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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
24章

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838 「布教」

二十四章開始。 よろしくお願いします。


別視点。

 ポジドミット大陸。

 この世界における西側の大陸。 地形は起伏が少なく、中央部から北部にかけては広大な森が広がっており、未開拓の土地が多い。

  

 反面、南部は開拓が進んでおり土地の大半の開拓済で、もはや人間の領域と言っていいだろう。

 南部に存在するバフマナフという国はほぼグノーシス教団に染まっており、影響力が非常に強い。

 これは隣のリブリアム大陸南部にある国家――アタルアーダルにも言える事でもあった。


 理由は海を挟んでいるとはいえ、グノーシス教団の本国であるクロノカイロスが近いからだ。

 その結果、建国時点での強力な支援を行い、恩を着せる事で国の運営にまで口を出せるほどの干渉を可能としている。


 影響力が強いのは大陸中央部――正確には中央からやや南側の国家であるアルドベヘシュトも同様だが、こちらは離れている分、やや影響力は弱い。

 大陸中央部から北は未開拓の大森林が広がっている。 そこは魔物の巣窟となっているだけあって非常に危険度が高く、奥に行けば行くほど人が寄り付かない魔境と化している。


 アルドベヘシュトから北へ行った位置。 大陸中央部のやや北側にその場所は存在した。

 独自の魔法で樹木を成長させ、巨木へと変えてから切り倒してその上を住処とする。

 そここそがユトナナリボ――エルフ達が住まう樹上都市だ。


 ヴァーサリイ大陸に存在したエルフの都市との違いは、彼等はそのたった一つの都市以外の領土を持たない事だろう。 当時の彼等はグリゴリによる干渉を受けて居なかったので、規模も小さく慎ましやかに暮らしていた。 外敵の魔物の脅威から身を守りつつも自然と共存するという理念を基に健やかに生きていたのだ。


 ――だが、そんな彼等にある日、転機が訪れる。


 海を渡ってある一団が現れたのだ。

 彼等はハイ・エルフを名乗り、保護を求め、その代償に知恵と力を齎すと彼等は持ちかけた。

 エルフは長命ではあるが、数が少なく同族を大切にする傾向にあった事もあり、はるばる海を越えて来た同胞を見捨てるような真似はできずにハイ・エルフとそれを率いるブロスダンという青年(・・)を受け入れた。


 ハイ・エルフを受け入れた事によって彼等の生活は大きく向上する事となる。

 魔物に対して効果のある魔法道具や武器の生産に始まり、食料の自給、生活環境の整備。

 一気に進んだ変化にエルフ達は戸惑ったが、豊かになって行く事は歓迎するべき事なのでブロスダンの存在は大いに喜ばれる事となる。


 ブロスダンは次々と成果を叩きだし、エルフの中でも一角の存在として注目されて行く。

 気が付けばブロスダンはユトナナリボのトップの座に納まり、前族長の娘であったアリョーナと結婚するに至った。


 エルフの都市――ユトナナリボを掌握したブロスダンが最初に行った事は何か?

 

 ――布教だ。


 ブロスダンと彼が連れて来たエルフ達は次々とユトナナリボの各所に変わった像を建て始めた。

 彼等によれば知識と栄光を授けてくれる偉大な存在との接点となる物との事。

 一部の住民は訝しんだが、結果を出して盤石な地位を築いたブロスダンに逆らえる者は都市内に存在しなかった。


 少しの期間を経てユトナナリボの中心には巨大な神殿が建てられ、内部には無数の像が立ち並ぶ。

 ブロスダンに取ってはそれが全ての始まり。 彼にとっては都市の掌握は前提に過ぎなかったのだ。

 こうしてかつてヴァーサリイ大陸に存在したエルフの都市のように、この地もグリゴリによる干渉を受ける事となり、彼等の力によってハイ・エルフが増える事となる。


 ブロスダンの妻であるアリョーナもその中の一人だった。

 グリゴリによる支配を受け入れたユトナナリボが最初に行った事は何か?

 戦力の増強だ。 グリゴリは前回の敗北――ヴァーサリイ大陸で拠点を失った理由を戦力不足による物だと考えていた。


 その為、戦力の増強は必須と言っていいだろう。

 以前と同様にハイ・エルフの肉体を用いての憑依では勝てないと理解していたので、求めるのは自分達の本来の肉体。 可能な限り完全な形での召喚が成されなければならない。


 召喚に必要なのは触媒と大量の魔力。

 本来なら現実的ではないが、それを可能にする物が森の奥深くに存在した。

 聖剣エル・ザドキ。 辺獄以外でなら無尽蔵に魔力を産み出す事が出来る代物だ。


 強力な魔物が群生している地で近寄ることが難しい場所ではあったが、憑依の使用が可能となったハイ・エルフの敵ではなかった。

 憑依の反動によって幾分かの犠牲者を出したが、無事に聖剣を得る事に成功。

 担い手としてアリョーナが選ばれ、正しく運用する事も可能となった。


 そして担い手を得た事で機能を十全に使用する事が出来るようになったエル・ザドキ。

 能力は他者や物品への魔力供給。 それはグリゴリを召喚するに当たっては非常に都合が良い。

 ただ、魔力が足りていたとしても肝心の触媒が問題だった。


 彼等が完全に近い形で現れるには呼び出す為の起点となる存在と大量の肉が必要となる。

 前者はハイ・エルフを使い、後者は周辺に生息していた大量の魔物の死骸で代用。

 召喚に必要な魔力は聖剣で賄う。 ハイ・エルフ達による大掛かりな儀式の結果、世界にグリゴリが降臨する事となった。


 


 最初に召喚されたグリゴリ――アザゼルと名乗った個体は圧倒的な神威とも言えるオーラを放ち、それを見たエルフ達は即座に平伏。 彼等はこの瞬間、自分達は神の降臨といった奇跡に立ち会ったと感動の涙を流し続けていた。


 召喚されたアザゼルは早々に目的達成の為に行動を始める。

 彼の目的は一貫して戦力の増強だ。 その為に大陸北部へと侵攻。

 目的は大陸北部に存在する聖剣――アドナイ・ツァバオトと生息している魔物の掃討。


 特に北部には遥か昔から巨大な魔物が存在しており、仲間を召喚する為のコストとしては非常に優れていたからだ。

 幸いだったのはアドナイ・ツァバオトの所在が北端ではなく北部だった事もあり、入手は比較的容易だった事と早々に担い手が決まった事だろう。 選定された担い手――ブロスダンは手にした聖剣を用い、次々と魔物の群れを屠り、その死骸をかき集める。  


 そうして築き上げた魔物の死骸の山を用いて二体目の天使を召喚する事に成功。

 召喚されたシェムハザと呼称される個体と聖剣が二本揃った所で、彼等は次の目的へと動き出したのだった。

 

誤字報告いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 知識や技術を提供しつつ、その代わりに自分達の思想を広めて集団を掌握する。 洗脳と布教、手段は違えどやっていることはオラトリアムと同じなのですから皮肉ですね。仮に主人公が先に接触していたとして…
[一言] 以前(6章)のブロスダンは子供だったけど、それが青年に……それだけの年月はまだ経過してない気がするし、これは恐らくグリゴリが何かされましたね。 悪魔召喚とかの原理と同じだとしたらですが、グ…
[一言] ブロスダンが来なければ変わらず生活できたのにねエルフたちも.... でも来たのが主人公でもリブリアム大陸上陸のことを考えると....
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