本能。
今日は土曜日で授業は無いが、来週の文化祭準備で出てきている生徒がいる。
僕は、教室で綾坂が来るのを待っていた。
時計の針は4時を刺そうとしていた。
ガラガラ、教室のドアが開く。
悠子「真一、、、いる?」
綾坂は恥ずかしそうに僕を確認すると下を向きながら入ってきた。
悠子「な、なんか、今日、絵が完成すると思うと緊張しちゃう。」
綾坂が通った後には柑橘系のいい匂いがした。香水の香りだ。髪型はいつも通りだが、照れながら下を向いている姿は新鮮だった。
真「綾坂。窓を背にして机に腰掛けて。」
悠子「、こ、こう?」
真っ赤な夕陽が教室を射抜き、静寂な世界が広がる。そこに降臨した女神。
夕陽さえも味方に付けて、まるで夕陽が彼女を包んでいる様だ。
真「凄くいいよ!待ってて今から仕上げるから」
真一の真剣な目が悠子を捉える。そして、一枚の絵に魂が込められる。
程なくして
真「、、、出来た。」
悠子「え、本当に!、、、見てもいい?」
真「う、うん。いいよ。」
悠子「や、やっぱり辞めた!先に見てしまうと発表する時の感動が薄れる。」
真「、、、そっか。じゃあ片付けるよ。」
悠子「いや!やっぱ見る!」
悠子は真一の後ろへ回ると真一の後ろから絵を見た。
悠子「、、、、、不思議ね。、、、人って感動し過ぎると言葉が出ないんだね。」
悠子は後ろから真一を抱きしめて耳元で囁く。
悠子「、、、ねぇ、教えて、、、仲真一は綾坂悠子をどう思っていますか?」
真「、、、すきだよ!大好きだよ!絵が完成した時にわかったんだ!仲真一は綾坂悠子を愛しています。
悠子は真一の正面に回ると真一に手を差出した。
「行こう。」
真一はその手を握り、頷くと立ち上がり悠子を強く抱きしめる。
真「悠子。悠子が欲しい。」
悠子「私も真一が欲しいよ。」
二人は求めあった。今までの時間が二人の気持ちを膨らまし大きく膨らんだ気持ちは大きな音で破裂した。
もう、止める事なんて出来ない。
壊れてしまうかもしれない位に強く抱きしめて、本能のまま求め合う。
そこには人が作り出した常識やモラルなど無くただ貪欲に求め合う人の姿があった。
真一は悠子の中で果て、悠子も身体の中で真一を受け止めた事を感じると嬉しさで涙が出て来た。
真一は今までに感じた事の無い達成感と独占欲で一杯になっていた。
夕陽は沈み、静けさの中で二人は何回も求めあった。
静寂と熱量の矛盾。