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第8話 第三容疑者の人狼の元を訪れたらため息をつかれました

「はい!! 質問があります!!!」


 吾輩の元気の良い声が響き渡った。それを聞いた壇上に立つ教授は、疲れ切った様子で肩を落とした。黒板を背にして吾輩の方を向く。

 眼鏡を掛けた中肉中背の冴えない男だった。ぼさぼさの髪のせいか、小さいせいか、角は隠れて見えなかった。


「……はい、どうぞ。なんですか?」


 すかさず吾輩は語る! 

 大声で!!


「魔王様の国が近年繁栄著しいのは魔王様が最高だからであって他の理由はありえないと思います!! 地政学的必然とか列強諸国の自滅は関係ありません!! 先生は不敬罪で罰せられるべきなのではないでしょうか!!!」


「質問ではないことと、あなたが陛下を崇拝していることだけはわかりました……」


 男は目を瞑って何かを我慢する表情をした。

 しばらくして、吐き出すように言う。


「現代政治学概論の授業はここまで。休校期間中もサボらないように。解散してよろしい」

 

 直後、吾輩の背後が席を立つガタガタとした騒音でいっぱいになった。歓声も上がっている。振り返ると、多種多様な種族の若者たちが勢いよく部屋から出ていくのが見えた。


 うむ、元気があってよろしい。


 状況を説明しよう。ここは王立大学の大講堂で、政治学教授の授業がつい今まで行われていたのだった。つまり吾輩は今、容疑者リストの3番目である家庭教師くんが行う授業に潜入しているのだった。


 潜入には苦労した。馬を拝借したので王立大学までは30分ほどで済んだが、大学構内で1時間30分も迷ってしまったのだ! 広すぎる! あと誰も道を教えてくれなかった!! 皆吾輩を無視するんだ!! 悲しい!!


 えー、ともかく。吾輩はこの教授に会いに来たのだった。


 授業を放棄した彼は、リストの4番目にいる留学王女ちゃんの家庭教師である。

 もっとも、真の姿は大学教授くんなのだ。ややこしいね! 本来は王立大学の政治学部に所属する教授だが、魔王様に頼まれて週に3日間、家庭教師くんをしているらしい。


 大学教授で家庭教師で魔王様から仕事を頼まれるような彼が、何故容疑者リストに載っているのか。


 それは--彼が人狼ウェアウルフだからである。

 人狼には色々特徴がある。目が金色とか、角が外からわからないくらい小さいとか。一番の特長はでっかい狼に変化できることだね


 が、他にも大事な要素がある。その要素は吸血鬼に関係している。吸血鬼は銀製の武器じゃないと傷が勝手に塞がるし、魔力の源である心臓を一撃で潰さないと滅ぼせない。


 どこが傷ついても大して問題がないのだ。吸血鬼は既に死んでいるし、魔力で直ぐに塞げてしまうからね。騎士団長くんにさっくりやられても元気いっぱいなのはこういうわけだ。


 しかし人狼は凄い!

 その牙と爪は銀と同じ効果を発揮する。つまり、その爪で首を裂かれただけで吸血鬼は滅んでしまうのだ! 魔力を込めても回復しない! 吸血鬼の取り柄は回復力なのに、まるで普通の魔族みたい!! 信じられない!


 ともかく、人狼は吸血鬼の天敵なのだ!

 吸血鬼連続殺人事件の容疑者リストに載るには、十分過ぎだね!


 次席執事ちゃんは犯人じゃなかった。

 騎士団長くんも犯人じゃなかった。

 ならばならば!


 というわけで、吾輩は大学にやってきたのでした。尋問の時間の前に、普段の姿を確認しておこうという算段なのだ! 真犯人を突き止めるには、情報は多ければ多いほどいいからね!!


 しかし、何故か授業は早々にお開きになってしまった。

 潜入は失敗だ……

 くそっ。魔王様に顔向けできないよ!


「噂は聞いてましたが、いやはや。勘弁してくださいよ。明日から一週間休校だと言うのに、課題も出せなかった……」


 家庭教師くんがため息交じりになにか言っているが、吾輩は気にせず追及する!


「君が犯人だな!?」


「その話をする前に、苦情を申し立てたいのですが」


「どうぞ!」


「では早速」


「どうぞ!」


「何故最前列に座ったんです?」


「折角教われるなら当然だね!」


「ありがとうございます。ですが、学生たちが全員後ろに座ったことへの謝罪が欲しいですね。あなたは吸血鬼で、しかも有名だ」


 うーむ。確かに謝るべきかもしれない。吸血鬼はみんな--吾輩はともかく--かなり強いからね。若い学生たちにとっては怖いかもしれない。吾輩はそういう悪印象を取り除こうと陽気に頑張っているけれど、なかなかうまくいかないものだ。


「ごめんね!」


「……しかも1分に1回質問するとは。熱心な学生は好きですが、限度があるのだと学びました」


「どういたしまして! より正確に言えば、3分に4回かな!」


「より悪い。感謝はしていませんのでお礼は不要です。お陰で予定の10分の1しか進みませんでした」


「多分100分の1も進んでないんじゃないかな!」


「分かってるんじゃないですか……」


「で、君が犯人でよいかな!?」


「よくないんです。よくないんですよね」


 家庭教師くんは2回言った。

 おや、犯人じゃないのかな。


「証明しましょう」


「容疑者は皆そう言うんだ。吾輩はよく知っている」


「はぁ、そうですか。これは僕の推測ですが、これまでちゃんと証明され続けてきたんじゃないですか?」


 うーむ。そうだったかも知れない。

 次席執事ちゃんと騎士団長くんには見事に証明されちゃったしな…

 とりあえず、吾輩は鷹揚に頷いてから叫ぶ。


「吾輩の目はごまかせないぞ!!」







「続きが気になるかも!」



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