仲真一。
ジャァ−−キュッ、ポタポタ。
毎朝の習慣でシャワーを浴びる。
いつもはお気に入りの音楽を聞きながら
気持ちの良い時を過しているのに最近は
憂鬱な気持ちで一杯。全部あの仲真一が悪い。
人の悪口を平気で言うし 約束すっぽかすし
学校行事サボってデ−トしてたり。
でも、田辺さんはあまりおこってなかったり
美紀は仲君の事好きみたいだし、結構女子から人気があったり 最近は村田君もよく一緒にいるし、この前、図書室の本を戻したの全部合ってたし、ひょっとしたら仲って凄い人?
父「悠子、たまには学校まで送ってやろう。支度しなさい。」
父は会社を経営している。週に何度かは学校へ送ってくれる。
父「最近、元気が無いみたいだな?好きな男でも出来たか?」
悠子「な、なにを言ってるの?そんな訳ないわ。」
父「そ-いえば、お前のクラスに仲君って子いるのか?」
悠子「えっ、何で?何でお父さんが仲君の事を?」
父「いや、お父さんの知り合いが今度新しい会社を作るんだ。彼が仲くんの作品に惚れてしまってね。エントランスに彼の絵を飾れないかなと思ってな。同じクラスメ−トなら頼んで貰えるかなと思ってな。勿論、報酬は払うし。」
悠子「な、何を言ってるの仲、仲真一の事?」
父「、、、そうか、悠子は何も知らないんだね。悪かった!大人の勝手でどうこうする問題ではなかった。忘れてくれ。」
悠子「、、、仲真一って何者?」
父「学校で仲君は普通の学生なんだろ?それならば彼は普通の学生だ。本当に悪かった。忘れてくれ。」
仲真一、あなた一体何者?
真「やばい、これは本当にやばい。」
この前、石井美紀がくれた弁当を夕方食べようと思って机にしまってそのまま帰ってしまった。
申し訳ないが HRまで時間があるから便所に流してこよう。右よし、左よし、行くぜ!振り返ると石井美紀がいた。
真「うあああああ!」
美紀「仲、どうしたの大声出して。、、あっ!この前のお弁当。で、どうでしたか?」
真「いやぁ、その、あの、、、実は。」
美紀「、、、。良いよ。私が勝手に作って無理矢理渡したし、捨てていいって言ったの私だし。」
話している言葉とは矛盾して美紀の顔が崩れていき、ついには涙がポロポロと、、、
悠子が教室に入ってきた。
悠子「おはよう!、、、美紀どうしたの?」
悠子は泣いている美紀に駆け寄ると真一を睨む。
悠子「女の子泣かすなんて最低!」
この瞬間1vs37の闘いが始まった。
村田や田中まで敵になっている。
でも仕方ない。女心を傷つけた僕がわるい!
この戦況をひっくり返すにはコレしかない!
僕のタ−ン!
僕は弁箱を開けると弁当を口に放り込んだ!
クラスメ−トのタ−ン!
じっとこちらを見ている。
僕のタ−ン!
とにかく弁当を口に放り込む!そして完食!
僕は空の弁当箱を高々に振り上げた!
僕の勝ちだ!
10の経験値と3ゴ−ルドを手に入れた。
真一は毒に侵された。
キ〜ン〜コン〜カン〜コン、、、
HRが始まった。
、、、僕は今日、ずっとお腹が痛い。
放課後
悠子「仲君。今日、文化祭委員会だよ。勿論出席するでしょ?」
真「う、うん。出席するけどトイレ行って来る」
本日8回目の排泄。
文化祭実行委員会
ガラガラガラ。
悠子「すみません。2年5組です。遅れました。」
担当教師「遅刻だぞ!皆待ってる早く席に付きなさい。」
ヒソヒソ話が聞こえて来る。
「綾坂やっぱり美人だなぁ」
「ねぇあの人が噂の人?」
「そう!天才画家、1億ドルの男、仲真一。」
悠子「えっ、、、な、何?今、なんて?」
私は真一の顔を見る。
真「ニコリ。何?何か付いてる?」
担当教師「と、言う事で2年5組には絵を描いてもらいます。誰か一人で描いて頂いても結構です。題材は問いません。異例ですがおまかせします。」
私は真実を知った。仲真一がどれだけ凄い人で大変な家庭事情を抱えていて学校や大人たちの汚い思惑に利用されようとしている事も。
誰もいない教室で私は仲真一と話をした。
真「あ、あのさ!随分前なんだけど悪口言ってごめんね!ずっと謝らなきゃって思ってたんだ。」
悠子「、、、そんな事はどうでもいいよ。」
真「良かった。これで一安心!」
悠子「そんな事どうでもいいでしょ!どうして言わなかったの?お母さんの事や妹さんの事!そして描きたくもない絵を文化祭と言う名目で書かされようとしている。、、、止めておけばいいよ!絵は2年5組皆で書けばいいよ!」
真「、、、。」
秋の少し寂しい風が教室に入ってくる。
真っ赤な夕陽が教室を射抜く。
窓際の机に腰掛ける悠子。
夕陽に射抜かれた女神。時より入る風に綺麗な髪がなびく その度に凄くいい香りがする。
小さい顔、その割にクリっとした大きな目、目の色は黒では無くて少しグリーンっぽい。唇は小さく柔らかそう。
僕は、彼女を描きたいと思った。
僕は、今まで描けなかっのでは無くて描きたいと思わなかったんだ。
心から描きたいと思わなかったんだ。
僕は綾坂の頬に手を当てる。
綾坂は少しビクッとして僕を見つめる。
綺麗な瞳は少し潤んでいる。
真「綾坂、、、」
悠子「、、何?」
真「僕は綾坂が描きたい。」
綾坂は真っ赤な顔をして目を少しそらして。
悠子「、、、わかった。いいよ。」
綾坂はそう言うとゆっくり目を閉じた。