綾坂の家 前編
はぁ〜。僕の足取りは重かった。今日は、綾坂邸で悠子を描くのだが、失敗した点が何点か見つかった。まず、綾坂の母だ。強烈な個性で攻めてくる。そして綾坂の父だ。この前の絵を描いて欲しいという依頼がまた出たら面倒だ。
そして、一番の問題が綾坂だ!彼女が今日僕を家に呼んだのがハグ目的だという事だ。
僕は、心のままに筆を運ぶ。こんな気持ちで描けるだろうか?
僕は昨日のラインを見返す。
綾 真一起きてる?明日の時間は6時だと早い?
真 夕方?
綾 違う違う!朝!
真 早いよ!せめて11時頃は?
綾 じゃぁ中取って8時でどう?
真 中取ってないやん!
綾 あとさ〜スカートとパンツどちらが良い?
真 服装は気にしなくていいよ!学校の制服モデルにして描いてるから。
綾 違う違う!どっちが好き?
真 、、、じゃぁスカートで。
綾 真一のエッチ!
真 、、、では、明日9時に行きます!
綾 まだラインしたい!
真 明日、沢山話せば良いでしょ!
綾 、、、わかりました!明日お待ちしております。 おやすみ!ブチュー!
真 チュッじゃなくてブチューの意味は?
綾 よく意味がわかりません!おやすみ!
足取りが重い。別に綾坂は美人だし、他人から見たら羨ましいだろう。僕も男だし、嫌じゃない、興味もある。しかし、両親に見つかったらヤバイよね!綾坂母にもキス駄目って釘刺されてるし
、、、そうだよ。流石に自分家で両親居てそんな事しないでしょう。考え過ぎだ!
綾坂の家に着く。
玄関でインタホンを鳴らす。
ガチャ。
綾坂母「ハーイ。仲君いらっしゃい。」
綾坂母は短いスカート姿だった。
「仲君、スカートが好きなんでしょう?どう?」
綾坂母は30代後半ではあるがスタイル抜群で凄く美人。下手したら20代でも通用する。
真「とてもお綺麗です。あっ、これケーキ買って来ました。」
綾坂母「フフッ!仲君は正直ね。でもあの子昨日寝てないみたいよ!」
真「えっ、どうして?」
綾坂母「スカート選んでたら朝になったらしいわ。あの子、何でも似合うのにね。」
悠子「いらっしゃい、真一。」
玄関先に綾坂が立っていた。
生足、スカートは紺色のヒザ上ミニのフレアスカート、白のタイトなパーカー、顔には月のうさぎのお面。、、、お面?
綾坂母「この子、結局、服装決めれなくて寝てないから顔むくんじゃってお面着けてるのよ!笑ってしまうわ!」
悠子「うるさいなぁ!ほかっておいてよ!行こう!真一!」
悠子は真一の手を取ると2階へ上がって行った。
真「お、おじゃまします。」
悠子の部屋でセーロー厶ーン月のうさぎの面を被っている綾坂と二人きり。綾坂はベッドに座っているが駄目だ。笑いが堪えられない。 ニヤリ。
悠子「アー!笑った!今、私見て笑ったでしょ?
」
真「わ、笑ってないよ。ププッ。」
悠子「やっぱり笑ってるじゃん!もう、いい!」
悠子はそう言ってそっぽを向いた。
僕はそんな悠子がたまらなく可愛いく見えた。悠子を後ろから優しく抱きしめて耳元で囁いた。
「僕の為に悩んでくれてありがとう。」
そのまま悠子とベッドに横になる。
お面がズレると慌てて修整する。
悠子「お面は取らないよ!」
真「いいよ。取りたくなければそのままで、、」
悠子「、、、ねぇ、チューしたい。」
真「お面してたら無理だよ。」
悠子は葛藤していた。そして悩んだ結果。
悠子「よし決めた!お面は取らない!でもこのまま一日中ハグしてる!」
真「えっ?えっ? 絵は描かないの?」
悠子「モデルのコンディション不良の為仕方ないでしょ!」
悠子はそう言うと真一の胸に顔を埋めた。
真「もう、めちゃくちゃだ、、、」
暫くすると悠子は寝息をたてた。、、、仕方ない寝ていないのだから。
僕は月のうさぎのお面下から寝息を立てる悠子の顔がどうしても見たくなりお面をゆっくり外す。
ピクリともしない悠子は深い眠りに落ちている。
お面の下から悠子の美顔が現れる。少し両目が腫れぼったいが気にならない。
真「なんだ、全然綺麗じゃん。、、、やっぱり美人だよな、、、」
僕は暫く悠子に魅入ってしまう。そして、キスしたい衝動に駆られた。
真「なんだろう。この、無抵抗な綾坂の唇がそそられる。それは、普段の生意気な彼女とのギャップであり、そんな無抵抗な彼女を征服したいという欲求に駆られた。初めての感覚、それは、絵を描きたいという欲求にも似ていた。
僕は悠子の唇に自分の唇を押し当てた。
悠子「、ん、んん。」
悠子が目を覚ます、、、どうする?めちゃくちゃ怒られるかも、、今なら間に合う?、、、
悠子が目を覚ました。
悠子「、、、もう…!我慢出来なかったの?」
予想外の言葉、、、悠子は僕の上に乗り両手で僕の顔を掴むと唇を押し当てて城壁を突破して本丸に攻め込んで来た。
、、、なんか前と全然違う。前はただ、がむしゃらだったのに今は愛しさを感じる。
キスってこんなに良いもんなんだ。
悠子は静かに寝息を立てている。僕は画材を広げて悠子を描く。モデルは僕の頭の中に記憶されており、実物が目の前にいる事によりインスピレーションを感じる。2つの要素で僕は作品を仕上げていく。
あの日、教室で夕陽に射抜かれた女神。




