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第23話 計算違いがありました

「おい、倒せたのだろうな」


 人狼は虚空へと言葉を投げかけ――


「感知出来ません」


 声が帰ってきた。

 直ぐ足元の壁に少女が直立している。


 影潜り(シャドウラン)を駆使し、B国の第九王女たる吸血鬼がいた。特殊能力たる天握(ハング)の応用だ。一部の吸血鬼は、重力を無視して好きなところに立てるのだった。


「……本当だな?」


「大学構内に生命反応はありません。確かです」


「同族だからといって手加減したのではなかろうな」


「……閣下が強いのは聞いていますが、何故そこまで」


「あの男は……、この国の伝説なんだ! 魔界全土で虐げられている吸血鬼がこの国で大手を振って歩けるのは、あいつが強すぎたからだ!! この国の今があるのはすべてあのふざけた男のせいなんだ!!」


「……」


「たったひとりで百万の軍勢を鏖殺し! たったひとりで100の国を滅ぼし!! たったひとりで強大な魔王を何人も殺した!! だから今! 魔王は陛下ひとりだ!! すべてひとりで! どんなに低く見積もってもそうだ! 古代の文献にありがちな誇張じゃあない!!」


 人狼が喚くのを少し戸惑った風に見ていた吸血鬼だったが、それでも彼女は冷静に口を挟んだ。


「落ち着いてください」


「うるさい!! 吸血鬼風情が偉そうに!!!」


「……落ち着いてください。最高のタイミングで最大火力を叩き込みました。思い出してください。あの炎を」


「……そうだ、そうだな。よくやった」


 そう、巨竜の正体は留学王女だった。彼女は影潜りで王立大学の地下に移動し、そして巨竜に変化したのだ。『最強卿』に灼熱の炎を見舞ったのは白い長髪を下げたこの少女だった。


「竜に変化できる吸血鬼は見たことあるが……、炎息(ブレス)まで再現するとは。最強の吸血鬼は君じゃないのか」


「ありがとうございます……」


 変化とは、別の生物に姿を変え、その特性を再現する能力である。

 ほとんどの吸血鬼は血を飲むことで蝙蝠になれるが、それは吸血鬼と蝙蝠が「血を飲む」という共通項で強く繋がっている存在だからだ。


 しかし、


 共通項がなければ変化の難易度は途方もなく上昇する。

 ヒト型ですらない竜に成れるだけで天才の領域にあったし、ましてや竜固有の能力である炎息を完全に再現するなどありえない。


 この少女は紛うことなき規格外だった。


「あなたは吸血鬼が憎いのだと思っていましたが」


「ふざけるな。勿論憎いさ」


 無表情で尋ねる少女に対し、人狼は吐き捨てるように返した。

 当然吸血鬼は憎い。百を超える吸血鬼を滅ぼした今となってもなお、家族の仇への怒りは風化していない。魔界すべての吸血鬼を灰にするまで彼は止まらない。


「だが、お前は役に立つからな」


「はぁ……」


 だが、怒りと憎しみで思考を曇らせる様な男ではなかった。単なる復讐者ではない。優先順位はつけられる。吸血鬼を滅ぼす役に立つならば、吸血鬼と手を組むくらいは飲み込めるのだった。


 人狼は冷静さを取り戻している。魔族でも最上位に位置する聴覚――人狼の聴覚は血を飲んだ吸血鬼をも上回る――を使って逃走ルートを探す。


 戦争大臣を滅ぼすことは出来なかったばかりか、魔王城に逃げられてしまった。直ぐに追手が差し向けられるだろう。

 『吸血鬼連続殺人事件』は解決されなかったが、少なくとも終わったのだった。教授を務める人狼ほどの頭脳を持たないものでも逃走を選択すべき状況だった。


 が――


 代わりに『最強卿』という伝説を仕留めることが出来た。

 彼らの目的(・・)は達せられていた。


「そうだ、お前は役に立つ。滅ぼすのは最後にしてやる。この国以外にも吸血鬼はいくらでも――」


 いる。

 

 そう人狼が言おうとした時、




「うーむ、それはどうだろうな」




 惚けた声が響いた。

 低いバリトンで、誰が聞いても陰気としか感じようのないそれだった。




「君らの命は今晩で尽きると思うのだが……?」




 唖然として、声がした方を見下ろした人狼の視界に――


 不吉な顔をぶら下げた長身痩躯の吸血鬼、『最強卿』が映る。

 中庭の中心で、消えかけの炎の中心に立っている。

 その身体は、服は、焦げた形跡がなかった。

 巨竜の炎息はまったく無意味だった。


「吾輩はまた、計算違いをしてしまったか?」







「続きが気になるかも!」



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