天才。
夜の病院、僕と綾坂父の足音が廊下に響く。
泉ちゃんの病室の扉が開いている。
中にはうなだれて椅子に腰掛ける友永一樹。
ベッドで横になる少女は息をしていない。
綾坂父「友永、、、。」
友永「、、、何なんだろうなぁ、俺は。自分の娘一人救えやしない、、、泉になんて謝れば許して貰えるのかな?」
僕は息をしていない泉ちゃんと今日の昼間に会った元気な泉ちゃんがダブってみえる。普通に起き上がりそうなくらいだ。生と死の境界線が僕に衝動をあたえる。
僕は画材を広げた。
真「友永さん。一つお願いがあります。ウェディングドレスを用意して下さい。
僕は昼間に見た泉ちゃんの笑顔、ウェディングドレス、息をしていない泉ちゃんをモデルにして絵を描き始めた。魂の無い人をモデルで絵に魂を込める。僕は一心不乱に筆を走らせる。時折、アトリエで見た父の背中を思い出し今の自分と重ねる。
病室の時計の秒針だけが真実を語っていた。
友永「、、、う、うう。、、、朝か。」
友永のまえに一人の少女が立っていた。
少女はウェディングドレスを纏い両手にブーケを持ち、満面の笑顔で語りかける。
少女「パパ。私綺麗?今まで一生懸命 私の為に頑張ってくれてありがとう。本当に嬉しかったよ!パパの娘で幸せでした。
どうか先に行ってしまう親不孝な娘を許して下さい。、、、あんまりお酒飲み過ぎては駄目だよ!
、、、それでは、さようなら。
パパ、愛してるよ!
友永「い、い、泉ーーー!」
友永は叫んで飛び上がると周りを見渡す。
一枚の絵が置かれていた。
ウェディングドレスを纏った少女が描かれていた。、、、涙が溢れ止まらない。
「こ、ここまで凄いのか仲真一とは。」
綾坂父「、、、天才だな。君は。」
僕は返事をする気力も残っておらず助手席で薄れゆく意識の中で父の背中を想う。
「父さんに少し近づけた気がするよ。」
綾坂家に着いたのは午前9時を回っていた。
綾坂母と制服姿の綾坂が出迎えてくれて僕を綾坂のベッドまで連れて行ってくれた。
綾坂母「さぁ、悠子ちゃん、仲君は大丈夫だから学校へ行きなさい。」
悠子「え、大丈夫かはまだわからないよ。大丈夫か様子見てくる。」
綾坂母「あ、コラ!、、、フフ、しょうがないわね。」
僕は、綾坂のベッドで横になりながら半分落ちていた。夢か現実か分からない中で綾坂が部屋に入ってきた。
悠子「寝ちゃったかな?息してるよね。」
「、、、可愛い寝顔。」
「キスしちゃおう!」
「寒くないかなぁ?」
「ちょっとだけ添い寝しょう。」
「真一だいすき。だいすき。」
「私も眠くなってきた。」
二人は抱きしめ合いながら夕方まで眠った。