今は会いたくない
ライ視点です。
「...フォード、あの...」
「ちょっと待ってね、すぐ倒すから」
フォードがフェンリルに向き合う。
「待って!僕のせいなんだ...」
「...ライがフェンリルの子供を殺しちゃったってことだね?」
「うん...」
「でもね、俺達がこのフェンリルにしてあげられることはないよ...おっと」
さっきからフェンリルが何度も攻撃してくるがフォードが全て防いでいる。
「俺がライにかけておいた防御魔法はちょっと特殊でね、防御魔法が発動した後に内部に攻撃するようになってるんだ」
「内部...コアのこと...?」
「正解、フェンリルは見た目は狼のようだけど魔物だからね、そして俺たちにとって心臓のようなもの、つまりコアを攻撃されたってこと」
「...」
コアは1度傷が入ると治ることは無い、それに魔物にとって魔力の供給源でもある、よって傷を付けられると魔力も弱まり肉体も脆くなる。
そしてコアを完全に破壊されると死に至る。
「分かった?何もできることは無いよ、ちなみにライも防御魔法使ってたでしょ、それを壊しただけでも相当消耗してるね、もうコアの7割くらいは壊れてるかな」
「分かった...」
「じゃあ倒すね」
「でも僕がとどめを刺す、防御魔法もなくていいから」
「...分かったよ、危なくなったら助けるからね」
防御魔法が解かれる。
だいぶ消耗してる...せめて苦しまないようにしてあげなきゃ...
「ヴゥゥ...」
来る...
最大火力で火魔法を発動する。
魔力が大量に消費されたのを感じる。
...まずい
「ライ!」
フォード...
ーー
「...ん」
いつの間にかベッドの上で寝ていた。
ここどこ...?
コンコンというノックの後に扉が開く音がした。
「あらぁ!ライちゃん起きたのね、今は真昼時よ」
この口調と、見た目は...
「ミシェルさん...!お久しぶりです!」
久しぶり〜と手を振りながらご飯を渡してくれた。
「食べられるかしら?体に優しいものにしたけど...」
美味しそうな生姜粥だ。
「ありがとうございます......食べられます!!」
「それは良かった、まる二日寝たきりだったんだから落ち着いて食べてね」
「?!」
むせた。
「まる二日?!」
「そうよぉ、2日前にギルちゃんが気を失ったライちゃんを連れてきたときは驚いたわ、ライちゃんはもちろん、ギルちゃんまで顔面蒼白になってたもの、すごく心配していたわよ」
フォードが僕を心配...。
「きっとフォードはぼっ...俺の保護者だから...仕方なく助けてくれたんだと思います、心配したように見えただけですよ」
瞬間、おでこに痛みが走った。
「いっ...」
「こら、嘘でもそんなこと言っちゃだめよ」
デコピンでミシェルさんに怒られた。
「さっきギルちゃんが顔面蒼白で連れてきたって言ったじゃない?それはね、ギルちゃんがアナタを助けたからよ」
「え...?」
「ライちゃん、魔力切れって結構危ないのよ、人の身体を巡る魔力がMAX10だとすると、全体の4割を切るとかなり危ないのよ、軽くて目眩、嘔吐、重くて意識不明などの症状がでるわ、だけどライちゃんの状態は残り2割だった」
「...」
「そんな状態のアナタを助けるためにギルちゃんは魔力を与え続けたの」
「...!!そんなことしたら...」
「そう、他人に魔力を与え続けるなんて至難の業、いきなり大量に魔力を流し込んでも身体が耐えられなくなるからだめだし遅すぎても間に合わない、それを何時間も続けたの、一人で」
「そんな...」
「さらにライちゃんは魔力量が多かったからギルちゃんの魔力はどんどん削られていく、そしてこの宿屋に来るために移動魔法なんて高位魔法使ったから...ギルちゃんも危ない状態だったわ」
「...」
「それでもライちゃんはギルちゃんに心配されてないと思うの?」
「...っ」
フォードは僕のことをほんとに心配してくれていたのかな...。
じゃあなんで「一応保護者」って言ったの...?
「...あ!そろそろギルちゃんが帰ってくる頃ね」
「え?!」
「ライちゃんのために身体にいいもの買ってきてくれるのよ」
そうなの...?
急に扉が開いた。
「...ライ!」
そう言われて抱きしめられた。
買ってきたものを全部床に落としちゃってるのに。
何度も良かった、良かったと言って抱きしめてくれる。
泣きそうになるのを堪えながら言う。
「フォード、助けてくれてありがとう」
でも...
「フォードは...ぼくっ...俺の一応の保護者なんでしょ...?」
さっきまで笑顔だったミシェルさんが頭を抱えている...。
「...そうだよ」
「じゃあ院長様に頼まれたから...義務だから...仕方なくってこと...?」
「...それは違う」
「じゃあどういうこと...?それになんで一緒に戦わせてくれないの、いつもフォードだけボロボロになってるの......もっと頼って欲しいのに...そんなに、信用ならない...?」
「...」
「もういいよ...今はフォードに会いたくない」
「...分かった」
そう言ってフォードは出ていった。
「...ギルちゃんに買ってきて貰ったものを閉まってくるわね」
「ごめんなさい、ありがとうございます...」
ミシェルさんは僕が1人になりたいことを察してくれたようで、席を外してくれた。