他人。
友永の神の手により悠子は一命を取りとめた。
僕と綾坂の両親は友永に感謝した。
真「本当にありがとうございました。友永先生。」
友永「フーこれから大変だ。予定をキャンセルした穴埋めをしなきゃな!、、、仲君今回の依頼は高くつくぞ!」
真「本当にすみませんでした。本当にありがとうございます。」
友永の表情が少し曇る。
「ただ、意識がいつ戻るかは、わからないんだ。明日か、明後日か、はたまた何ヶ月後か、、、」
真「、、、そ、そうですか、、、でも生きてるんですよね!綾坂は生きてるんですよね!それだけで感謝です!」
友永「ああ、完璧なオペをした。」
ニコリと笑う。
真「、、、先生。友永先生を描かせてください。僕に今出来る事はそれぐらいです!」
友永「本当か!そりゃあ最高だな!アメリカから帰ったら一番で頼むよ!
、、、これから悠子ちゃんが目覚めるまで大変だろうが頑張れよ。」
友永は握手を求めて来た。
僕は友永の手を握る。
熱く、繊細で綺麗な手だ。
真「悠子、、、。」
僕は病室のベッドで横になる綾坂の横に座り優しく微笑む。
「良かった。本当に良かった。」
頭に包帯を巻いて顔に擦り傷があり少し痛々しい。
僕は綾坂と出会ってから今までの彼女の表情を思い出していた。そして、学校は休学して綾坂が目覚めるまで毎日スケッチブックにその表情を描く事にした。毎日、病室に訪れて出会った頃の彼女の表情を描き出す。整った顔立ちにツンとした表情。僕の頭には鮮明に細かく記憶されている。瞬間記憶能力。
真「ハハッ。悠子はこんなにツンとしていたな。
ねぇ、見てよ。こんな表情してたよ。」
僕は意識の戻らない綾坂に絵を見せる。
明日から近くのマンスリーを借りよう。綾坂が目覚めるまで毎日来るよ。
友永先生、この前頂いたお金使わせて頂きます。母さんには連絡したし結菜は一人で大丈夫だろう。
一ヶ月後
その日は突然、訪れた。
僕はいつもの様に綾坂の横で鉛筆を走らせる。
悠子「、、、こ、ここは?」
突然綾坂が目を覚ました。
真「!ゆ、悠子!大丈夫?ここは病院だよ!」
悠子「、、、あなた、、、誰?」
友永「一過性の物だとは思うが仲君の記憶がごっそり抜けているんだね。、、、きっと脳が大切な記憶を何処へしまい込んだのかもしれないな。でも大丈夫!何かの拍子に思い出す凡例は多い。私はあと2カ月はこっちにいなければならない。また、いつでも電話をくれよ。」
綾坂母「悠子本当に良かったわ。でも暫くはまだ入院してようね。、、、しんちゃんの事はまだわからない?」
悠子「、、、う、うん。私と仲君は、どんな関係だった?、、、正直あまりタイプじゃないんだけど、、、。」
綾坂母は悲しい目で悠子を見る。
コン、コン。
真「ゆ、いや、綾坂さん。体調はどうですか?」
悠子「あ、はい。なんか色々ありがとうございました。もう、大丈夫なので、、、」
綾坂母「、、、ゆ、悠子ちゃん?」
悠子「だって、仲君に悪いわよ。私は彼の記憶は無いし、これ以上はお互いに迷惑になるよ。
、、、ごめんなさい、私は貴方の事、わからないから、、、これ以上は、、、」
真「、、、そ、そうですね。すみません。、、、じゃあ、僕はこれで、失礼します。」
僕は走って病室を出た。
綾坂母が追いかけて来た。
綾坂母「しんちゃん!ごめんなさい!まだ記憶が戻らないだけなの。、、、まさか悠子の事を諦めないよね?見捨てないよね?」
真「お母さん、それは違います。綾坂さんの中には僕はいない。これ以上彼女に関わるのは迷惑です。、、、お互いの為に、これ以上は、、、」
真一は涙をためながらスケッチブックを綾坂母に手渡す。
真「捨てて貰ってかまいません。、、、綾坂さんが元気になって本当に良かった。、、、失礼します。」
綾坂母はスケッチブックをめくる。
そこには出会ってから今までの悠子の表情が描かれていた。その絵は悠子の表情を的確に捉えており徐々に恋をする少女の物語のようであった。綾坂母は涙が止まらない。
「しんちゃん、、、しんちゃんはこんなに悠子を思ってくれていたんだよね、、、ごめんね、、、ごめんなさい。」
病院を出た真一はゆっくりと歩いていた。
真「久しぶりに家に戻ってみよう。もうすぐ、年末かぁ、、、もうすぐ母さんも退院出来るし、結菜と3人で年明け出来そうだ。、、、そうだ、休学してたからまた来年から学校いかなきゃ、、、綾坂とは、他人として、、、」
僕は泣いた。道の真ん中で。大きな声をあげて、
愛しい人が生きているだけで良いと思った。でもこんなに悲しいとは思わなかった。二人で積み上げて来た物が崩れていく僕の記憶も消して欲しいよ。、、、
友永「そうか、、、時間は掛かるが諦めない事だよ!少しづつヒントを出して行くんだ。」
真「先生、、、僕はもう、いいんです。僕はそんなに強くない。、、、今、彼女の中に僕がいないなら僕にはその悲しさに耐える自信がありません。」
友永「、、、そうか。それは僕には何も言ってあげれないな、、、そうだ、君もこっちに来ないか?アメリカで勝負しないか?個展を開くんだ!軍資金は俺が出す!」
真「、、、アメリカですか?」
友永「お母さんも、もうすぐ退院だろ、考えてくれよ!年明けたら俺の夢にかけて欲しい!連絡待っているぞ!仲先生!」
僕は久しぶりに家に帰る。
結菜「あーやっと見つけた!クソ兄!この1カ月何処で何してた!携帯もつながらないし!学校は休学してるし!私はこの1ヶ月コンビニ弁当!お母さんは何も教えてくれないし!、、、それより兄の絵が雑誌に出てるよ!」
雑誌
天才、仲真一復活!
文化祭で公開した絵、愛しき人が絶賛!
連日、人が集まり学校側も困惑。
海外メディアも注目!
価値は1億ドル?
真「へぇ、、こんな事になってんだ、、、」
結菜「それより、悠子ちゃんはどうなったの?手術は成功したって聞いたけど。」
真「ああ、もう大丈夫!、、、それと、僕と綾坂さんはもう関係ないから、、、」
結菜「?、、、どうして?どうなったの?」
真「、、、頼むよ、、、。」
結菜「、、、わかったよ。もう何も聞かない。、、、ねぇ、お母さんの退院準備しようよ!」
真「ああ!そうだな!年末は3人で過ごせるぞ!」
結菜「キャー素敵!」
僕は久しぶりに自分の部屋で携帯の電源を入れる。
その瞬間、携帯が鳴る。
真「おわ!ビックリした。、、、田中か。」
田中「やっと繋がった真一この野郎!今まで何してやがった!学校がお前の絵が大変な事になってるぞ!学校に聞いても何も知らないし。悠子ちゃんの携帯繋がらないし!悠子ちゃんの親も今はそっとしておいて欲しいって何も教えてくれないし!病院側もなんかの圧力がかかってるのか、教えられないの一言!」
真「ごめんな田中、綾坂は意識が戻ったよ。、、、僕はまだ暫く学校へは行かないよ。少し考えてみたい事があるんだ。沢山の事が起きているから整理したい、、、学校の絵は一時的な事だから、その内に落ち着くよ。」
田中「、、、わかった!でも何か決まったら絶対電話しろよ!」
その後、学校、村田、田辺、美紀、、、と説明に時間を取られた。
本当に疲れた、、、僕自信、綾坂の事で気持ちの整理したい、、、忘れる時間が欲しい。
、、、そうだ。実家に帰ってみよう。