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~大切な君に、夜空の下で~

作者: RERITO

「うーちゃん。ねぇ、きいて?」


 うん。どうしたの?


「わたしね...ふられちゃったの...」




 え?僕は、聞き返した。どうして?




「がんばったんだよ?で、バレンタインで、いつもはなしているまーくんに、こくはく したんだけどね...」




 ダメだったの...そうやって、僕のご主人様は呟いた。




 なんでこの子のいいとところが分からないんだろ。


 こんなに可愛いのに...




 そっと僕を持ち上げると、にっこりと、笑った。その顔は、あまりにも...




 心苦しくて




 僕は、知ってるよ。君が、頑張り屋さんだってこと


















「ねぇねぇ!!うーちゃん!わたしねっ!!わたしね!!」




 うん。どうしたの?ゆっくりしゃべって?




「あさってね!!あのまーくんにこくはく するんだよ!!」




 まーくん、いつも僕よりこの子の思考を埋めつくすズルいやつだよね。分かるよ。


 帰ってきたら、いつも僕にそのことを話ししてきてくれて...妬けちゃうよ。


 でも...




「にひひ、ぜったいうん。っていってもらうんだ!!」




 こんな顔には、僕はできない。


 だから、僕はまーくんがこの子を幸せにしてくれるって信じてる。




「よし、チョコかってきた。まーくんに、これでチョコカップケーキをつくるんだ。」




 律儀に、僕を一番君がよく見える場所に置く。




「えーと、材料は、チョコレートとぉ...こむぎこ?あとは....」




 頑張って!!ファイト!!僕は、熱い眼差しというエールを送っていた。












「よし!!かんせい!!」




 出来上がった色とりどりのチョコカップケーキを袋に詰めて、ニッコリ笑った。




「まーくん よろこんでくれるかな?」




 きっと大丈夫だよ。あ、チョコレートがほっぺに付いてる。


 う、僕に言葉があったなら...




「あなた、チョコーレートがほっぺに付きっぱなしよ?」




「あ、いけない。」




 手でグシグシとチョコレートを取ろうとして...引き伸びてしまう。


 それじゃダメだよ。


 もう。と...お母さんに、ウェットティッシュで強く拭かれている。



「あうあうあう...」


「はい。完成これで全部取れたわ。」




「ありがとうお母さん!!じゃあ、いってきます!!」




 早々に、走って行ってしまった。僕を置いて...


 頑張ってね。






 そして、今...



「わたしね?チョコレートをわたせて..まーくんがありがとう。っていってくれるから、ついついうれしくなっちゃってね。」



 うん。



「よし、っておもって、すきです。なんかいっちゃって...」




 うん。




「でも、ごめん。って....ね。」





 うん。




「ばっかみたいわたし...」



 うん....




 ギュッと、強く僕を抱きしめて...顔を埋めるご主人様...


 泣きたいのに泣けない...苦しいのに、吐き出せない。なにかを溜め込んでる。


 僕は...僕は...この子のために、動きたい。


















 その日、一筋の流れ星が夜空を通りすぎた。


 それは、とても小さく とても儚く消えてしまったが、願いの一つくらいは、叶えてくれたようだ。




 静まりかえった部屋...すでに、ご主人様は寝ていて...




 その、部屋の中でむくっと起き上がる彼の姿が


 彼は...ご主人様が寝ているベッドを登って、ご主人様の頭を撫でる。まるで、大丈夫だよ。というように。




 暗がりの寝室を一筋の明かりが照らす。


 1つのぬいぐるみが駆け抜ける。ご主人様のために...






 僕は、まず妖精に頼んだ。


 チョコレートをください と




 妖精は答えた。


 お金はあるの? と




 僕は答えた。


 お金はないけど、なんでも言うことを聞きます と




 妖精は笑った。


 じゃあ、あなたの体を明日のお昼に取りに来る と




 僕は、答えた。










 分かりました。 と




 ぬいぐるみは、チョコレートをもらった。


 この世で一番美味しいチョコを、誰のものでもなく、彼女のために...




 次に僕は


 包装をするために、お月様を尋ねた。




 僕は言った。


 このチョコレートを素敵なものにしてください。




 お月様は答えた。


 なんのために?




 僕は答えた。


 好きな人を幸せにするために




 お月様は、怒った。


 じゃあ、お前は自分の身を大事にするのが正しいのではないか?と




 僕は、言った。


 僕にあの子を笑顔にさせる力はない。誰かの助けを借りないといけないんだ。




 お月様は呆れた。


 自分の身も大事にできないのに、人を笑顔にさせる?笑わせるな。と




 僕は...




 お月様は、言った。


 立ち去りなさい。と




 僕は言った。


 分かりました。と




 1人とぼとぼ歩いていて、包装をどうしようかと考えていると、チョコレートが光輝き、黄色と黒の素晴らしい包装ができあがった。




 ありがとう。僕は...お月様に、おじぎした。








 僕は、歩きだす。時間がない。


 急いでペンを家で借りて、紙に言葉を書き込む。




 そして...
















「うるさい。」




 アラームで目を覚ました。


 あ、そうか。きのう....ふられちゃったんだ。




 眠いたい目を擦りながら、布団から出る。


 ふと、黄色に光る何かが目に映った。




「わたし...こんなのうーちゃんの腕につけたっけ?」




 ふるふると、頭を振って記憶を思い出そうとするけど...




「わかんないや」



 んー、おもいだせない。やっぱりおいたようなきもするし...


 おかあさんが、おいてくれたのかな。




 歩きだして...ふと、足を止める。


 文字が見えた。




「あ...」




 なんで、なんで...


 なみだがとまらなくなった。たったひとこと だけなのに...




 あたかも みてきたかのように




「き...み....なの?」




 わたしの大好きなクマのうーちゃん。


 私は、思っいきり抱きしめて...泣いた。




「ああぁああぁ!!わたっ...わたし...がん...ばったよね!!がんばったんだよだよね。」




 思いっきり、強く、親愛を込めて抱きしめる。

 ふわふっわのぬいぐるみが、ポロポロと涙でまとまっていく。




「すきだったよお....だいすきだったよぉおおお....」




 大好きなクマに思いをぶつける。


 うーちゃんは、なにもいわないけど...




「これ?チョコ?」



 黒い瞳が、お日様に照らされて光ったような気がした。

 黄色と黒のチョコがキラキラと輝いている。




 バリバリ...っと音を立てて包装を開け、チョコを見つめる。




「うわぁ...きれぇ」




 なにか青い粉みたいなのがそのチョコには舞っていて...バキッと音を立てて食べた。




「おい…し…」


 そしたら、またなにかが込み上げてきて...


 チョコカップケーキをつくったこととか、まーくんとのおもいで とか、にがくてでも あまくて、しょっぱくて...ぜんぶ、ぜーんぶだいじなもので




「うわあぁあああああぁ」




 その場にへたりこんで、再び泣いた。

 感情が渦の様に巻き起こる。



 わかってる。

 つぎに、すすまないとね。




 ある程度時間が経って...グシグシといつものように顔を擦って、目元の赤い私は今度こそにっこり笑って ありがとう。と言った。


 その顔は、付き物が取れた様だった。














 ふふふ、いいんだよ。




「いってきまーす。」




 元気な声が聞こえた。


 行ってらっしゃい。ご主人様...どうか、健やかに育ってね。




 僕の背後で、うふふふふっと笑う声が聞こえる。


 もう、か…

 迎えがきちゃったみたいだ。




 またね。僕のご主人様




 青く透明にクマは光ってやがて、消えていった。


 最後に残ったのは、彼が書いた言葉...
















 がんばったね。




 というシンプルな言葉だった。


 


  ーおしまいー


物語を読んでいただき、ありがとうございます。


登場人物


女の子


まーくん 女の子の好きな人


うーちゃん クマのぬいぐるみ


妖精


お月様


いや、なんなんでしょうね。好きだからじゃないですか?失恋…w



新年、皆さまの健康をささやかながら、願っています。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 元気になれるチョコレートを引き換えに、うーちゃんがいなくなったんですね。 せつないお話です。
[一言] ほろ苦く、そして甘い恋のお話ですね。 チョコレート食べたくなりました。
2023/01/11 18:56 退会済み
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