表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
17章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

540/1442

539 「農政」

続き。

 将軍と肩書きにつくだけあってアールはこの国の中でもかなり多忙だ。

 管轄業務の全容把握は勿論、部下の手綱もしっかりと握る必要もある。

 とは言ってもアールは一人、体は当然一つしかない。


 それを助ける役目を持つ者が存在する。

 補佐官と呼ばれる者達だ。

 彼等は将軍を陰に日向に支え、業務を円滑に進める。


 オフルマズドの将軍は基本的に若い者が選ばれる。

 理由は頻繁に交代させない為だ。

 将軍は一定の年齢になると引退という形で退役し、後進に後を譲る事になる。


 選ばれるのはオフルマズドに存在する義務教育(・・・・)機関で優秀な成績を修めた者からとなり、引退前の将軍はその中から自らの後継者を見出すという形を取る事になるのだ。

 アールは前任者の将軍から選ばれ、数年の研修期間を経て就任となった。


 勿論、例外はある。

 将軍が何らかの理由で急逝した場合は補佐官の中から暫定的に選ばれて業務を引き継ぐ形になるが、そう言った事が起こるのは極めてまれだ。

 ここ数十年の間、そんな事態は起こっていない上、大きな争いもなかった。


 その為、将軍には可能な限り長い期間、勤めあげられる者が望ましいとこの制度が生まれ、引退前の最後の仕事となる。

 アールは当時、学校で農業や畜産関係を勉強しており、将来はそういった道に進んで家畜や畑の面倒を見て生計を立てられればと人生設計を行っていたが、ある日いきなり現れた農政将軍を名乗る老人に拉致されて「俺の弟子になれ」と半ば無理矢理、彼の下へ通わされた。


 最初は困惑が先に立ったが、老人の話はアールには大変面白い物で気が付けば夢中で取り組んでしまい、老人を大いに喜ばせた。

 それから数年のある日、老人はいきなり「お前は卒業だ」とアールに言い放つ。


 アールは老人の下へ通うのが楽しかったので、もっといろいろ教えて欲しいと乞おうとした。

 それが彼の将来を決定させた。 

 老人はにこやかに会わせたい人が居るとアールを王城へ連れて行き、そのまま玉座へと連れて行く。


 アールが王の前に立ったのはそれが初めての事だった。

 そして老人は王の前ではっきりとこういったのだ「この者が我が後継者です」と。

 王が納得したように頷き、よろしくと言われた瞬間、退路が消え失せる。


 こうしてアール・ジェル・ダグラスは農政将軍になる事が決定となった。

 彼の仕事はその肩書の通り、農耕と畜産絡みなのだ。

 その為、仕事場もかなり広い。


 位置は国の南部――南から東にかけての場所だ。

 多種多様な作物の栽培に家畜化した魔物の飼育等を行っている。

 現在はフォンターナ王国から仕入れた水稲の栽培に着手しているが、栽培の手間と環境を整えるのに苦労しており、現状は芳しくない。


 「お疲れ様です」


 アールが向かった場所はその水稲を栽培している場所だ。

 彼に気付いた部下達が次々と挨拶を返す。

 

 「調子はどうですか?」

 「今の所ですが順調に育っています。 このまま行けばそう遠くない内に収穫が出来そうですが……」


 ちょうど休憩中だった部下に声をかけると進捗を教えてくれた。


 「前回の事もありますし油断せずに行きましょう」


 水稲はしっかりと実をつけており、このまま行けば確かに収穫が出来そうな感じではあった。

 しかし、前回に栽培した時はそこで失敗してしまったのだ。

 どうも水稲は病気や虫に弱いらしく、前者の影響で収穫が出来ない有様になり、後者の影響で数少ない食べられる実が食いつくされてしまい収穫がほとんどできなかった。


 その為、かなり多くの人出を割いているのだ。

 育てるに当たっての方法はフォンターナ王国での手法を再現しているので、基本は問題ないのだがどうもうまくいかない。


 それがアールにとっては屈辱だった。

 師である先代に様々な事を叩き込まれた彼は作物を育てる事に自信があったのだ。

 水稲も触るのは初めてだが、植物である以上は今まで学んだセオリーに従えば問題ない。


 そう考えていたので、未知の作物を育てる事に対しては好奇心しかなかった。

 だが、結果を見ればこれだ。 水稲は彼の想像を遥かに超える程の難物だったのだ。

 病気に虫害、魔法でどうにかできる部分もあったが根本的な解決にはならない。


 前者を防ぐ為に様々な肥料などを試したが、それをやると虫が寄ってくる頻度が増え、逆に虫を追い払う為に虫が嫌がる香等を焚くと今度は稲が枯れると。

 両立が難しく、加えて専用の水田という形態の畑を拵える必要があるので土地をそれ専用に改造する必要もあったのでとにかく手間がかかる。 加えて水路の整備などやる事は多岐に渡った。


 アールは当初、割に合わないのではないのかとも思ったが使用面積に対しての収獲量が他よりも多いので何としても成功させたいと今ではやる気に燃えている。

 

 「やっぱり、本家との差は環境ですかね?」

 「はい、僕もそう思います」


 部下の言葉にアールは頷きで返す。

 その見解が的を射ているからだ。

 フォンターナ王国は大陸中央部からやや北寄り、大してオフルマズドは大陸最南端。

 

 気候にかなり差が出るのは間違いないだろう。

 アールは気温と雨量が関係しているのではないのかと考えていた。

 流石に外に出られないので検証は不可能だが、そうではないのかとほぼ確信している。


 上手く育たないのも当然だ。

 ならば、オフルマズドでは違った育て方が必要なのではないのか?

 そう考えて現在実行に移している最中だ。


 アールはその後、部下と少しの間話し込みその場を後にした。

 まだまだ見るべき場所とやるべき事が多いからだ。

 彼――というよりは将軍の仕事は管轄内を見て回る事なので次へと向かう。


 何か問題があればそちらを優先的に処理するが、それがなければ現在走らせている様々な研究の進捗や成果の確認、そしてそれを束ねて定期的に行われる王への謁見時に報告をするといった形になる。

 忙しくはあるが楽しい毎日だ。


 アールはこの生活と仕事にとても満足していた。

 

誤字報告いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ