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オタクをプロデュース。  作者: 五月七日 外
プロローグ
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プロローグといえばそんなもの

 人間生きてて、いつもの生活が変化するなんてことは、まあそうそうない。

 ドラマの中や小説の中での話だったら、突然主人公の周りで異変が起きたり、驚きの出会いがあったり、はたまた謎の能力に目覚めたりと何かしらのきっかけにより、その生活を大きく変えていく。それからはきっと、慌ただしくも楽しい日常が待っていることだろう。……ダークファンタジーみたいな話だと楽しいかどうかはわからないが、なんだかんだで主人公にとっては充実した生活になっているはずだ。

 きっとみんな、そういうちょっと変わった非日常を心のなかで求めているのだ。憧れているのだ。だからこそ、頭の中でそんなものはあり得ない世界だと理解しているにも関わらず、ドラマにハマったり小説を読んだり、ちょっとした出会いがないかと色々なときに心を踊らせるのだ。

 かくいう僕も、かつては、自分の心に闇の竜と光の竜二体の魂を宿らせていると考えていたり、竜の力が目覚めると信じてパワースポット巡りや鍛練もしたりしていた。一言で言えば中二病を患っていた。なので、あり得ない非日常が大好きなタイプな人間ではある。

 ただ、さすがに高校二年生にもなれば現実を理解できるので、一般的なレベルで非日常を好きでいる。昔みたいに本気で超能力に目覚めるなんて思わない。せいぜい高校に入ったら可愛い彼女ができるんだと想像したり、いやいや高校二年生になれば可愛い彼女ができるんだと想像したり……たぶん?大学に入ったら可愛い彼女ができているんだろうなぁと想像したりするくらいの普通の人間として生活している。

 つまるところ、何が言いたいのかというと。

 結局、僕が憧れているようなきっかけなんてそうそう人生では起きないし、非日常なんて訪れない。そう頭では理解しつつも心の片隅で何か起きないかなぁと、非日常に少しだけ憧れをもった高校生活が僕の日常だ。

 

 今朝もそんなどうでもいいことを考えながら学校に向かう。

 坂道を登るときは別にいいが、降りるときは自転車から降りないといけないという無駄に長い坂道を登り、校門をくぐる。右手に見えるグラウンドでは朝練に勤しむ生徒がチラホラ。


「……がんばるなぁー」


 誰に向けるでもない言葉がこぼれる。

 別に頑張ることは素晴らしいことだと思うし、馬鹿にするつもりもない。ふつうに頑張れることに尊敬する。

 ただ、僕にはそんなに頑張れることが理解できなかった。僕にはそこまでする目標や夢がないから。

 だからさっきの言葉は僕にできないことをできている人たちへの憧れでもあり、応援でもあるのだろう。無意識のうちにそんな言葉がこぼれるなんて、ちょっと年をとったのかもしれない。


 グラウンドを背にして階段を登る。

 挨拶運動をしている生徒会や教師をやり過ごし下駄箱に到着。

 ここまではいつも通りだった。

 そう僕にとって何の変哲のない、日常だ。


「たんだこれ……?」


 下駄箱には上靴と見慣れない手紙。レターセットというのだろうか。アニメでよく見る形そのものの手紙が上靴の上に置かれていた。

 意外にも僕の憧れていた非日常へのきっかけは、こういう何気ない一日に突然やってくるみたいだった。

 こんなことなら入学式や夏休みまえやらに変に気を張らなければよかった。バレンタインデーなんて無駄に校内を散歩したのに……

 とまあ、そんな過去の話は置いといて。

 僕は人目のつかないうちに、手紙を制服のポケットにしまい下駄箱を後にする。

 教室で荷物を起き、そのままトイレの個室へ。

 なんだか途中、視線を感じた気もするが今はそれどころではない。

 脳内を過る予感に鼓動が早打っていた。

 手に握る手紙は汗のせいか気持ちしんなりしている。

 封をするようにあったシールを破らないように剥がしてから中身を取り出す。


『大切な話があるので、放課後プール裏に来てくれませんか?待ってます』


 薄いピンクの紙にはそう書かれていた。

 差出人は不明。

 字の感じから言うと女子だろう。

 今ある状況から僕の頭では一つしか答えを考えることができなかった。


「これは……ラブレターってやつだな……」


 言って、少し口角があがる。

 きっと今の自分はにやけてしまって酷い顔をしているに違いない。

 今の時代ラブレターかよ……なんて小言も脳裏に浮かぶが、そんなことよりもラブレターを初めてもらえた喜びの方が大きかった。

 しばらくしないと顔の緩みはもどりそうもないな……。




 非日常なんてありえない。

 きっかけなんてものやってこない。

 能力が目覚めなければ、突然の出会いなんてものもない。

 そんなことは理解している。分かっている。

 物語の主人公たちと比べればとても小さなものだけど。

 今にしてみれば、この手紙が僕の日常を変えるきっかけになったのだ。

 憧れていたようなものとはかけ離れた非日常を送るきっかけに。


 つまるところ、これは一通のラブレターから始まる物語だ。

 





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