冥福
小高い丘の上にある寺まで続く長い階段を上って来た男に参道に立っていた住職が声をかける。
「お祓いですか?」
問いかけに男は頷き、持っていた紙袋から人形を気味悪い物を持つように取りだし、住職に差し出しながら答えた。
「人形を置いてある部屋から、夜な夜なすすり泣きが聞こえるんです」
住職は人形を受け取り赤子を抱くように胸に抱く。
男は人形に続いて分厚く膨らんだ封筒を渡すと逃げるように階段を下りて行った。
住職は胸に抱いた人形を本堂に連れて行き座らせる。
本堂には黒髪で着物を着た日本人形、金髪碧眼のフランス人形、ファンシーな縫いぐるみなどが沢山置かれていた。
深夜住職が読経する後ろに人形達が座り、彼女達を可愛がってくれた持ち主の冥福を祈っていた。