4、五月四日①時計塔とビクトリア・ピーク
今日はツアーだ。終日、香港市内観光をする。
早起きをし、六時四十五分にホテルのバイキングへ行った。
内容的には、スクランブルエッグやらハムやらベーコンやらがあり、パンが何種類か鎮座ましましているといった、ホテルならではのものだ。
フルーツも豊富だ。特にパイナップルの味が濃くておいしい。
また、ジュースも絞ぼりたての果汁100%だ。実際に絞ぼったところを目の当たりにしたわけではないので、100%なのかどうかは半信半疑だが、とにかくめちゃくちゃおいしい。パイン,アップル,オレンジ,グレープフルーツ、すべてのジュースを一日目で飲み尽くしてしまった。
ホットコーヒーや紅茶はウエイターが淹れてくれる。さすが高級ホテル、教育が行き届いている。
ちなみに、なぜか木田が焼きビーフンに凝っていた。皿にてんこ盛りである。勧められたので次の日の朝食で食べたが、てんこ盛りにしないといけないほどのものなのか未だに理解し難い。人それぞれである。
バスに乗り、出発。九龍半島の南端部、尖沙咀地区の最南端へ来た。
尖沙咀の街は深夜遅くまで人通りが絶えることがなく、店も翌日は午前十時やら十一時に開店と非常に夜行性だ。香港を象徴するエリアであり、眠らない街ということで、別名〈不夜城〉とも言われている。
多くの高層ビルの中、説明を聞きながら、空へ向かって伸びる時計塔(前九廣鐵路鐘楼)の前で写真を撮った。
さて、すぐ近くの天星小輪へ行き、乗船。香港島へ移る。時間にして約十分ほどだが、オープンエアのため海からの景色はなかなか楽しめる。席は自由。
香港島に着き、またもやバスに乗ると、次に目指すは香港島の最高地点、ビクトリア・ピークである。片道は名物の登山電車、ピークトラムを利用。
なんと香港で最も古い公共交通機関で、開業は一八八八年という。レトロな二両編成で、山頂駅までを、わずか八分ほどで結ぶ。ほとんど四十五度の急勾配を、なんとはなしに掛けのぼってゆく凄い馬力の路面電車。まるでジェットコースターの登りだ。あまりに凄いため、このピークトラムはギネスにも載っているらしい。
今日は曇で霧がかっているため、如何せん頂上からの景色は堪能できないらしく、登りの途中で観光客がたくさんシャッターをきっていた。目の錯覚で斜めに見える木やマンションがとにかくおもしろい。
山頂へ着き、二十分の自由行動。
展望台で写真を撮る。やはり、展望台からはヴィクトリア港や高級住宅街が少々見え辛く、残念ながら一望できなかった。
ちなみに香港の夜景を楽しむなら、晴天が見込める十一月が最高だ。湿度も七十%ほどに下がるため、暑くもなく寒くもなく、まさに絶好の気候らしい。
帰りはツアーバスで下って帰る。しかし、これが私にとっては恐怖であった。というのも、山をぐるぐる周りながら猛スピードで下っていくのだ。ちょっとばかし、きつかった。
この時、下りながらに章さんの話が繰り広げられた。香港の相場である。
驚いたのが土地代だ。税金がないため、政府は民間人の土地代で国を動かしているのだ。お陰で給料の三分の二が家賃に取られているらしい。
しかし、水道,電気代等は安い。電気代なんて、一ヶ月二十四時間つけっぱなしでも三百円である。
ちなみに、章さんは高級マンションに住んでおり、なかなかに羨ましい暮らしをしているようだ。香港人にとってガイドは憧れの職業らしい。
話は続き、香港では赤,黄,緑の原色が多いが、これにはちゃんとした理由があるようだ。この三色、実は、赤は福(幸福)、黄は徳(財産)、緑は寿(長寿)の意味が込められているのである。これすなわち、「福,徳,寿」の三原則なりというわけだ。
ふむ、なかなか勉強になる。
また、多いのがスリのトラブルらしい。昔はカバンをスられても、近くのゴミ箱を漁ればパスポートは出てきたのだが、最近では日本人のパスポートは高く売れるらしく、絶対に返ってこないということだ。
確かに以前、テレビで見たことがある。日本のパスポートは国際的に評価が高いから、ほとんどの国にビザなしで入れるため、最高五十万円ぐらいで密売されているのだ。そりゃあ、返ってこないはずである。
やるのが普通と『不夜城』の小説に書かれていたあれは問題発言だと思っていたが、本当に不夜城の香港では普通の事だったんですね。
読んでくださって、ありがとうございました。
次回に続きます。