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第1話 「”不思議”な人」

男子生徒登場。

今回は少し短めです。

「え…え?」

突然現れた男子生徒に私は動揺していた。

背が高く、学年を示すバッジは目の前の男子生徒が3年生───つまり上級生であることを示していた。

いったいいつからそこにいたのだろう? 気配はまったくしなかったのに…いや、あんな状態で

気配などわかるわけもないか…。

「…」

彼は無言でこちらを見ている…。そういえばさっきの独り言はどこまで聞かれてしまったのだろう。

「あ…あの…いつからそこに…?」

恐る恐る聞いてみた。すると彼はふむ、と口元に手を当てて考える素振りを見せて

「ふむ…”いつから”と聞かれたなら”初めから”と答えるべきか…いや、性格には”自分を変えられたらいいのに…”のくだりからだな」

「…!」

つまり初めから…!?

私はすっかり恥ずかしくなってしまい、その場で俯いてしまった。

周りに誰もいないと思っていたのに、まさか全部聞かれていたなんて…。

「キミは何か誤解しているようだな」

「え…?」

突然の彼の言葉に顔を上げる。

「キミは自信の発した独り言を俺が”聞いていた”と思っているようだがそれは誤りだ。

俺の目的は”キミが目の前に立っている本棚の本を取ること”であって、キミの独り言は”聞こえた”と表現した方が正しい。つまり俺は故意にキミの独り言を聞いたわけでは決してない」

「あ…えっと…」

いきなり饒舌にまくし立てる彼に私は少し戸惑ってしまった。

なんだか不思議な話し方をする人だ…なんか、こう…学者さんみたいな…。

「一人で思案するのは結構だがそろそろそこをどいてもらえないか? 俺も暇というわけではないんだがな…」

そう言って彼は私の目の前にある本棚を見る。

「あ…す、すいません!」

慌ててそこをどくと、彼はすぐにその本棚から数冊本を取り出して歩き出した。

あれ…? でもこの方向って…。

「あの…」

躊躇いがちに声をかけると、彼はそこで足を止めゆっくりとこちらを見た。

その視線に思わず目をそらしてしまいそうになったが。それを抑えて聞いた。

「本を読むなら机はあっちじゃないんですか…?」

この図書室の机は本棚と本棚の間の開けた場所に置いてある。彼が向かおうとしたのはそれとは正反対の方向だった。別の本棚へ移動するのだろうか…? でもあっちには…。

「そっちには図書倉庫しかなかったはずなんですけど…」

そう、彼の向かう先には例の「図書倉庫」しかない。あの場所に進んで行こうとする生徒なんてまず知らなかった。転校生だろうか…? でもそれならクラスで噂にはなるだろうし…。

一人わけがわからなかった私に対して、彼は「ハァ…」とひとつため息をすると、私を見てさも当然のように

「そんなことはわかっている」

と、それだけを言った。そのまま踵を返して立ち去ろうとする。

「で…でもっ! 図書倉庫は鍵がかかってますし…!」

図書倉庫の鍵は図書委員が管理している。今まで図書委員の中にこんな人はいなかったし、新学期ですでに委員は決まっている。彼が図書委員でないことは確実だった。

再度呼び止められた彼は面倒くさそうにこちらを見て、またため息をついた後

「そう思うならついてくればいい、”百聞は一見にしかず”説明するより実際にキミが見て確かめたほうが効率的だ」

それだけ言って、また歩き出す、私がどうしようか迷っていると

「ああ、一つ言っておくが、ついてくるにしろこないにしろ、ここで俺に会ったことは他言無用にして もらいたい、もちろんついてくるならこの先で見聞きしたことも含めて…だ」

そんなことを言った。

…正直、怪しいとは思う、誰も寄り付かない場所に何があるというのか、なぜ他言無用なのか、

彼の発言で私は余計に迷ってしまった。

そんな私の気持ちを察したかのように、彼は

「怪しいと思うならついてこないでもらえるか、そっちのほうが俺としても話が早い。

…もちろん俺のことは他言無用にしてもらうがな」

と、それだけ言って、さっさと先に行ってしまった。

「あ…その…」

私はどんどんと先に行ってしまう彼の背中を追うべきか一瞬迷ったが

「っ…!」

決心をして、そのまま彼の後を追ったのだった。


本当は1,2話をひとまとめにするはずでしたが。長くなりそうだったので一度切りました。

次回はようやく男子生徒の名前と素性が明らかになります。

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