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無口令嬢、今日も色で嘘を看破します。  作者: ちょこだいふく


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18/20

家族への告白と祖母の目

応接室には、まだ少しだけ先刻の余韻が残っていた。


拘束されたエリオットはギルドの係員に引き渡され、室内に残ったのはクララとイーサン、そしてアルフォンス。


ほどなくして、父ローレンス、母セリーヌ、兄エレンも部屋へと入ってきた。


空気は張りつめているが、誰も声を荒げてはいない。


「……状況を説明していただけますか」


父が静かに問いかけた。


アルフォンスはゆっくり頷き、机に記録石を置いた。



まず、なぜクララが狙われたのか、アルフォンスは淡々と告げる。


「エリオット・ファルネストの供述は、記録石に収めてある。エリオットは、はっきりとこう言った」


「“クララ様は、誘導が効きそうだった。従順で、押しに弱く、扱いやすい。結婚すればローレンス家の財産・地位ごと手に入る”」


クララは胸がきゅっと痛んだ。


家族の色の揺れが広がる。怒り、悔しさ、しかし誰一人クララを責める気配はない。


エレンがゆっくりと息を吐く。


「……つまり、クララを……“駒”にする気だったと」


「その通りだ」


アルフォンスは静かに頷いた。


「クララ嬢が特別だからではない。“利用しやすい”と思われたからだ」


その言葉は残酷だけれど、真実を淡々と置くような言い方だった。


クララは視線を落とす。


イーサンがそっと隣に立ち、言葉にはしないが、その灰色に“支える”力があった。



少し不思議そうな顔で父が問う。


「……しかし、なぜクララはその異常に気づけたのです?」


アルフォンスは、ここで初めてクララを見る。


「…クララ嬢には、“揺らぎの眼”があるからだ」


家族が息を呑む。


母が静かに言う。


「その……揺らぎの眼というのは……?」


アルフォンスは穏やかな声で続ける。


「魔力の感情流を“色で捉える”能力だ。非常に希少で、危険も伴う」


エレンが小声で呟く。


「……そうだったのか」


クララは小さくうなずいた。


「…ずっと……隠していました。お祖母様に“言わないように”って言われてて……」


母がはっと目を見開く。


アルフォンスは静かに頷いた。


「クララ嬢の祖母マルグリットは、その能力を熟知していた。“この力は狙われる”“まだ若いクララには荷が重い”そう言って、それとなく見守るよう存在を私だけに知らせたのだ。…もっとも、イーサン君は“色が見える”とまでは知らぬが、クララ嬢の“反応の癖”から何か特別な感受性があると察してはいたようだがな」


父ローレンスの揺らぎが、深い青に変わる。

怒りではない。誰よりクララを理解しようとしている色だ。



母はクララの手にそっと触れた。


「……言えなかったのね。怖かったのでしょう?」


クララは目を伏せる。


「……はい」


エレンは真剣な声で言う。


「クララ、俺たちに黙っていたからって、責めるつもりなんてないよ。むしろ……一人で抱えていたんだなって思う」


父も頷いた。


「どう説明して良いかも難しかっただろう、1人で抱えてつらかったな。」


家族全員、驚いているのに落ち着いていて、クララを責める色はひとつもない。


クララの胸がじわっと温かくなる。


(……受け入れられた…いや、初めからそうだったんだ…)


静かに、緩やかに、孤独が溶けていく。



アルフォンスは立ち上がり、まとめるように言った。


「クララ嬢の眼がなければ、ローレンス家はエリオットに呑まれていただろう」


家族が息を呑む。


「危険を見抜き、耐え、通報し、最後には自ら罠に足を踏み入れ、証拠を引き出した。この家を守ったのは…クララ嬢だ」


クララは、返事をする前に胸が熱くなった。


イーサンが小さく囁く。


「クララ様……誇ってください」


アルフォンスが満足げに頷いた。


「ローレンス家は、良い娘を持った。

 そして……“揺らぎの眼”を持つに足る心もな」


クララは、小さく、小さく息を吐いた。


家族の色が穏やかに澄んでいく。


揺らぎは、もうほとんどにじんでいなかった。


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