卒業式
ミーンミンミンミンミンミンミン
ミーンミンミンミンミンミンミン
ジジジ
ミーンミンミンミンミンミ
睦「なぁそろそろ卒業式せんか」
灯「まだまだ夏真っ只中やで」
睦「いや、俺さ、確か小学校の時よく覚えてないけど卒業式出れんかったんよ」
灯「あ、そうだったん」
睦「いや、結構曖昧な記憶」
灯「言うてもな…」
灯「もう高3やで」
灯「流石に卒業したことになってんちゃう?」
睦「いや、俺は中1から今まで心はずっと小学生だ…」
灯「それは成長してないってことでは…」
睦「違う!わかってないな」
睦「卒業式に出れなかったから、まだレベルアップの上限を開放できてないんだ」
灯「村クエクリアしてないみたいな?」
睦「そうだ」
睦「俺には今、莫大な経験値が蓄えられている」
睦「しかし、今から大々的な卒業式を開催することで」
睦「俺は受験に受かり、彼女もでき、最高の人生を全うできるんだ」
灯「進研ゼミもビックリだな」
睦「そこでだ!」
灯「なんだ」
睦「お前にはある簡単なクエストに挑戦してもらう」
灯「んなモンハンみたいな」
睦「人と場所を確保してくれ」
灯「今から?」
睦「そうだ」
灯「無茶言うなって」
睦「大丈夫だろう?お前のLINEをさっき見せてもらった」
灯「勝手に見てんじゃねえよ」
睦「お前、LINEの友だちの数無駄に多いだろう?」
灯「友だちの数に無駄とか無いわ」
睦「でも実際話すのは極僅かだろ」
灯「…」
睦「…」
睦「ま、何となく言いたいことはわかったんちゃう?」
灯「片っ端に誘ってけってことだろ」
睦「そうだ」
睦「俺のレベルアップのために」
灯「そう簡単に集まるのかね」
睦「俺の人望を舐めるんじゃねえ」
灯「じゃあ自分でやれや」
一週間後
睦「おぉ…!!」
灯「まさか小学校の体育館を貸してくれるとはな」
睦「6年の頃の担任が覚えててくれたんだな」
灯「しかもこんなに集まって」
睦「あの頃のクラスみんな集まってくれた」
村上「おーい!どうすればいいんだ!?」
黒沢「校長先生が卒業証書渡してくれるらしいよ!」
大島「席並び終えたよー」
灯「おぉあいつらは森三中学校に受験した3人…かなりふくよかになったな」
睦「そうか?元からあんなだったぞ」
灯「てか、みんなこの夏休みに卒業式やるっていう異常行動に付き合ってんのおかしいだろ」
睦「そうか?元からそんなだったぞ」
灯「そんなわけあるか」
睦「みんな!今日は暑い中集まってくれてありがとう!」
睦「今日は卒業証書の授与だけやって終わるから!」
睦「そのあとなんか食べに行こうぜ!」
集まってくれた全員『ごめん、塾だわ』
睦「なんでそこノリ悪いん」
灯「受験生の俺らが異常なだけだって」
校長「そろそろ始めようか」
クラッシック~♪
校長「卒業生代表、睦香美夫」
睦「はい!」
校長「以下、同文」
灯(なんの以下だよ)
校長「令和4年8月12日鴻野知寄典」
睦、灯(校長そんな名前だったんだ…ちょりのり…)
校長「おめでとう」
睦「ありがとうございます」
睦「みんな…ありがとう…っ」
司会「卒業生、起立」
ガタガタっ
小森「暖かな~春の日差しの中で~」
灯(夏やけどな…)
中森「今日、迎えた、卒業式~」
灯(みんなよう集まってくれたわ)
大森「僕たちを、育ててくれた保護者の皆さん」
灯(後ろ向いたら本来おるんやけどな、集まったのクラスのみんなだけだもんな)
睦「…」
灯(…ん?)
睦「…」
迎田「おい、睦!お前だぞ」
睦「え、あ、あぁ…」
睦「…」
睦「思い出した」
灯「なに」
睦「おれ、セリフ覚えてなくて卒業式行かなかったんだ」
は?
は?
は?
灯「いや、お前…」
灯「そもそもレベル足りてなかっただけじゃねえか」