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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
11章

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339/1442

338 「背撃」

 ザ・コア第二形態。

 ドラゴン・ブレスを再現した物で威力はゲリーべの街を一瞬で火の海に変えただけあって、強力無比と言っても過言ではないだろう。 現状、俺の持つ手札で最大の火力を誇る。


 だが、欠点もあった。

 まずは魔力の消費量。

 前回の時は十数秒の照射だったがそれだけでも随分と持って行かれた。

 後の事を考えなくてもいいという状況でもないと気軽にぶっ放せない。

 

 そしてもう一点。

 発射の熱量に砲身がダメージを受けるのだ。

 その為、内部機構が熱で融解して再生まで他の機能が完全に使用不能になってしまう。

 前回、使用した際は直接根を突っ込んで修理を施す必要があったぐらいだ。


 本来なら城に喰らわせて一気にケリを付けたい所だったが死体が残らんような殺し方は不味いので却下となった。

 首尾よくアメリアを消し飛ばせたとしても生死不明を理由に契約不履行とか言われても敵わんしな。

 やるにしても消えるのを確認できる距離でだ。


 さて、話が逸れたが今回は欠点を踏まえ、照射は三秒。

 それだけあれば、連中を皆殺しにして釣りが出るし、再生にもそう時間はかからないと踏んでいたのだが……。


 「ぐおおおおおおおおお!!」


 六串が吼えるような声を上げ熱線を背中で防いでいる。

 奴の甲羅のようなデザインの鎧は目が眩む程の光を放ち、圧倒的な熱量に抗っていた。

 だが、処理しきれていないのは明白で、奴の鎧は即座に力を使い果たして熱とそれが齎す破壊による浸食を受ける。


 それでも奴は背を溶かしながらも庇った二人を完全に守りきった。

 光が途切れた後、鎧を失い、半分炭になった六串が小さく振り返るとやり切ったと言わんばかりに小さく息を吐き倒れた。


 「む、むっさん! 何やってんだよ!?」

 

 倒れた六串に香丸が駆け寄り、それに少し遅れて通路の向こうから加々良が飛び込んで来る。

 加々良は俺と倒れた六串を見てギチリと奥歯を鳴らす。

 しまったな。 下手にケチらずにもう数秒延ばせばよかったか。


 原型を留めている所をみると、六串は死んでいない。

 行動不能にはできたが、貴重な手札を切ってしまった事を考えると割に合わんな。

 再生には三十秒あれば問題ないが、見られてしまったのでもう使えん。


 随分と頑丈だったなあのダンゴムシは。

 恐らく装備していた鎧のお陰だろうとは思うが、大した防御力だ。

 

 「貴様ああああああああああああ!」


 怒りの咆哮を上げた加々良が突っ込んで来る。

 付き合ってられないし、修理している余裕がない以上は再生の時間を稼ぎたいので踵を返して走った。

 ちらりと振り返ると、香丸が既にかなり近い位置に迫っている。 思ったより速いな。


 奴は壁を跳ね返るように飛び回りながら進んでいた。

 猿みたいな奴――いや、もしかして本当に猿か何かなのか?

 不味いな。 追いつかれる。


 背後に気配。

 間合いに入った所を見計らってザ・コアを振るう。

 小さな舌打ちと同時に下がる気配。 手応えがない、空振りか。


 ザ・コアは――まだのようだ。

 動かそうとしてはみたが、軋むような異音がするだけで回転しない。

 無理にやれば回りそうだが、止めておいた方がよさそうだ。


 不意に真横に気配。 もう追いつかれたか。

 右側から襲って来る。 左腕を見られたから当然だろう。

 仲間がやられて怒っているのかと思えば意外に冷静だな。


 鉤爪を振るう。

 狙いは足。 あくまでも後続の為に動きを止める事が目的のようだ。

 さて、どうした物か。


 騎士の片割れは仕留め、ダンゴムシと蝶は戦闘不能に追い込んだ。

 残り半数。 随分と楽にはなったが、追い詰められて例の解放を使われても不味い。

 ゲリーべで戦った蠍の事を考えると複数に使われると厳しいな。


 ……もう少し距離を稼いで各個撃破が望ましいか。


 方針が決まった所でまずはこいつの処理だ。

 やや体勢が悪いが、左腕(ヒューマン・センチピード)を振るう。

 百足たちは香丸に襲いかかるが、勘がいいのか見えているのか急に減速して回避。

 

 即座に俺の後ろに付いて背を斬りつける。

 懲りん奴だな。

 さっきと同様に体内に入った所で再生して絡め取る。


 「くそっ! 腕だけじゃないのかよ!?」


 あんまり体質については見せたくないんだがな。

 真後ろに付かれている以上、仕方ないか。

 体内で骨を増やして硬質化。 距離が近いので狙わなくて済むのは楽でいい。


 骨は俺の背を突き破って香丸に襲いかかる。

 

 「な!? がぁぁぁ!! くそっ! くそっ!」


 大半が鎧に防がれたが一部は隙間から本体に突き刺さったようだ。

 刺さらなかった分は引っ込めて、刺さった分に返しを付ける。

 これで抜けなくなったな。


 「いっづ、ぐっそ……何で抜けない!?」


 後頭部に目玉を作って背後を確認。

 髪の所為で見え辛いが、どうなっているのかは分かる。

 俺の背から突き出た骨は香丸の喉と兜のバイザーの隙間から入って顔のどこかを突き刺したらしい。


 必死に引き抜こうとしているが上手くいっていないようだ。

 抜くのに忙しそうだな。 少し協力してやろう。

 伸ばした骨を体内に引っ込めて香丸の体を引き寄せる。


 刺さっている部分は返しを付けたので抜けずに俺の背に密着する形になった。

 同時に左腕(ヒューマン・センチピード)を伸ばして、自分の体ごと巻き付けて拘束。

 これで後ろからは俺が香丸を背負って走っているように見えるだろう。

 距離があるからどこまで把握できるかな?

 

 背に覆いかぶさって動きを封じようとしている?

 それとも拘束されていると気付いているかな?

 まぁ、どちらでもいい。 どうせ何をやっているか分からんだろうし気にしなくていいか。


 さて背中にくっついている間に済ませてしまおう。

 刺さったままの骨を操作して体内を穿孔。 どんどん伸びて奴の内部に侵入。

 内部を引っ掻き回しながら適当に掘り進める。


 「ぎ、ぎざままままままま」

 

 ガクガクと痙攣しながらバイザーの隙間から粘ついた血を垂れ流しながら刺さりっぱなしの鉤爪を動かそうともがいている。

 何をされているか悟ったのか、もがく動きは必死だ。


 ……取りあえず、脳みそかき回されて無事かどうか試してやるよ。


 何、次の階段までまだまだ距離がある。

 その間、ゆっくりと俺の背に乗っているといい。

 到着するまで生きていられると良いな?





 どうも使い慣れていない所為か、四肢以外で急に作った部位は動かし辛い。

 加えて、奴自身の再生力もあって、仕留めるのに一分以上かかってしまった。

 この辺は要訓練か。 後は突き刺した骨を回転させたり出来たらもう少し早く殺せたかもしれんな。


 ……今後の課題とするか。


 オラトリアムに居るみたいだし首途に相談してみるのもありか。

 骨を体内に引っ込める。

 同時に背に感じる重みが激減した。 香丸が死んだので中身が消えたからだろう。


 金属が転がる音が響いて後ろに流れる。

 鎧の兜や足、腕パーツが取れて床に転がった音だ。

 少々勿体ないが鎧は廃棄。 鉤爪は使えそうだし貰っておくか。


 拘束を解くと鎧がバラけて廊下に散る。

 刺さりっぱなしの鉤爪を引っこ抜いて右手に着けよう――小さいな。

 これは無理かなと思ったが、手を近づけると鉤爪と一体になっている籠手が大きくなった。


 なるほど、このギミックのお陰で解放しても鎧が壊れないのか。 

 感心しながらも内心で首を傾げる。

 考えているのは別の事だ。 さっきから道なりに走っているが次の階段はまだか?


 大雑把な位置関係は抜いた記憶で確認しているのでそろそろあってもおかしくないんだが……。

 角になっている所を曲がると広場が見え、視界に巨大な階段が目に入る。

 やっとか。 位置が完全に突き当りだ。


 これは侵入ルートを絞る為の構造と言った所か。

 一番奥に階段を配置する事で侵攻にかかる時間を稼ぎ、対策を取り易くすると。

 悪くない手ではあるな。


 ……このまま城中を走り回らされる事を考えるとやや面倒だが。


 階段に足をかけたが追ってくる足音は遠い。

 随分と引き離してしまったな。

 ここらで始末するかとも思ったが、時間をかけると他が集まってきそうなので、先に奥を押さえた方がいいと思い直し駆け上がる。


 時間を稼ぐ為に階段を破壊して先を急ぐ。

 登った高さ等を考えるともう一度階段を上るとテラス等がある上層に出られるだろう。

 宰相の正確な居場所は知らんが、偉いさんと言う事は王の傍辺りか。

 そう考えるのならこのまま駆け上がるだけでいい。


 構造は把握しているので場所は分かる。

 要はこのまま玉座まで攻め上がればいいだけの話だ。


 シンプルなのは分かり易くていい。

 

誤字報告いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ここの転生者集団、一回戦うだけのほぼモブにしては強かったな。転生者平均で見ても練度高そう
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