1、五月三日①関西国際空港―→香港国際空港
《登場人物紹介》
《筆者と同期のゆかいな仲間たち》
大崎真………………筆者。
藤井(仮名)………時々抜けている。
福本(仮名)………陰のしっかり者。
石場(仮名)………よく笑い、よく喋る。
木田(仮名)………マイペース。
五月三日。午前七時半。
同期の藤井と、関西国際空港に到着した。
吹き抜けの建物が圧巻である。私の好きな空港、堂々の第一位を誇る空港だ。
予定よりも一時間早く着いたため、旅客ターミナルのカフェで、かりかりベーコンパンとシナモンパンとホットコーヒーの朝食を取る。
飛行機を乗りこなす、仕事ができるオシャレなビジネスマンの朝を気取ってみる。
腹も適度に満足し、ベストツアーの集合場所である、四階の中央団体受付カウンターへ行った。
現地代理店は〈STAR EXPRESS LIMITED(星港旅運有限公司)〉というところが行うらしい。
ぽつぽつと福本、石場、木田が現われ、八時二十五分にツアー客全員が集合した。
日本旅行のベストツアーの社員さんが手続きを済ませ、指示通りにチェックインカウンターで荷物を預ける。
そして、旅客サービス施設使用料を払って、セキュリティチェックを通過。
出国審査場でパスポートと日本人出国記録の用紙を提出。
国際線出発コンコースからはシャトルで移動する。
ゲートに到着すると、ボーディングブリッジを渡り、いそいそと機内に乗り込んだ。
航空会社はキャセイパシフィック航空(CX)で、五〇三便である。ちなみに席はエコノミーの56Aのシートであった。
十時二十五分、関空を無事離陸した。
これから、四時間の空を堪能する。
特にすることがないので、座席前に備えられたパーソナルTVで、香港映画を観ることにした。日本女優も出演しており、なかなかどうして、彼女は英語を上手くこなしていた。
ストーリーは主人公が香港警察の男で、暗黒街の悪者を逮捕するため、パートナーの男と共に都会の街を奔走するというもの。二人とも同じ髪型の上、中途半端なソース顔だったため、見分けるのにかなりの忍耐を強いられた。
日本女優は謎多き人物で、極秘任務で敵のアジトに乗り込む等危険な行為をし、主人公の男に敵なのかと誤解されたりする。
さて、ラストに近付くと、どうしたことか、いきなり主人公のパートナーが敵に撃たれて殉職する。
哀しむ暇もなく逮捕するため(というよりもカンフーアクションを披露するため)逃げる犯人を追う主人公。更に後ろを追い掛ける日本女優。数々のスタントシーンを繰り広げた後、なんとか苦労して犯人を逮捕することができた。
そして場面は変わり、空港で話す二人。
「君が日本警察の者だったとはね」
くすっと笑う女優。笑い返す主人公。そして、どちらからともなく抱き合う二人。
「今度、こっちへはいつ来るんだい?」
「それはあなた次第よ」
みたいな会話をして、女優の肩を抱きつつ出国審査場へ送る主人公。
気持ちを通わせる二人。
広東語のエンディングテーマが流れ出す。
キャストのテロップ。
香港映画おなじみのNGシーン。
劇終。
おいっ! パートナーはどうした! せめてお焼香ぐらいせんかい!
悲しみの余韻が残っていた私には、ちと冷酷に見えた主人公であった。
ちなみに、香港映画は、制作の際、出演者に脚本を渡さないらしい。というのも、先にそれで映画を撮られる危険性があるからだ。
一体どういう国なんだろう。一抹の不安がよぎるのであった。
読んでくださって、ありがとうございました。
次回に続きます。
すいません。もしかしたら、「この映画を知ってるけど、なんかちょっと解釈が違うんじゃないか?」と思った方がいらっしゃるかもしれません。
それは、なにをかくそう、お手洗いに立ったり、時折、外の景色を堪能したりと、映画に集中せずに、飛行機の旅をエンジョイしてしまったからに他なりません。どうか、ご了承ください。