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無口令嬢、今日も色で嘘を看破します。  作者: ちょこだいふく


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2/20

爽やかな来訪者

「ようこそ、エリオット様。遠いところありがとうございます」


母セリーヌが柔らかい声で迎えると、

エリオットの揺らぎが淡い金色に揺れた。


——上辺の社交の色。

内側はやっぱり黒紫のままだ。


「こちらこそ、お会いできて光栄です。ローレンス家の皆さまにご挨拶できますことをとても嬉しく思います。」


声は優しくて、微笑みは完璧。

なのに言葉と揺らぎがまったく噛み合わない。


(どうしてそんな色で笑えるんだろ……)


私は喋らず、ただエリオットを観察する。

喋ると疲れるし“色”に気を取られて話がまとまらなくなりがちだ。


兄のエレンが、穏やかな笑みで歩み寄った。


「父が戻るまで応接室で待っていてくれ。母ともいろいろ話ができるだろう」


エレンの揺らぎは爽やかな青。

真っ直ぐで嘘がない。


エリオットはにこやかに頷きながら、

家の中をちらちらと、一定のテンポで見回している。


壁、棚、廊下、扉。

どれも“一応見てます”という動きじゃない。

なんと言うか…目的を探しているような視線。


(…ねぇ、何を探してるの?)


私は喋らないままイーサンを見る。


イーサンはほんの少しだけ顎を引いた。

——了解、という合図。


彼は自然な動きで、私の隣にスッと寄る。

誰も気づかない速度と距離感。


エリオットがこちらへ視線を向けてきた。


私は“必要最低限の礼儀”として、小さく会釈をした。


「…クララです。よろしくお願いします」


声は小さめ。

これ以上話すと、思考と“色”の整理が大変だから。


エリオットはにこっと笑った。


その瞬間、揺らぎの色が黒紫から赤に一瞬だけ揺れた。それは驚きや苛立ちの色に近い。


(なんで…今、赤が混じったの?…挨拶しただけなのに?)


その細かな違和感を、イーサンは見逃さない。


私の方へわずかに体をずらし、

エリオットとの視線をゆるく遮る。


「クララ様は、大勢の場だと少しお疲れでして」


短く説明をする。


「…そうでしたか。お気を使わせてしまい申し訳ございません…」


エリオットは柔らかく返したが、内側の揺らぎは再び濁った黒紫に戻った。


(やっぱり…ただの来客じゃない。この色、普通じゃない)


母は嬉しそうに笑っている。

兄も安心している。


家族の誰も気づかない。


私だけが“本音の色”を見ている。

そしてイーサンだけが、私の変化を理解している。


何を企んでいるのかわからないが、手を打たねばならないかもしれない。


静かな朝が、わずかに軋みを上げて傾きはじめる。

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