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第19話 また勘違いをされてしまいました

 吾輩は結末に向かって語りを進める。


「デュラハンで魔王城が埋め尽くされるのは計算づくだったな? だから毎日ひとりずつ吸血鬼を滅ぼして、わざわざ騒ぎを大きくした」


「いかにも。次席執事に近衛騎士団を疑わせ、まんまと追い出すことに成功した。そして更に滅ぼしてやった」


「デュラハンの警備は悪くないが……。目はついていないからな。実行犯とは別に情報提供者がいると仮定した場合、盲目というのは大問題だ」


「……すべて当たりだ。随分と印象が変わったな」


 うるさいぞ。

 その下りは十分やった。


「君も口調が変わって印象が随分と違う。そっちが素かね?」


「敵に敬語を使う必要性を感じなくてな。で、どうするんだ? 戦争大臣は滅びた。これで魔王軍は機能しない。もうまともに戦争はできない。B国の方が若干弱いが……。準備は十分だ。勝つさ」


「まぁ……、君の言うとおりならば、君の言うとおりになるだろうな」


「俺は……、吸血鬼が憎い。陛下のことは嫌いじゃないが、貴様らみたいな化物を重用するのが悪いんだ!! こんな国も滅ぶべきだ!! 俺は子供の頃に、両親を」


「いや、黙ってくれ。君の動機には興味ない」


 いきなり叫びだした家庭教師の発言を吾輩は遮った。


「吸血鬼に……、殺されて……」


 まぁ、ありがちな悲劇だ。人狼を怖がった弱い吸血鬼に殺されたのだろう。被害妄想に駆られた吸血鬼による人狼殺害はたまに起きる。


 変化も影潜り(シャドウラン)も出来ない吸血鬼は、人狼に狙われたら勝てないからな。家庭教師のさっきの動きを見れば分かるが、人狼は身体能力が非常に高い。


「どんな悲劇が君の過去にあろうと、だ。吾輩が事件を解決することに変わりはないのだ」


「……それもそうだ。そして、貴様がここで滅ぶことにも違いはない」


 そう言って、家庭教師は懐から薄い鉄瓶を取り出した。暗がりに向かって放り投げる。ぱし、と受け止める音がした。血を更に飲ませて、留学王女を強化するつもりだろう。


「やる気十分と言うわけだな?」


「恍けてくれる」


「恍けるだと? これは確認だ。戦う前には、相手に死ぬ覚悟があるか聞くことにしているのだよ。不本意ながら、吾輩は理解を超えて強いのでな」


「……何故開き直れる」


 家庭教師が眉間に皺を寄せて言った。イヌ科の表情はよくわからないが、多分考え込んでいるのだろう。何故だと? 吾輩はわかりやすく話したつもりだったが。


「吾輩からもひとつ質問がある。もしかして、勝ったつもりでいるのかな?」


「負け惜しみは寄せ。戦争大臣は滅ぼした!! 貴様も直にそうなる!!」


 家庭教師は元気いっぱいに吠えた。まさに人狼といった調子だ。元気が良くて大変よろしい。だが、うむ。何か勘違いをされてしまったようだ。


 ふむふむ……。

 どうやら、またやってしまったらしい。


 吾輩は腕を組み、深くため息をついた。


「ここに戦争大臣の頭が転がって……、あ?」


 そうだな、おかしいな。もっと賢いと思っていたのだが……。

 気づくのが遅すぎる。


「まさか……」


「直接吸血鬼と戦ったのは初めてかな? 吸血鬼は死なない。滅びるだけだ。そして滅びた吸血鬼は……、灰になる。君が刈って踏み潰している戦争大臣の頭はね、吾輩が創造クリエイションで作った偽物なのだよ」


「おい!!! もういいか!!? いつまで瓦礫の中で待たせる!!」


 吾輩が解説してあげたその直後、怒ったような女の声がする。

 そして吾輩の足元の瓦礫が少しだけ弾け飛んだ。そして、その隙間から可愛らしい顔がひょこっと現れた。戦争大臣である。


 そうとも。

 彼女は滅びてなどいない。時計台が崩れてきた際に瓦礫の中に隠して、そのままでいてもらったのだ。そして、血を飲んで発現する吾輩の力のひとつ、創造で身代わりを作り上げ、真犯人の残りを釣ったのだった。


 家庭教師が釣れた段階で偽の戦争大臣は用済みだったが、堂々と語りかけてくるので能力を解くのを忘れていたのだ。


 ふぅむ。


「コミュニケーションは難しいな」







「続きが気になるかも!」



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