模擬戦 2
模擬戦開始の直前、彬とアリスはお互い通信チャンネルを合わせた。
モニターにアリスの不機嫌そうな顔が映し出さる。
「ねえ、ちょっと」
と、アリスが彬をにらむ。
「な、なに……?」
「一応念を押しとくけど、あんた、自分の役割はわきまえてるよね?」
「う、うん」
「いい? 打ち合わせどおりあんたは徹頭徹尾私の援護! それだけでいいんだから」
「でも……」
「え? なんか言った? 私に口答えするの? あんたの実力で?」
「……分かったよ」
「それでいいわ。……にしても、よりによってなんであんたが私のバディなの? ホントありえない!」
アリスが捨て台詞を吐いて、チャンネルを切った。
一方、B組の巽と紫苑は余裕な表情でやりとりしていた。
「ったく。アリスもついてねーよな」
巽がいかにもバカにした口調で言った。
紫苑もそれにうなずく。
「ほんと、あんなグズと組まされるなんて同情するわ」
「まったくだ。――だがな紫苑。手加減無用だぜ」
「そんなの当たり前でしょう。この模擬戦の成果は今後の私たちの評価に直結するんだから」
「ならいい。――行くぜ!」
その直後、北条ユリが厳しい顔つきで、オペレーションルームから模擬戦開始の合図を送った。
「D1,D2――D3,D4! それでは戦闘を開始!」
ユリの合図と同時に、4体が一斉に動き出す。
今回の模擬戦は市街戦を想定しており、演習場の広大なフィールドには本物さながらのビル等の建造物がいくつも作られていた。
A組とB組、互いの機体の位置はまだ分からない。
「本当に足引っ張んないでね!」
「……了解」
アリスはそう言って操縦桿を操り機体を軽々前進させた。
慌てて後を追う彬。
が、アリスは彬のことをまるで気にすることはない。
巽と紫苑の機体の影を求め、ビルの間を進む。
それからしばらくして――
「あ、そこっ」
アリスはビルの影に隠れた紫苑の機体を目ざとく見つけ、彬に小声で呼びかけた。
「いいこと? 私が近接戦に持ち込んで一気に仕留めるから、あんたは上手く援護して。それ位はできるよね?」
「で、でも言うまでもなく敵は2体だよ? 最初っから突っ込んでいくなんて無茶だよ」
「そんなことないって、先手必勝よ」
「いや、らしばらく様子見した方がいいんじゃ?」
「黙って! こっちはあんたというハンデを負ってんだから、スピード勝負で行くしかないの!」
アリスはそう叫ぶと、素早くビルの合間から飛び出ていった。
彬はやむ無くアリスに従うことにして、機体を前進させ、巨大なアサルトライフルを構える。 ところが、緊張で手が震えて照準が定まらない。
「とったぁあっ!!」
突然紫苑の目の前に出現したアリスの機体。
それに驚いた紫音の機体が、ちょうど誘い出されるような形になって、ビルの後ろから前に飛び出てきた。
「今! 今よ!」
「わ、わかってる!」
彬がライフルのトリガーを弾き、銃口からペイント弾がセミオートで発射された。
が、紫苑の機体からは大きくそれ、流れ弾の一部がアリスの機体に当たってしまう。
「ちょ!! あんた何やってんのよ!」
「ご、ごめん!!」
アリスは苦々しげに舌打ちをし、サーベルを抜いた。
やむを得ず格闘戦に持ち込む気なのだ。
紫苑もサーベルを抜きそれを受けて立つ。
しかし最 模擬戦開始の直前、彬とアリスはお互い通信チャンネルを合わせた。
モニターにアリスの不機嫌そうな顔が映し出さる。
「ねえ、ちょっと」
と、アリスが彬をにらむ。
「な、なに……?」
「一応念を押しとくけど、あんた、自分の役割はわきまえてるよね?」
「う、うん」
「いい? 打ち合わせどおりあんたは徹頭徹尾私の援護! それだけでいいんだから」
「でも……」
「え? なんか言った? 私に口答えするの? あんたの実力で?」
「……分かったよ」
「それでいいわ。……にしても、よりによってなんであんたが私のバディなの? ホントありえない!」
アリスが捨て台詞を吐いて、チャンネルを切った。
一方、B組の巽と紫苑は余裕な表情でやりとりしていた。
「ったく。アリスもついてねーよな」
巽がいかにもバカにした口調で言った。
紫苑もそれにうなずく。
「ほんと、あんなグズと組まされるなんて同情するわ」
「まったくだ。――だがな紫苑。手加減無用だぜ」
「そんなの当たり前でしょう。この模擬戦の成果は今後の私たちの評価に直結するんだから」
「ならいい。――行くぜ!」
その直後、北条ユリが厳しい顔つきで、オペレーションルームから模擬戦開始の合図を送った。
「D1,D2――D3,D4! それでは戦闘を開始!」
ユリの合図と同時に、4体が一斉に動き出す。
今回の模擬戦は市街戦を想定しており、演習場の広大なフィールドには本物さながらのビル等の建造物がいくつも作られていた。
A組とB組、互いの機体の位置はまだ分からない。
「本当に足引っ張んないでね!」
「……了解」
アリスはそう言って操縦桿を操り機体を軽々前進させた。
慌てて後を追う彬。
が、アリスは彬のことをまるで気にすることはない。
巽と紫苑の機体の影を求め、ビルの間を進む。
それからしばらくして――
「あ、そこっ」
アリスはビルの影に隠れた紫苑の機体を目ざとく見つけ、彬に小声で呼びかけた。
「いいこと? 私が近接戦に持ち込んで一気に仕留めるから、あんたは上手く援護して。それ位はできるよね?」
「で、でも言うまでもなく敵は2体だよ? 最初っから突っ込んでいくなんて無茶だよ」
「そんなことないって、先手必勝よ」
「いや、らしばらく様子見した方がいいんじゃ?」
「黙って! こっちはあんたというハンデを負ってんだから、スピード勝負で行くしかないの!」
アリスはそう叫ぶと、素早くビルの合間から飛び出ていった。
彬はやむ無くアリスに従うことにして、機体を前進させ、巨大なアサルトライフルを構える。 ところが、緊張で手が震えて照準が定まらない。
「とったぁあっ!!」
突然紫苑の目の前に出現したアリスの機体。
それに驚いた紫音の機体が、ちょうど誘い出されるような形になって、ビルの後ろから前に飛び出てきた。
「今! 今よ!」
「わ、わかってる!」
彬がライフルのトリガーを弾き、銃口からペイント弾がセミオートで発射された。
が、紫苑の機体からは大きくそれ、流れ弾の一部がアリスの機体に当たってしまう。
「ちょ!! あんた何やってんのよ!」
「ご、ごめん!!」
アリスは苦々しげに舌打ちをし、サーベルを抜いた。
やむを得ず格闘戦に持ち込む気なのだ。
紫苑もサーベルを抜きそれを受けて立つ。
しかし最初からアリス機の勢いに押され気味だ。
チャンス――!
彬はもう一度ライフルを構え、紫苑に狙いを定める。
だが、アリスと紫苑の機体が重なって撃つことができない。
そこへ――
「グズめ、後ろがガラ空きだぜ!!」
巽が叫ぶ。
もちろん彬も巽のことを警戒していなかったわけではない。
が、敵は想像よりずっと速かった。
巽の機体にタックルされ、バランスを崩した彬人の機体は地べたに尻もちをつく。
それに気づいたアリスが後ろを振り向き、叫んだ。
「このバカッ! 油断しすぎ!」
アリスは紫苑の機体を突き飛ばし、返す刀で巽の機体に襲い掛かろうとした。
だが、巽は彬からアサルトライフルを奪い、アリスの機体に向けて連射した。
結局ほとんどのペイント弾が命中し、アリスの機体は派手なピンクの蛍光色に染まってしまう。
オペレーションルームのナビゲーターが、モニターを見て叫ぶ。
「判定オールレッド。D1,D2――共に戦闘不能です」
「四人ともそこまで! 模擬戦はこれで終了します」
ユリが険しい表情で、彬たちに向かって命令する。
それに従い、四体のディバニオンは動きを止めた。
こうして通算五回目の模擬戦はあっけなく終わった。
初からアリス機の勢いに押され気味だ。
チャンス――!
彬はもう一度ライフルを構え、紫苑に狙いを定める。
だが、アリスと紫苑の機体が重なって撃つことができない。
そこへ――
「グズめ、後ろがガラ空きだぜ!!」
巽が叫ぶ。
もちろん彬も巽のことを警戒していなかったわけではない。
が、敵は想像よりずっと速かった。
巽の機体にタックルされ、バランスを崩した彬人の機体は地べたに尻もちをつく。
それに気づいたアリスが後ろを振り向き、叫んだ。
「このバカッ! 油断しすぎ!」
アリスは紫苑の機体を突き飛ばし、返す刀で巽の機体に襲い掛かろうとした。
だが、巽は彬からアサルトライフルを奪い、アリスの機体に向けて連射した。
結局ほとんどのペイント弾が命中し、アリスの機体は派手なピンクの蛍光色に染まってしまう。
オペレーションルームのナビゲーターが、モニターを見て叫ぶ。
「判定オールレッド。D1,D2――共に戦闘不能です」
「四人ともそこまで! 模擬戦はこれで終了します」
ユリが険しい表情で、彬たちに向かって命令する。
それに従い、四体のディバニオンは動きを止めた。
こうして通算五回目の模擬戦はあっけなく終わった。