松本翔が遠くからその様子を眺め、遥が小声で言った。


「藍田さん、完全にみおのこと意識してる……クールな顔して、肩寄せちゃうんだもん。夏、熱くなりそう」


花火が最高潮に達した頃、みおはそっと朔の袖を指でつまんだ。


「藍田さん……今年の花火、一番綺麗です」


朔は答えずに、ただ冷たい視線をみおに向けたまま、わずかに肩を寄せた。


オフィスラブは禁止のはずなのに、

花火の夜は、二人の距離を静かに、でも確実に縮めていた。


(第7話 終わり)

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