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愛しき人。

僕は走った。どこをどの様に走ったか覚えていない。頭が真っ白だった。病院に着くと綾坂の母と父がうつむいて座っていた。


真「、、、綾坂は、綾坂は大丈夫ですか?」


綾坂母「、、、しんちゃん、、、。」

綾坂母は真一を見ると泣き出した。


綾坂父「今、手術中だ。横断歩道を渡っていて信号無視したトラックにはねられたんだ。、、、」


綾坂の鞄だ。、、、血が着いている。沢山血が付いている。事故の大きさを物語る。

真っ赤に染まった四つ葉のクローバーのネックレス。

綾坂父「手術直前まで握って離さなかったそうだ。意識は無いはずなのに、、、」

綾坂父は声が詰まる。これ以上話せない。

僕はネックレスを受け取ると、初めて綾坂が居なくなる恐怖を感じた。

綾坂父は座り込む。

真「お父さん、友永先生にお願いしましょう!僕を先生の所へ連れて行って下さい!」


綾坂父「、、、そ、そんな事、今から急に友永に頼める事じゃあないぞ、、、」


僕は凄みながら

「早く!僕が先生にお願いしますから!」


綾坂父「、、、わかった。友永に電話してみよう。」


「、、、あ、ああ、そうだな。わかってるよ。すまなかった。、、、。」



僕は会話の状況から友永が来てくれない事を感じると綾坂父から電話を奪った。


真「先生!友永先生!助けて下さい!悠子を助けて下さい。お願いします!お願いします!」


友永「仲君、落ち着いて、落ち着くんだ。今、私はアメリカ行きの飛行機に乗る為に空港に居るんだ。それに、今、手術中なら私はその中へは行けないよ。ドラマみたいには行かないんだ。」


真「、、、っさいな。」


友永「?」


真「うっさいな!ガタガタ言ってないで悠子を助けてくれよ!仲真一のファンって言うならそれぐらい、やってみせれよ!」

ガチャ!


僕は電話を切ると綾坂父に近づく。


綾坂父「、、、ありがとう、ありがとう。真一君。」

綾坂父は泣きながら僕の手を握る。


僕は病院の屋外で寝転び空を見ていた。

今日は綾坂と一緒に文化祭を楽しむ予定だった。

綾坂が手を繋いで来て僕が恥ずかしがって、綾坂が拗ねて、僕が謝って、抱きしめて、綾坂の絵が発表されて、僕は、綾坂にプロポーズする、、、

綾坂の血の付いた鞄を思い出す。


涙が溢れて来た。


、、、なんだか病院が騒がしい。


看護婦「、そ、そんな事は出来ません。」


友永「でも、やるんだ。カルテと今の状況、院長を呼んでくれ。後、私もオペに参加する。」

友永がいる。


真「、、、先生、、どうして、、、」


友永「やぁ、仲君。予定を全部キャンセルして来たよ。今から院長と話して僕がオペする。悠子ちゃんは僕が助けるよ。」


真「、、、そ、そんな事、、、どうして?」


友永「効いたよ!仲真一のファンならそれぐらいしてみせろ!ってね。」

友永はウインクしてみせた。


真一は涙が溢れて来た。

「、あ、ありがとうございます!お願いします!友永先生!」



   学校体育館


校長「えー大変悲しい状況です。生徒の綾坂悠子さんが車に跳ねられ重体となっています。今から発表する絵を描いた仲真一君は病院へ行っております。、、、作者不在であり、判断を迷う所ではありますが文化祭の閉会締めと言う事で仲君の絵を発表します。」


白いベールが取られる。


夕陽を背に微笑む少女。表情は愛情に溢れて少しはにかんだ笑顔、真っ赤な夕陽が少女を温かく包み絵からオーラを放つ。見る者全てを包み込む。


誰も何も言わない、言えない。自分の持っている言葉では表現出来ない。、、、静かに泣き出す者も出る。、、、皆、その絵から動けない。


生徒「、、、先生。壇上に上がっても宜しいですか?もっと、もっと近くで見ていたいです。」


「わ、私もみたいです。」


「僕も。」


校長「わ、私も見ていたい!順番で順番で壇上に上がりましょう!1人3分にしましょう!」



その日の文化祭は夜遅くまで行なわれた。

噂を聞いた保護者も集まる事態に発展して、それから1カ月時間指定の異例の閲覧期間が設けられた。




手術中の電気が消えた。


友永が出てきた。


友永「終わったよ。」

友永はニコリとした。

















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