帰宅。
一通り?色んなキスを試すと、疲れて綾坂は眠りについた。
多分昨日はあまり寝てないし、一日中歩いて、色んな人と出合い、気も使っただろう。疲れたよね。、、。可愛いな。こんな可愛い子がなんで僕なんかを好きになったんだろう。
まつ毛長い、鼻筋も通っている。大人っぽく感じる時もあれば無邪気な子供の時もある。直ぐに感情が顔に出て、自分の感情をちゃんとぶつけてくる。それに対して僕はちゃんと答えているのかな?はっきりしない僕を嫌いになっちゃうかな?
首元に四葉のネックレスが光る。
「はは、寝るときは外せばいいのに。」
僕も僕のやり方で今日のありがとうを伝えよう。
僕はむくりと起き上がると画材を取りに行き、無邪気な天使を描いた。
僕の気持ちを込めて。
トントントン、包丁の音で目が覚める。
爺ちゃんが居間で新聞を読んでいる。
「真一おはよう。ゆっくり寝てればいいぞ。」
居間から台所を見ると婆ちゃんと一緒に綾坂が朝ごはんを作っている。
婆ちゃん「そう、そう、包丁は縦にいれるの。」
エプロン姿の綾坂はそれはそれで可愛い。
卵、味噌汁、焼き魚、漬物、白いご飯。久しぶりの婆ちゃんの朝ごはん。
学校の時は時短でトーストだけだったからご馳走だ。
味噌汁を飲む。じっと綾坂が僕を見る。
真「どうした?」
悠子「美味しい?」
真「うん、美味しいよ。」
悠子「良かった!」
婆ちゃん「ハハッ。いいのう。新婚さんは。」
ご飯を食べると僕は綾坂とアトリエに行き、お昼まで綾坂を描いた。今日は余裕を持って帰る事にした。
爺ちゃん「寂しいのぅ、もう行ってしまうか。今度はいつ来れるんじゃ?」
真「はは、いつでも来れるよ。」
婆ちゃん「早く、ひ孫の顔がみたいのぅ。」
悠子はお腹を擦り、ニコリとして。
「はい。大丈夫です。」
真「いや、いや、いや!いないから、まだいないから!」
爺ちゃん「ハハハッ。面白い嬢ちゃんじゃ」
婆ちゃん「真一、悠子ちゃんを離すでないぞ、結婚式は呼んどくれ!まだ数年先じゃろうが頑張って生きとるで!」
僕と綾坂は顔を合わせ苦笑いする。
僕と、綾坂は歩いて駅まで行く事にした。
手を繋ぎ、なるべくゆっくり帰る事にした。
悠子「はぁ、帰りたくないなぁ。」
真「なんで?そんなに楽しかった?」
悠子は立ち止まり僕の顔を見つめる。
悠子「だって、帰るとまた他人に戻っちゃうでしょ?」
真「ハハッ。そんな事ないよ。何が心配なの?」
悠子「だって真一は私に好きって言ってないもん、絵が完成したら、、、って言うけど完成してやっぱり違いました!って言われたらどうするの私!」
真一は少し困って頭を掻きながら悠子を見る。
悠子がいきなり唇を重ねて来る。
真「、ウ、ウウウ、、、」
長い、凄く、長い、深い、、、
今までで最長記録を更新する。
悠子「許さないから、やっぱり好きじゃないなんて言ったら許さないからね!」
真「そ、それって、僕の意志、感情はどうなるの?」
悠子は真一の手を引っ張り歩き出す。
「うるさい。行くよ!」
駅で綾坂母へのお土産を、買って僕はこの町を後にした。以前とはまるで違う希望に満ちた気持ちで。
電車に揺られて僕はいつの間にか寝ていた。
悠子は僕の顔をじっと見ている。
悠子「、可愛いなぁ。」
今まで、色んな男から告白されて遊びに行ったり
友達になったりして男は沢山見て来たつもりカッコイイ子もいたし面白い子もいたんだけど好きという感情まで発展しなかった。
真一は童顔で中性的、目が優しくて笑顔が可愛い
見ていると時々、抱きしめてめちゃくちゃにしたくなる。私って変態かなぁ?
きっとギャップなんだと思う。スポーツカーで超低燃費みたいな。いや、真一の場合は軽トラックでF1仕様みたいな感じ。軽トラなのにF1出れます!みたいな。
悠子は真一から貰ったネックレスを触りながら真一の横に行き頭を真一の肩に寄せて目を閉じる。
名古屋へ帰って来たのは夜7時、綾坂を家まで送る、綾坂の家が見えて来る。
悠子「ママに挨拶してく?」
真「え、き、今日?、今?」
て、いうか誰か人影が見える。綾坂の家の前で仁王立ちしている。綾坂母だ。
綾坂母「お帰り!、、、貴方が、大事な一人娘を連れ回し、傷物にした仲君ね!はじめまして!」
間違いない、間違いなくこの人は綾坂の母親だ!嫌味な言い回しがそっくりだ!凄く美人だし、
顔がそっくりだ。
真「はじめまして、こんばんわ。昨日はすみませんでした。あっ、コレお土産です。」
綾坂母「フフッ、まぁ上がって!お茶でも入れるわ。」
RC造4階建て、庭も広い、玄関に絵が飾ってある
金持ちの家だ。
ふかふかのスリッパを履いてリビングに通された。
リビングで、待っていると廊下のヒソヒソ話が聞こえて来る。
綾坂母「悠子はああいう顔がタイプなの?小動物系、ちょっと意外ね。」
悠子「フフフ、見た目は小動物でも中身は百獣の王よ!」
綾坂母「まぁ、もう少しいじってみてもいいかしら?仲くんてば、なんかいじめたくなっちゃう!
悠子「わかる?そうなの!なんかね。めちゃくちゃにしたくなる時があるの!」
ギィー。扉が開き二人が、入って来た。
綾坂母「お待たせ!お紅茶で良かったかしら?」
悠子「真一、クッキー食べれるよね?」
怖いなぁ。女性、、、いや、この親子怖いな。
今から僕はいじめられる。
綾坂母「ところで仲君、悠子綺麗でしょ?どこが好きなの?」
真「あ、いや、まだ好きとかはっきり言ってなくて、その、少し、時間が欲しくて、いや、凄く綺麗な人ですよ。」
綾坂母「え、悠子の事好きじゃないのに傷物にしたの?遊びだったの?」
悠子「ママ止めて。私は大丈夫だから。」
綾坂は少し下を見る。
何なんだこの三文芝居は、、、
真「う〜んと、あっ、これが僕の気持ちです!」
僕はバッグからA4サイズの絵を取出し梱包を剥がして綾坂母に見せた。
それは、寝ていた綾坂の寝顔を描いた物だった。
二人は絵を見つめて動かない。
綾坂母「何だろうね。この優しくて包まれる感じ、色使いがとてもいいわ、私は絵の事わからないけど凄く愛情に溢れてるわ。」
悠子「これって昨日夜描いたの?、、、嬉しい、本当に嬉しいよ真一!貰っていい?私のだよね!」
終始感動している二人。
ガチャ。「なんだ。騒がしいな。」
オールバックな、髪型、眼光鋭く、スーツに身を包み高そうな鞄を持った男が入ってきた。
綾坂父だ。
僕は慌てて席を立ち。
真「え、あ、はじめまして。僕は綾坂さんのクラスメートで仲 真一と申します。突然おじゃましてすみません!」
綾坂父「、、、そうか!君が仲君か!僕は君のファンでね!君の絵の模造品を買ってしまったくらいだよ!」
綾坂父は僕の手をガッチリ握ると肩をポンポンと、叩く。
綾坂父は二人が魅入っている絵を見ると
「素晴らしいな。荒削りだけど仕上げれば凄い作品になるな。色使いや構図、タッチが繊細だ!素晴らしい!」
綾坂母「でもさ、これって寝顔だよね、、、昨日の晩?、、、それって。」
悠子は照れながらお腹を擦る。
真「いや!なにもしていません!綾坂!紛らわしい事するなよ!」
綾坂父がギロリと睨む。
真「本当に何もしていません。僕は!」
綾坂母「僕は?、、、悠子ちゃんが何かしたの?
仲君を襲ったの?」
綾坂父がギロリと睨む。
綾坂母「フフフ。冗談はここまでね。ごめんなさいね仲君、家は少し変わってるから、気を悪くしないでね!、、、晩御飯食べて行って。」
綾坂父「、、、仲君、少し話がしたいんだ。良いかな?」
真「は、はぁ。」
綾坂の事かな?どういうつもりだ責任取れとか?
僕は綾坂父の書斎にいる。
綾坂父「実は君にお願いがあるんだ。イヤ、無理にとは言わないし私達がこんな事を頼んではいけない事も百も承知だ、、、実は私の友人が今度、病院を新設するんだ。その友人とは君が中学生の時に描いた名作のファンでね。もし、お願い出来るなら1枚聖母の絵を描いた貰えないかな?病院完成時に玄関アプローチに飾りたいんだ。勿論、報酬はさせて貰う。、、、いや、お金の問題では無いな。すまない、気を悪くしないでくれ。
、、、忘れてくれ。少し興奮してしまったよ。
僕は書斎を、出ると廊下で綾坂が待っていた。
悠子「真一、気にしなくていいよ。嫌なら断っておくし、そんな、簡単じゃないと思うし。」
真「ハハッ。大丈夫だよ綾坂。僕は気にしていないから。でも少し考えてみるよ。僕も病気の母がいるし僕の絵がそんな人達の役に立つなら描けるかもしれない。」
悠子「、、、私の事嫌いになった?」
真「何で?お母さん面白いし、お父さんも常識人だし、しっかりしたご両親だよ。綾坂が、うらやましいよ。」
綾坂は赤くなり僕を見つめてきた。
「良かった。」
綾坂は僕に抱きつく。目がトロンとしている。
危ない!これは危ない!何回も食らっているからわかる!僕は綾坂の肩を掴み離れると先に階段を降りる。
真「お、お腹へったね!ご飯もうすぐかなぁ?」
悠子「、、、もう!」
悠子はプクリと膨れる。
その晩は綾坂家でご馳走をよばれた。
明日から学校もあるし、明日は母さんのお見舞いへ行こう。