友永。
結菜「お兄はこんな時によく絵が描けるよね。」
病院の廊下、長椅子に座る。僕は鉛筆で絵を描いていた。
今日は母さんの手術の日。
思えば初めて母さんが倒れたのは僕が絵の受賞した後で、あの頃は僕の絵が母さんを病気にしたのだと思った。
母さんからこれから絵は描かないでと言われたから本気で僕の責任だと思った。
悠子「真一、お母さんどう?」
綾坂が学校が終わり駆けつけてくれた。
時計は4時半を示す。
もう3時間も経つんだな、、、
真「わからない。友永先生は上手くいけば3時間位って言ってたよ。」
悠子「、、、そう。」
綾坂は僕の隣に座り絵を覗き込む。
悠子「お母さん?綺麗ね。笑ってる。」
真「僕は軽く頷くと鉛筆を走らせる。」
悠子「田中君や美紀達も来るって言ったけど断わっておいた。家のお父さん、お母さんも来るって言ったけど断わった。、、、私は来て良かったのかな?」
僕は絵を描きながら頷き一言。
「ずっと一緒って言ったじゃん。」
僕は鉛筆を止めない。鉛筆を止めると手術が上手く行かない気がして止められなかった。
、、、8時15分結菜は緊張の疲れて寝てしまっている。
綾坂は僕の肩に頭を乗せている。
その時、手術中の電気が消えた。
中から友永先生が出て来た。
友永は辛そうな顔で僕達の前に立つ。
僕は友永先生に問う。
「先生、、、」
友永「、、、すまない。仲君。」
僕は鉛筆を落とした。
友永「こんなはずではなかった、、、
、、、こんなに時間が掛かるとは思わなかった。
真「、、、せ、先生?」
友永「大丈夫!成功だ。お母さん頑張ったぞ!」
僕は頭が真っ白になってその後の記憶が無い。
真「母さん。手術は成功だよ。元気になるんだ。」
涼子「フフ、夢見みたいね。」
結菜「7時間も手術してたんだよ!母さん頑張ったね!」
コンコン。
友永「仲さんどうですか?」
涼子「先生、ありがとうございます。問題ありません。」
真「友永先生本当にありがとうございました。」
友永「、、、仲君。ちょっといいかな?」
真「、、、?」
友永「、、、実は、、、言いにくい事なんだが、、、。」
真「な、なんですか?教えて下さい!先生!」
友永「、、、絵を、あの、手術した時に描いていた絵を譲ってほしいんだ。、、、駄目かな?」
真「、、、フフフッ。いいですよ。あげますよ!」
友永は少し赤くなりながら
「わ、私は君のファンなんだからしょうが無いだろ!」
真「先生も可愛い所あるんですね。」
友永「ありがとう。褒め言葉として受け取るよ。あと、その絵が今回の手術代だからね。」
真「え、そんな、駄目ですよ!いきなりは無理ですが返します!」
友永は鋭い目付きになり
「もっと自分の才能を評価するんだ。そして、小さな籠から飛び出せ!世界に羽ばたいて見せてくれ!君になら出来る!、、、それが俺の願いだ!
仲 真一!」
真「、、、わかりました。今はわかりませんが、わかりました。」
友永は手を出す。
真一はその手を掴む。
友永の手はとても温かかった。
プルルル、ガチャ。
真「、、、綾坂。今、大丈夫?明日土曜日だけど学校へ来てくれないか?、、、絵を仕上げたいんだ。」