3、五月三日③チャイナTシャツと北京ダッグ
ホテル着。綺麗なロビーだ。ひとときの金持ち気分を味わう。
グッパで部屋を決めることにしたが、グッパの際、藤井がチョキを出した。「どこの部屋に行きたいねん」とツッコミ、笑った。
結局、部屋は私、木田、藤井と石場、福本の二組に別れた。
カードキーを受け取り、部屋へ入ってビックリ。想像以上に素晴らしい。ガイドブックの高級ホテルにも紹介されているだけあって、なかなかにゴージャスだ。
シックな雰囲気のツインルームで、テレビや冷蔵庫、ミニバーまで付いている。
バスルームを覗くと、エレガントなユニット式で、ガラス張りのシャワールームが、なんとも優雅さをそこはかとなく漂わせていた。どこまでも、心憎い演出だ。
取り敢えず自由行動のため、散策しながらオーダーメイドの店へ向かう。せっかくなので、チャイナTシャツでも作ってもらうことにしたのだ。
ロイヤルガーデンホテルの一階にある店で、チャイナTシャツをオーダー。出来上がりが楽しみだ。寸法合わせも済み、ホテルへ戻る。
ロビーで待ち合わせをする。なんの待ち合わせかというと、「夜食で予算三千円の北京料理を食いたい。いい所は知らんか?」と章さんに尋ねたところ、ツアーで一緒の夫婦と共に、章さん御用達のレストランへ連れていってもらうことなったのだ。
ロビーで待っている間、章さんにオーダーメイドの話をしたら、
「変な店なら、ちゃんと頼んだ日に仕上げてくれないことがあるよ。ほつれることもあるし、チャックが壊れることもあるし。私に相談してくれたら、ちゃんとした店を紹介したのに。騙されてない? 本当に大丈夫な店?」
と、言われてしまった。不安になる一同。
取り敢えず、食べ終わったら一度オーダーメイドの店へ念を押しにいくことに意見はまとまった。
さて、ロビーに皆が集まり、バスに乗ってレストランへ連れていかれた。
さすが北京料理。惜しげもなく北京填鴨(北京ダック)が一匹出てきて、焼き上がりを客の前でカットする、おなじみのパフォーマンスも本当にあった。
ちなみにまめ知識だが、北京ダックの食べ方は、まず薄餅という小麦粉を薄く伸ばして加熱した皮を広げて持ち、その中央に肉を一,二枚、ネギとキュウリを二,三本ずつ乗せて、甘みそをつける。次に皮の下の方を折り返し具が落ちないようにしてから、左右を畳んでしっかり包む。そして、口を大きく開いてガブリと齧るのだ。
さて、店員の手本通りにして、食べてみた。
正直、胃がもたれた。北京料理の調理の特徴は、肉が中心で、味は比較的濃く、油を使う傾向にある。
一日目に選んで正解である。
この時から気付き始めたのだが、なんというか、私は大雑把な人間だと思っていたが、どうやらマシな類いであったようだ。
ウエイトレスが我々の器に料理を盛ってくれるのだが、こちらの作法は器を持ち上げることが行儀悪く、こぼすことは平気という考えらしい。
つまり、平気でぼたぼたとスープやらチャーハンやらをこぼしながらに盛ってくれるのだ。たまごスープなんか、器からだらしなくたまごがたれている。
思わず、「いや、もう自分で盛るから君はいいよ」と言いたくなる。日本人には、ちょっと考えられないテーブルマナーだ。
なんにしても、北京料理は胃がもたれる。
デザートはおなじみの杏仁豆腐。しかし、豆腐自体には味がなく、シロップと共に口に入れ、自ら口の中で調理をしなければならなかった。
おいしかったが、大雑把である。
さてさて、料理も済み、再びオーダーメイドの店へ。
すると、もうそろそろ六十歳に手も届くだろうおばさんがこう言った。
「うちは二十余年も経営してるのよ。ガイドさんは皆なにかしらケチをつけるのよ。ガイドさんはね、連れていった店にチップを貰ってるのよ。だから、騙されちゃ駄目よ」
「…………」
一体どっちを信じたらいいんだァァ━━━ッ!!
あな恐ろしや、香港の街……。私はここでは生きていけない……。潰し合いの精神が普通のここでは、私などあっさり潰されるだろう……。
店からホテルへの帰路の途中、ヴィクトリア港を静かに眺める。
ガラス細工のナイーブな汚れなき純真無垢なハートを持つ私に、百万ドルの夜景が目にしみる……。
しかし、私はもう騙されないつもりだ。本当に百万ドルなのか疑わしいところだ。
読んでくださって、ありがとうございました。
次回に続きます。
ちなみに、こちらの作品は独断と偏見だらけのエッセイになります。
香港の皆さん、すいませんでした。
気分を害された方は、直ちに私から距離をとって下さい。




