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オタクをプロデュース。  作者: 五月七日 外
ライバルは強し
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 翌朝のことだ。

 登校途中、運が悪いことに鷲崎と出くわしてしまった。

 鷲崎とは小学校や中学こそ違うが、方角も一緒で案外家が近くにある。昨日、家の近くまで送った後あまりに早く家に帰れたから驚いたほどだ。

 そんなこともあり、さすがに昨日の今日で鷲崎と会うのは色々と面倒だ。……そう思って珍しく早起きしたというのに、朝一から遭遇してしまっている。某ことわざみたいに早起きしてもそうそういいことは無いみたいだ。

 鷲崎はタターっと軽く駆けてくると、僕の隣に並び声をかけてくる。


「DDおはよー!」

「ああ……おはよう」

「なに?朝からテンション低っいわねー。そんなんじゃ一日持たないよー」


 朝から昨日とテンションの変わらない鷲崎は、言いながら僕の肩を叩いてくる。

 そういうのは何か勘違いしそうなのでやめていただきたい。……いや、まあそれを鷲崎に言うとそれはそれで「意識しすぎー!ウケるー!」とか言われそうだから言わないんだけど……。

 冷静を装って鷲崎の方を向く。

 

「ふつう、朝ってテンション低いもんじゃないの?」


 鷲崎がおかしいんだよ。

 そう意味を込めて視線を送った。


「DDもまだまだねー。牛乳足りてないんじゃないの?」

「なぜにそこで牛乳が?」

「カルシウムは最強なの。ほら、小学生のときってあんまり風邪ひかないじゃん。あれはきっと牛乳のおかげなのよ。わたしは毎日ちゃんと牛乳飲んでるし、おかげでこのかた産まれて風邪知らずなんだから!」


 鷲崎はそう言って自慢気に胸を張る。

 確かに牛乳は大切かもな。……視界に入っている鷲崎の胸を見ながらそう思った。

 と、さすがに胸ばっかり見ていると良くないので、慌てて視線をそらす。

 

「それで鷲崎は朝からテンションも高いと」

「そういうこと。DDにも一個あげよっか?」

「いや、いい……」

「そ?ならいいんだけど」


 少し寂しげにそう言う鷲崎の手元には小さなビニール袋。中には紙パックの牛乳が二つも入っていた。

 ……どんだけ牛乳すきなんだよ!

 一人、心の中でツッコミを入れる。

 

 そうして、しばらく他愛ない話をしていたが、鷲崎の方から本題を切り出してきた。


「それでさ……作戦のことなんだけど」

「ああ、それな」


 言って、昨日のことを思い出す。

 鷲崎の頼みは彼女をオタクにすることだが、実際はただオタクにするだけでは足りない。別に、鷲崎は本当にオタクになりたい訳ではなくて、赤羽に告白できるだけの自信がほしいだけなのだ。もう少し言えば、赤羽と付き合えればそれで満足してくれる。

 そうすれば、僕の黒歴史が明るみに出ることもないし、鷲崎の件が済んでしまえば、今度は僕の番だ。モテモテになるための手伝いをしてもらえる。

 なので、昨日のうちにやるべきことをいくつか作戦としてまとめていた(けっこうガチで)。

 

「えっと……まずは、赤羽の調査だったな」

「うん、わたしの知ってる限りたっつーは誰とも付き合ってないはずだけど、万が一があるからね」

「とりあえず、近いうちに赤羽が誰かと付き合っているかどうか。あとは好きな人がいるかどうかを調べないといけないな。ついでに好きなタイプとかも確認しとかないと……」

「ううん、違うよDD」

「ん?」


 一瞬、鷲崎の声のトーンが落ちる。


「近いうちじゃなくて、今日中」

「へ?」

「今日中にそれは調べること。いい?」


 と、突然の有無を言わさぬ雰囲気の鷲崎に僕はただ「うん」と頷くしかなかった。……女子こわ!急に声音変わりすぎじゃね!?なんで笑顔のまんまそんな冷たい声を出せるわけ……?

 と、僕が内心戸惑っている間も鷲崎の話は続く。


「昼休みがチャンスね。確か、たっつーはいつも食堂でご飯を食べるからそのときにでも聞けると思う。そこを逃さないように!」

「僕、弁当持ってきてるんだけど!?」

「そこは……ほら!早弁でもして、がんばって」

「そんなに食えるか!」

「ええー……男の子でしょ」


 ……そんな「お兄ちゃんでしょ」みたいなこと言われても、無理なものは無理ですよ……?


「男が全員大食いだと思うなよ。弁当食べたらふつうに腹一杯だって」

「うーん……どーすっかなぁ」


 と、鷲崎は一瞬悩む素振りを見せたが、何か思いついたのだろう。すぐに目をキラキラと輝かせ出していた。


「じゃあ、その弁当わたしが食べるよ!」

「いや……えと、それはマズイだろ」

「なにが?」


 そう言って鷲崎はキョトンとした目で首を傾げる。

 ふつうは色々と気にすると思う……男子の弁当食べてるとか箸が間接キスだとか。僕はものすごい今気にしてるし!……だが、鷲崎はそんなこと思い付きもしないのか、僕の動揺をものともせずに、なぜか鞄から財布を取り出していた。

 そうして、ほれ、と。僕の弁当をよこせと手を出していた。


「……気にしないならいいけどさ」


 なんだか、いけないことをしているような気をしながら、僕は鷲崎に弁当を渡す。そして、変わりに千円札が鷲崎から渡された。


「これは?」

「お昼ご飯代……弁当もらっておいて、お金出させるのはさすがに悪いし……」

「そうっすか」


 個人的には僕の方がお金を払うべき気がする。……いや、まあなんとなく。

 鷲崎は弁当を鞄に、僕は千円札を財布に、それぞれ入れながらも話は進む。


「これで昼休み行けるね!」

「……わかったよ。昼休みに調べてみるよ」

「よろしく!わたしのほうでもオタクの専門?調べておくね」

「よろしく、余裕があったら赤羽に好きなジャンル聞いておくよ」

「おっけいー。よーし、今日からがんばるぞー!」


 鷲崎はそう言って、おーと右手を大きく上にあげる。

 僕にそのつもりはなかったが、鷲崎に無理やり手を挙げられる。


「……おーう」


 やっぱり、早起きなんてするべきじゃないな。

 テンションの高い鷲崎を横目に、そう確信した。

 


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