表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
18章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

600/1442

599 「森抜」

九、十、十一件目のレビューを頂きました。

ありがとうございます。 頑張りますよ!


続き。

 大型魔物の縄張りに入ってからは寧ろ、移動が楽になった。

 小型の魔物は大型を避ける傾向にあるのか、全くと言って良い程に現れなくなったからだ。

 代わりに周囲を縄張りとしている大型の魔物は即座に襲っては来るが、基本的に一、多くても三以上の数では来ないのでマネシアの盾で止めて貰い、私が首を落とせば済むだけの話で、対処が非常に楽なのだ。


 お陰で距離が稼げる上、襲撃される頻度が激減して負担が軽くなった。

 大型魔物が縄張りとしている場所は木々が薙ぎ倒されており、視線が通り易い事もありがたい。

 しばらく――とは言っても数日の距離を進むとまた木々が密集し始める。大型魔物の縄張りを抜けたと言う事だろう。


 マネシアが注意を促す。

 私は頷きつつ慎重に進むと――案の定、小型の魔物に襲われるようになった。

 ただ、こちらは以前に遭遇した種と違い、手足に羽のような物が付いており、木の上から滑空して襲いかかって来る。


 その為、周囲だけではなく上にも気を配らないといけないのは中々厄介だった。

 

 ――とは言っても攻め手の幅が広がっただけで飛び道具を持っている訳ではないので、慣れてしまえば対処はそこまで難しくはなかった。


 幸いにも個体数も少ないらしく、攻撃の密度も薄いので比較的ではあるが楽だった事も幸いした。

 フォンターナ王国が近い事もあるのか、行けば行くほど魔物の襲撃も減少傾向にあり、私達がアープアーバンの突破に成功するまでそう日数はかからなかった。




 「何とか突破には成功したようね」


 マネシアの言う通り、アープアーバンを抜けた事はすぐに分かった。

 視界が一気に広がり、明らかに舗装されている街道があったからだ。

 遮る木々がなくなった所為か風がとても気持ち良かった。


 視線の先には広大な土地が広がり、遠くには街が見える。

 長らく魔物の領域を歩き続けた所為か、人の営みを見るととても安心した気持ちになった。

 

 「まだ、気を抜くのは良くないとは思いますがこうして街を見ると少しほっとします」

 「そうね。 いけないとは思うけどちょっと安心するわ」


 マネシアも同じ気持ちだったのかそう言っていたので、私も同意する。


 「行きましょう。 まだ日は高いと言っても昼は過ぎてるわ。 夜になる前に街についておきましょう」

 

 歩き出したマネシアの背を追って私も街へと歩き出した。



 フォンターナ王国。

 ヴァーサリイ大陸中央部からやや北寄りに存在する小国家。

 主な収益源はアープアーバンに生息している魔物の素材と水稲と呼ばれる穀物だ。

 

 聞けばこの水稲、育成がかなり難しく、この土地以外で収穫ができるまで育てるのは難しいとさえ言われているらしい。


 ……その割にはウルスラグナ――いや、オラトリアムでも出回っているが……。


 どういう事だろうか?

 オラトリアムの作物の出荷量と種類を見ればあそこが農業関係にかなり力を入れているのが分かる。

 ただ、話を聞く限り、水稲は環境に左右されるので、果たして可能なのだろうか?

 

 それとも何か秘密でもあるのだろうか?

 疑問は尽きなかったが――


 「では、先に用事を済ませてしまいましょう」


 ――マネシアの言う通り、先にやる事がある。 

 場所は変わってここはアープアーバンから最も近い町――名前はゾンネンというらしい。

 私達は日が落ちる前にと急いで向かい、こうして辿り着いたと言う訳だ。


 ……とは言っても相応に時間がかかったので、今ではすっかり日が落ちてしまっている。

 

 到着して真っ先にやった事は換金と宿の手配だ。

 流石にウルスラグナの貨幣は使えないので換金所で交換と道中に手に入れた魔物の素材を売却して資金を調達する。

 そして最初に宿を取ったのは、野宿が長かったのでいい加減に屋根のある場所で眠りたかったのだ。 それはマネシアも同じだったようで、私達の間では共通の意見だった。


 拠点の確保を終えた後は冒険者ギルドでの認識票の更新と掲示板に貼られている依頼の確認。 路銀は多いに越した事はないので、請ける請けないは別としてこういった情報は仕入れておいた方がいいと言うのはマネシアの言だ。

 ここはウルスラグナと違ってアイオーン教団の影響力は皆無。

 その為、稼ぐ手段はいくらあっても困る事はない。


 やる事が済めば後は宿で休むだけだ。

 本格的に動くのは翌日からになる。

 

 「明日には南部へ向けて出発ですか?」


 今私達が居る場所はゾンネンの宿の一室で、寝台が二つ並んだだけの簡素な部屋だったが、周囲をあまり気にせずに済むので気持ちはかなり楽だ。

 私の質問にマネシアは小さく首を振る。

 

 「いいえ、数日は滞在する予定よ」

 

 訝しむ私を見て彼女は苦笑。

  

 「私達はこちらの事情に疎いわ。 この近辺の情勢や目的地であるアラブロストル=ディモクラティアの情報を事前に仕入れてから向かおうと思うの」


 なるほどと彼女の考えに頷く。

 正直、行ってしまえば何とかなると思っていたので、そこまでは考えていなかった。

 

 「クリステラ。 貴女の気性は分かり易く、私個人としては大変好ましく思うわ? だけどここでは何の後ろ盾もない私達は慎重に行動しなければならない。 分かる?」

 「はい。 つまり問題が起こったとしても独力で切り抜ける必要がある。 その為、可能な限り問題が起こる要因を取り除こうと言う事ですね」

 「え、えぇ、そこまで難しく考えなくてもいいのだけど、エルマン聖堂騎士からは南部の情勢も仕入れておくように言われているので、そっちの情報も仕入れる時間も欲しいのよ」


 そう言えばエルマン聖堂騎士が出発前言ってましたねと思い出す。

 仮に聖剣の入手に失敗したとしても大陸中央部から南部の情報が手に入ればいいと。

 少なくともアープアーバンを抜けた事が無駄にならないようにとの配慮だろう。


 抜け目のないエルマン聖堂騎士らしいとも言える。

 

 「……とにかく、私は明日から情報収集に入るからその間に――」

 「分かっています。 私とてここで遊び惚けるつもりはありません」


 かといって情報を集める技能もないのでやれる事をやろう。

 マネシアの方針を聞いて私も自分のやるべき事、やれる事を考えていたのだ。

 

 「ギルドで依頼を請けて路銀を稼ぐ事にします」

 「お願いね? もしも可能であるのならそれとなく冒険者から話を聞いて貰えると助かるわ」

 「分かりました。 冒険者達から話を聞けばいいのですね」

 「か、可能であればよ? 無理に聞き出す必要はないので、慎重にやってね? 本当、お願いだから……」

 「大丈夫です。 任せておいてください」 


 何故か少し慌てた様子のマネシアの態度に首を傾げつつも大きく頷く。

 

 「では、明日以降は別行動で、夕方に宿へ戻り成果を報告し合うとしましょう」

 「そうね。 お互いに頑張りましょう」


 私達はお互いに頷いてその日は休む事になった。

 何故かマネシアが心配そうに私を見ていたがあれは何だったのだろうか?


誤字報告いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エルマン枠を押し付けられたマネシアさんの明日は如何に⁉︎ 帰る頃にはマネシアさんの治癒魔法技術が驚くべき練度に… 胃潰瘍生成機クリステラ様 普通に話しかけたつもりが下品な冒険者に絡まれて斬ってって未来…
[良い点] 祝600話 おめでとうございます。 [一言] これからも更新楽しみにしています。
[一言] クリステラという胃潰瘍製造機w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ