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帰郷4

山下「よっ!俺達も今来た所だ。」

山下は苦笑いしている。

静香「、、、」

悠子「、、、」


真「おい、山下何で静香を連れて来たんだよ?」

僕は小声で山下に囁く。


山下「、、、わりぃ。努力はしたんだ。」

山下は右頬を僕に見せる。引っかき傷だ。

真「静香にやられたのか?」

僕は小声で山下に囁く。


山下「痛そうだろう?、、、かなり痛いぞ!」


静香「ちょっと!あんたと話したい!」

静香は悠子を指を指す。


悠子「私は あんた じゃないけどいいわ聞いてあげる。」



静香「真一。ちょっとこの子借りるよ。」


真「、ち、ちょっと待てよ!静香!」


悠子「仲君。いいの。ちょっと待ってて。」

僕の静止を振り払い悠子は静香の後に付いていく。


山下「お前の彼女、目が座ってたぞ。怒らすと怖いタイプだな。」


真「え、ええ、まあ。」



二人は近くの神社まで来た。

静香「あんたの知らない真一の事、教えてやるよ。」

悠子「別に知らなくても良いんだけど。今の仲君が大事だから、過去はどうでも良いんだけど。」


静香「私は良くない!!!いいから黙って聞いてろ。」

悠子「、、、。」



   小学6年生 真一、静香。


静香「ねぇ、しんちゃん今日も絵を書くの?皆とサッカーしないの?」

真一「う、うん。母さんが病気だから絵を書いて母さんを喜ばして元気にしたいんだ!」


真一はいつも絵を書いていた。私はいつも彼の横で彼の絵、、、いや彼を見ていた。


静香「ねぇ、しんちゃん今描いている絵、今度のコンクールに出品するの?

真一「うん!母さんを描いているんだ。でも病院の面会時間は限られているから、母さんの姿、表情を記憶してお家で描くよ。」

静香「私も見ていていい?」

真一「いいけどつまらないよ。」


私は、いつも真一の横にいた。毎日、時間が許される限り。



   中学1年生 真一、静香。


真一「出来た!ついに完成したよ。」

静香「おめでとう!しんちゃん!見ていい?」


その絵は彼の母親が椅子に腰掛け窓の外を眺めている絵だった。私は鳥肌が立った。

これが本当に中学1年生が描いた物なのか?

絵が分からない私にも伝わってくる躍動感、悲壮感、愛情、願い。自然と涙が溢れる。


静香「しんちゃん凄いよ!この絵本当に凄い。」

真一「静香がいつも横にいてくれたから描けたんだょ。ありがとう。」


そして、その絵は各賞を総ナメにして、文部大臣賞を受賞した。

町は湧き上がり真一は英雄となった。

その絵は海外でも取り上げられて、ある資産家の目に止まる。マスコミは1億ドルと謳ったが実際は作者の希望金額で、というのが真実だ。


静香「ねぇ、しんちゃん。あの絵売るの?」

真一「あの絵は母さんの為に描いたんだ。金額じゃないんだ。売りたくない。」

静香「そうだよね!あれはしんちゃんの魂だもんね!」


そんな少年の純粋な、気持ちを踏みにじる様にマスコミは真一を叩いた。


静香「しんちゃん、もうマスコミいないよ!大丈夫!」

真一「まるで犯罪者だね。家に帰れないや。」


報道の男「こんにちは!aaaテレビですが仲 真一君ちょっとお話しいいですか?

どうして絵を売らないの?巨万の富が入るのに?

まだお金の価値がわからないのかな?

資産家は気分を害してますよ!


静香「しんちゃん逃げよ!」

私は真一の手を引いて近くの神社へ逃げ込んだ。


神社にある小屋に私達は身を潜めた。

そこへ報道関係の男2人がタバコを咥えてやって来た。


報道の男1「ったくよ。あのガキちょっと賞取ったくらいで有名画家気質出しやがって。1億ドルくらいで売っちまえば面白いのによー!」

報道の男2「全くだぜ。町の町民にガキの出生なんて聞いてもインパクト弱いしな。」

報道の男1「そうだ!確か母親が入院してるはずだからそっちを攻めるか!題して天才を育てた母親!。

報道の男2「いいね!それで行こう!あと、絵画の巨匠の辛口コメントも頂こう!あとは、町長に金掴ませておこう。何かと融通が効くからな。」

報道の男1「もうちょっと稼がせて貰おうかね。」


男達は高笑いをして去って行った。


真一は拳を握りしめて震えていた。

静香は真一を抱きしめる。

静香「大丈夫だよ。しんちゃん。私が守ってあげるから。私がずっと隣にいるから。」


そして母親は真一に絵を描く事を封印させた。



   中学3年生卒業 真一、静香。


静香「ねぇ、しんちゃん。私達同じ高校行くんだよね。これからもずっと一緒だよ!、、、あのね

今日、卒業式の後、神社へ来てくれない?

話があるの!

真一「あ、ああ。わかったよ。」

静香「約束だよ!先に行ってるからね!」


そして真一はこの町を出た。誰にも言わずまるで夜逃げの様に町を捨てた。




  そして、今日。

静香「私の時計は、止まったまま、あの時のしんちゃんをずっと探してた。突然、羽をもぎ取られた気持ちで今日まで過ごしてきた。大好きな人は私を捨てて行ってしまった。大好きと伝える事も許されなかった。」


悠子「、、、」


静香「あなたならどうする?明日突然、真一がいなくなったら?」


「、、、ごめんなさい。あなたには関係無い事。

でも本当に苦しかったの。しんちゃんには静香は怒り散らして帰ったと言っておいて。願わくば二度と会いたくないわ。」


静香は涙を一杯貯めて、溢れない様に上を向いて去って行った。


山下「おっ、、、帰ってきたぞ、、、静香がいないな。」

真「ヤバイね、ヤバイね。どうしょう!」


真「あ、綾坂大丈夫?」

悠子「、、、うん。大丈夫。静香さんは昔ばなししてくれたよ。」

悠子は真一の胸に頭を沈める。

真「ど、どうした?綾坂、大丈夫か?」


悠子「仲くん、行かないよね。何処にも行かないよね?ずっと、隣にいてくれるよね?」


真一は少し目を細めて悠子の頭を軽く撫でた。


真一「、、、うん!ずっと一緒だよ。」


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