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第五話『雑貨屋ウィッチクラフト』

俺は今ノアの大通りを歩いている。

隣にはクレアはその白い髪をなびかせながら俺と会話をしている。


「アリスのご飯は美味しかったでしょ?、あの子的にはまだまだだと思ってるみたいで、今もずっと料理の研究をしてるのよ。」


「ああ、店を出せるぐらい美味しかった。あと俺の好みにあった味だったからまた食べたいな。

それにしても、俺はアリスを守るためなら何でもしなきゃな…」


話をしてわかったのだがやはり、クレアはお嬢様なようだ。

本名は ネオフィール クレア 世界に名は知れていないようだが、相当なお金持ちで、あの屋敷周辺で知らない人はいないと言う。両親は今、別の都市で活躍していて、貴族階級なそうだ。


「さあ、ここが冒険者雑貨屋『ウィッチクラフト』よ。」


クレアが指を指している先には大きな立派なお店が見えた。

外壁は木でできているのだが、風化していてとても古めかしい。


そんなことを俺が考えているとクレアが店の扉を開ける。ギギギと大げさな音を出しながら扉は開き中から声が聞こえてくる。


「いらっしゃい!れありんかぁ!」


元気よく返事したのは緑の髪をした少女だ。

年はアリスよりも低そうで大きな魔法使いの帽子をかぶっている、服は黒色で魔女のような服装だ。

クレアのことを親しげにれありんと呼んでいる。


この店の中は薄暗く、魔法で着火されているであろうランタンが設置されている。

店内は外見のように広く、俺のいた世界で言うショッピングセンターに近いものだろうか、コンビニの4倍ぐらいの広さがある。



「んんぅ?、その隣の人は?」

緑髪の少女が俺の方を見てそう言う。


「この人はアオト、今日はアオトの装備を揃えに来たのよ。」


「はじめまして、私の名前はカノン、あなたはクレアのお友達ってことでいいのかなぁ?いいものを仕入れてるから見ていってぇ〜」



「こちらこそはじめまして、店主さんは君なのか?随分と若いと言うか、若すぎるけど。」


「なにをいうのぉ。私はこう見えてもクレアと同い年ですからねぇ!」


俺はその言葉を聞いてとても驚いた、見た目はロリっ子、中身は女性とか合法ロリかよ。この世界では見た目は頼りにならないみたいだ。そういえばあのスライムの一件も見た目をなめてかかったせいで怒ったことだったんだっけ。


カノンは口をプクッと膨らませそういったので、俺はちょっと慌てながら話を続ける。


「そっそうなんだ、で、クレア、俺はなにを買えばいいんだ?」


「グッピネル討伐の時に私が換金してきたお金が

だいたい60000マリアだから服を買って、魔書と剣でも買えば?」


クレアがなぜか嬉しそうにそう言う。おそらく買い物が大好き系女子なんだろう。俺のいた世界でもたまにいる人種だ。


その証拠にクレアは店に入って俺の装備を買いに来たと言った途端、目をキラキラさせながら綺麗なポーションが売ってあるコーナのところに行き、ずっとそれを見つめている。



「今日はいい剣が仕入れられてねぇ。

魔剣イリスっていって、魔法が付与しやすい軽い素材でできた剣らしいよ。オススメの品だねぇ。」


カノンが慣れた口調でそう言った。だがまあ店主さんが直々におすすめするということは、その魔剣はお高いのだろう。


「その魔剣の値段はいくらなんだ?」


「ちょっと値段は張るんだけど40000マリアだよぉ。

おまけで魔書もつけてあげるねぇ」


予想通り値段は高かったが、おまけで魔書がつくならあと買うのは服だけだ。


「服は何マリアぐらいで買えるんだ?」


「そうだねぇ。ピンキリなんだけど、魔法耐性が高いだけのものなら上下セットで10000マリア、鎧とかそういう物理耐性が高いものは20000マリアぐらいで買えるわ。」


やっぱり鎧とか金属が使われているものは高いのだろうか、俺はまだレベル5だからそんな重装備は必要ないだろう。


「ちょっとそのコーナに案内してくれ。」


「わかったわぁ。」

カノンはそう言うと俺を店の奥の方に案内する。

途中にポーションを見ているクレアを見かけたが、クレアは俺たちのことなんか見向きもせず綺麗な緑色をした回復用ポーションを凝視している。


本当は俺の装備を選びに来たんじゃなくて、ポーションを見に来たんじゃないのかと思った。


「クレアはいつもここに来ると、あんな感じなのか?」


「あははぁ!れありんはポーション大好きだからね、綺麗なやつが仕入れられるとああやって見てるのよぉ。」


歩きながら辺りを見回して見ると剣や本、屋敷に置いていたお湯を沸かす魔道具など、本当に色々なものが売っている。さすが雑貨店だ。俺の世界の言葉に言い換えるなら、生活必需品、電化製品等だろうか。


「さあついた、このコーナーだよぉ」

カノンが両手を広げてコーナを紹介する。


コーナには、魔法使いの服、平凡な冒険者の服類、鎧、魔法効果が付与された宝石類、盾、ネックレス、

イアリング、ハンドガード……


いや本当になんでもあるなこの店。


「今日は早くに来たから、色々まだ残ってると思うんだけどねぇ」


カノンが右往左往している俺を見てちょっと心配そうにそう言った。このお店の服は人気なのだろうか、すぐに売り切れになるようだ。


「じゃあこの、魔法冒険者用のセットにしようかな。」


俺は平凡な10000マリアの装備を選んだ。

軽く、丈夫な素材でできていて、色は茶色だ。


「じゃあ、何色にしよっかぁ。」


「…?、茶色のやつしかないんだけど。」


俺は選んだ装備を見ながらそう言った。


「私の店では染色魔法で、服を染めてあげるサービスをしてるのよぉ」


俺は意外そうな目でカノンを見つめる。

レンドの鎧も魔法で染めてもらったのだろうか。

俺がいた世界よりもファッションは進んでいるのかもしれないと思った。


「黒色にしてもらおうかな…」


俺は小声でそう言った。あまりファッションには気がなかったので消極的になってしまったようだ。


「わかったぁ!いい感じに黒色に染めるねぇ。その服貸してぇ」


カノンはそう言うと俺の手から服を取り、小さな体でせっせと染色室と書かれているところに入っていく。


しばらくするとその部屋から出てきた。


「はいどうぞぉ。」


黒色と白色のコントラストがかっこいい染色された服と、追加で青色の宝石が付いたネックレスを渡された。俺は黒と白の組み合わせが好きだ。カノンはセンスが良いと思った。

でもこのネックレスはなんだろう?俺はネックレスを見つめる。


そんな俺を見てカノンが言った。


「その魔導石はおまけだよぉ。一度だけどんな攻撃も通さないバリアを張る優れものなのぉ。

バリアって叫んだら発動するからねぇ。バリア使ったあとは普通にネックレスとして使えるから人気の商品なのぉ。」



カノンはそう笑いながらそう言った。おまけでいろいろくれる…ああ、昔の駄菓子屋を思い出す。



俺が小さい頃おばあちゃんと駄菓子屋に行ったとき、おまけで息を吹くと、ピューと音を立てて巻いてある紙が伸びるあのおもちゃをもらったことを思い出した。



今は大人になっているが、やはりおまけという響きは心に響く良さがあると思った。


「さあ、お金を払おうか。クレア!装備決まったぞ!」

俺は遠くにいるクレアに大きな声で呼びかける。クレアはこっちを見て、

「わかったわ!、今そっちに行くからちょっと待ってて。」


「走るなよ。この店結構危ないものとか売ってるから。」


「危ないものとは失礼だねぇ!この店のものは全部役に立つものよぉ」


カノンは怒った顔で俺にそう言った。


「はいはい、鎧やら剣やらすごく役に立つものばかりでしたね。」


俺はそんなカノンを少し馬鹿にした口調でおちょくった。なんだか年はクレアと同じなのに見た目が子供ってだけでそういう扱いになってしまうことに今気づいた。


アリスと短期間であんな仲良く?なれたのも俺が子供好き?いや子供あやし好き?

だいたいアリスは中学生後半ぐらいの見た目だし、俺らとほぼ変わらないだろそんなの。


もうなんでもいいが俺はロリコンではない、俺はロリコンではない。

いや違うから本当に、まじで俺ロリコンではないから。断じてないから…


「何考えてんのぉ?顔が怪しいよぉ?」


カノンの言葉ではっと我に返る。


「ッッ!、なんでもないんだ。本当に。」


「そういうことにしといてあげるねぇ。」


カノンが優しくてよかった。クレアがカノンのところに到着する。

到着した途端、クレアはカノンに話しかけ、お金のことについて話し始める。

クレアは「かののんはお金持ちだしちょっとまけてよ」とか言っているが、カノンの方は

「れありんはお金への執着心がすごいね」とか負けずに言い張っている。

仲がいいのはいいことだが早く決着がついてほしい。


最終的にクレアが折れたのか50000マリアをカノンに支払った。


「ありがとうございましたぁ、またのお越しをお待ちしておりますぅ。」


カノンはもう何千回も言ったであろうそのセリフを満面の笑みで俺達に言った。

そんな彼女を背にして俺達は屋敷へ帰っていく。クレアはまだカノンと少し話していたいのか後ろを見て彼女に手を振っている。魔剣はかさばったのでクレアにストレージしてもらった。


歩き始めてしばらくしたあとクレアが俺に話しかけてきた。


「はい、この10000マリアはアオトのお金よ。」

クレアはそう言って俺に札を渡してきた。アルバイト禁止の高校に通っていたので、自分でお金を稼いだという経験は初めてだった。じゃっかん俺も目をきらめきながら、こう言う。


「ありがとう。大切に使うよ。」


「うふふ、けどこれアオトがグッピネル倒して得たお金だから私のじゃないしね」


「あはは、倒したって言っても止めさしたのはクレアだけどな」


そんな事を話しているうちに屋敷についた。


屋敷の庭には噴水があって、全面が緑色の草で覆われており、色彩豊かなよく手入れされた花々が俺達を出迎えてくれる。

他には大きな木がいくつか生えていて、鯉のいる池もある。

その池には時間の流れを感じさせる、竹に水が入って、一定間隔で音がなる鹿(しし)おどしもついている。


ちょうどお昼の時間を少し過ぎたぐらいの時間だっただろうか、俺達は屋敷の中に入る。


屋敷の中には執事さんがいた。帰った俺達を出迎えてくれるようだ。


「クレア様、アオト様、昼食の時間でございます。食堂までお越しください。」


「ノリス、ちょっと待っててね。アオトに今買ってきた装備を渡して着替えてもらうから。」


「さようですか。では冷めないうちにお早めにおこしください。」


この人がノリスさんだったのか、アリスはあのあとこの人に怒られたのだろうか。

俺はそんなアリスに詫びる気持ちでクレアと屋敷の中を歩いていく。


広い屋敷の一室には服が保管されている場所があり、そこの試着室らしきところに案内され、俺は今着替えをしている。

鏡が置いてあって、その前で俺は服を脱いだ。グッピネルに殴られたところはロフヒールで完治していて少し驚いた。

新しく買った、黒色と白色のコントラストが付いた服とズボンを履いて、おまけの魔導石がついたネックレスを首からかける。

試着室から出てくると同時にクレアがこう言った。


「おお!似合ってるわよ。黒色に染めてもらったんだね。なんでアオトは黒色にしたの?名前的には青色の衣装だと思ったんだけど。」


「俺はあんまり服とかに興味ないんだけど、黒と白っていう組み合わせが好きなんだ。あと名前は全然関係ないと思うぞ。まあけど、似合ってるなら良かったよ。」


新しい服を始めて着たときはテンションが上がるものだ、俺は少し興奮気味でクレアと食堂に向かう。


「ねえアオト、昼食が終わったら魔書を読んで魔法を勉強してね。今のレベルなら魔法を習得して、たぶん使えると思うから。フェアリー茶屋までの道中、アリスを守ってあげてね。」


「そのフェアリー茶屋ってのはそんな危険なとこにあるのか、俺も運が悪いなあ。」


そんな事を言っている間に食堂の前につく、扉を開けると背筋をのばしてスカートに手を当てたアリスが起立している。

アリスは俺達に向かってコクリと礼をしながらこう言った。


「おかえりなさいませ。クレア様」


いや!俺は? アオト様は?もしかして装備を変えてわからなくなったのか?俺はそう思いたい。


「アリス、ただいま。待たせちゃったわね。」


クレアがそう言ってアリスにあやまると、アリスは速攻俺をにらみ始める。

どうやら怒っているみたいだ。やっぱりノリスさんにおこられてしまったのだろうか。


「たっただいま、アリス。」


俺は明らかに動揺しながらそういった。


「おかえりなさいませ…アオト様…」


なんかちょっと声のトーンが低いし、礼をしてるのに俺のことをにらんでるんですけど。


ノリスさんが、食堂に入ってきた。


「食事をお持ちいたしますので、そこにおかけください。」


俺に向かってそう言った。クレアは俺が座っている椅子の向かい側の椅子に座り、食事が出てくるのを待っている。

クレアの右斜め後ろにアリスが立っている。自分に怒っている相手がいるところで食べるご飯はあんまり美味しくないだろう。そんな俺の様子を感じ取ったのか、クレアはこう言った。


「アリス、アオトは『アリスを守るためなら何でもする』って言ってたのよ。」


クレアがニヤついている。

その言葉をきいた瞬間、アリスはビクッして


「なッ!」 

甲高い声を上げ、頬を赤くさせる。


「なっなにをいってるんだクレア!」

俺も恥ずかしくて、勢いで立ち上がり、そう言った。


「でも、そのために装備を新調したんでしょ。しっかり守ってあげてね。」


「……そうだな。アリス、俺が悪かった。」

そう言って俺はアリスの前まで行き、手を出した。


アリスはまだ頬が赤いまま俺の手を見つめている。

しばらくして、少し震えながらも、俺の手を握ってきてくれた。


「これからもよろしくな。」


「はい!」

アリスは俺を見上げて会心の笑みを浮かべ顔を少し傾ける。


そんな俺達を見て、クレアも微笑んでいた。

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