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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
11章

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324 「正光」

三件目のレビューを頂きました。 これからも頑張って行きます。


投稿時間が遅くなり申し訳ありません。

可能であればいつもの時間にも上げたいと思います。


別視点。

 最後の一人を袈裟に両断して仕留める。

 小さく息を吐いて周囲を確認。 敵影はなし。

 転がっている敵だった物に動きもない。


 そこでようやく私――クリステラは僅かに警戒を解く。

 審問官……余りいい噂は聞かなかったがここまでとは……。

 明らかに教団の聖騎士に選ばれない人格の者ばかりだったが、何故このような者達を登用したのか意図が理解できなかった。


 確かに動きは良かったが、それ以上に品性が下劣としか言いようのない者達で、連携もお粗末。

 動きが良いだけの野盗の群れとそう変わらない。

 とにかくここは片付いたけど、これだけ派手に戦ったので中に気付かれている。


 急いだ方がいい。

 増援が来る前に目的を果たさなければ……。

 屋敷へ向かって足を踏み出そうとして止める。 扉が開いたからだ。


 中から出て来たのは見慣れない全身鎧。

 金と白を基調とした配色で、両肩に巨大な魔石が嵌まっており光を受けて輝いている。 そして背には真っ赤なマント。

 さっき見たトウドウ聖堂騎士より一回りは小さいが、大柄な体躯に腰には豪華な装飾が施された長剣。


 ――異邦人か。


 その後ろから黒い帷子の審問官がぞろぞろと現れる。

 新手? それにしては妙だ。

 何故、全滅してから?


 疑問は直ぐに氷解した。 理由は彼等の動きだ。

 さっきの者達と比べて乱れがない。

 恐らく最初に出て来たのはこちらの手の内を見る為の捨て石か。


 一通り情報が出揃った所で本命を出したといった所だろう。

 異邦人は私が斃した者達を一瞥。

 小さく身を震わせると――


 「……よくも皆をやってくれたな! 許さんぞ悪党!」


 ――力強い動作で私を指差す。


 小さく眉を顰める。

 迫力とは裏腹にその声は女性の物だった。

 異形と言うだけあって体格は当てにならないようだ。


 異邦人はゆっくりと剣を抜くと構える。

 

 「皆! ここはわたしに任せろ! この悪党は正々堂々と打ち倒し、正義の裁きを与える!」


 それに合わせて周囲の審問官達は無言でやや下がる。

 

 「外の騒ぎに乗じてここまで忍び込んで来たと言う事は狙いはジネヴラ様か。 目的の為には手段を選ばないのはテロリストらしいな!」


 ……テロ?


 言っている事の一部は理解できないが、何やら憤っているのは理解できる。

 恐らく以前の私同様、教団を心の底から信じているからこその発言なのだろうが……。

 こうして外から見ているとその在り方の歪さが見えて来る。


 度を越した信仰は思考を閉ざす。

 その癖、本人に自覚がない所が性質が悪い。

 あの様子だと説得は難し……いや、無理か。


 どちらにせよ押し通るしかない。

 私は無言で浄化の剣を構える。

 

 「聖堂騎士"異邦人(エトランゼ)"三波(みなみ) (あかり)だ。 刻め、貴様を滅ぼす正義の名だ」


 同時に長剣が発光。

 それを見て少し驚く。 私の浄化の剣と似ているというよりは同じ物か。


 「驚いたようだな。 これこそ『真・浄化の剣』! 貴様の剣の発展型にして真なる破邪の剣!」


 異邦人――ミナミ聖堂騎士は剣を構えると真っ直ぐに斬りかかって来る。

 長剣を大きく動かし、上段からの振り下ろし。

 引き付けて躱し、懐に入って斜め下から胴体へ斬撃。


 魔法的な防御が施されているので両断はできないとは思っていたが、伝わった手応えは硬い。

 

 「っ!?」


 咄嗟に蹴りを入れて距離を取る。 

 浄化の剣を一瞥。 剣自体に損傷はない。

 対する相手の鎧も無傷。


 「無駄だ! 悪に染まった光ではこの聖なる鎧は抜けん!」


 恐らくこちらの付与効果を無効化する仕掛けを施されている。

 つまりはあの鎧に対して私の浄化の剣はただの剣と変わらないと言う事か。

 追撃を躱しながら攻略法を考える。

 

 繰り出される斬撃を観察。

 躱し、時にいなしながら見に徹し、見極める。

 相手の攻撃が十に届いた辺りで凡その技量が知れた。


 やはり異邦人は技量と言う点ではお世辞にも卓越しているとは言い難い。

 先程のカサイ聖堂騎士もそうだが、目の前のミナミ聖堂騎士も同様だ。

 最低限の体裁は整っているが、聖堂騎士として通用する動きじゃない。

 

 剣の腕だけなら聖殿騎士にすら及ばないだろう。

 だが、それを生まれ持った身体能力と装備の性能が覆す。

 異邦人は主に選ばれし戦士という触れ込みはこの身体能力から来ているのだろうと納得する。


 鎧による後押しがなかったとしても普通の人間を遥かに凌駕するその肉体は脅威ではあるが、技が伴っていない以上はそこまでじゃない。

 

 ……だが。


 私の剣は悉く相手の鎧に弾かれる。

 硬い。 相手の攻撃は当たらないが、こちらの攻撃も通らない。

 本来なら時間をかけて攻略の糸口を見つけたい所ではあるが、膠着に持って行かれるのは困る。


 「逃げるのだけは得意のようだな! だが、それがいつまで続くか!」


 ミナミ聖堂騎士の大仰な口上を無視して隙を探る。

 大振りの斬撃が来た。 動きは速いが攻めが単調過ぎだ。

 身を低くして懐に入り、重心が移動する瞬間を狙って足を払う。


 「なっ!?」


 ミナミ聖堂騎士は立て直せずに転倒。

 すかさず畳みかける。 背に飛び乗ってうなじの辺りを狙って浄化の剣で薙ぐ。

 先程と同様、硬質な音を立てるが手応えが違う。


 「……が……」


 足元で上がった苦痛の声を耳が拾う。

 関節は刃が通る。 ならばと更に斬ろうとしたが、立て直されるのが早かった。

 起き上がりながら長剣を振るってきたので、下がって躱す。


 ミナミ聖堂騎士は斬られた個所を押さえながら立ち上がる。

 兜のお陰で表情は伺えないが、挙動で怒っているのは分かった。

 

 「このっ! ……ふぅ。 認めよう、接近戦では貴様に分があると言う事を! だが、正義に敗北はない!」


 そう言うと長剣を地面に突き刺し、大仰な動作で腕を組む。

 意図は読めないが、警戒はしておいた方がいい。

 

 「見ろ! 正義の光を!」


 両肩の魔石が輝く。

 

 ……飛び道具か!


 嫌な予感がしたので正面から向き合うのは避けて走る。

 

 「『絶対正義光線(アブソリュート・ジャスティスビィィィィム)』!!!」


 両肩から光が迸り、触れた物を焼き尽くす。

 回避が間に合ったが、庭園が瞬時に炎に包まれる。

 凄まじい威力だ。 当たれば良くて戦闘不能、悪くて即死だ。


 だが、攻撃範囲は前方のみ。 相手の体の向きに注意を払えば躱せない事はない。

  

 「これも躱すとは中々やるな。 だが、逃げ切れると思うな!」


 再度、光が両肩から飛んでくる。

 相手の体の向きに合わせて走り、焼かれないように回避。

 光は地面を舐めるように燃やし、私が仕留めた敵の死体を焼き尽くす。

 

 ミナミ聖堂騎士が舌打ちして更に光を放つ。

 さっきから仲間の死体を焼いているのだが、その辺りはどう考えているのだろうか?

 そんな事が脳裏を過ぎるが、思考の大半を目の前の敵の分析に費やしている。


 三射目。 同様に躱すがそろそろ見えて来た。

 声に出さず数を数える。

 

 まず、攻撃前に両肩の魔石が発光。

 光り始めて二つで発射。 十の間放ち続け、三の間、動きが止まる。

 それだけ分かれば充分だ。


 攻略の糸口は掴んだ。

 接近戦では当たりさえしなければそこまでの脅威ではない以上、遠距離の手段を奪えば戦いようはある。

 まずは魔石の破壊を狙う。


 ――光が途切れた。


 その瞬間、私は方向転換。 数を数えながら一気に敵へと肉薄。

 二。 懐に入った。

 三。 肩の魔石が光り始める。


 ミナミ聖堂騎士がこちらの意図に気付いて長剣に手を伸ばすが遅い。


 四。 一閃。 すれ違い際に右肩の魔石を両断。


 「な!? き、貴様ぁぁぁぁぁ!」


 五。 怒りの咆哮と共に光が放たれるが、右側の魔石は破壊したので攻撃が私を捉える事はない。


 これで右側が死角になった。

 次は左肩の魔石を破壊すれば厄介な遠距離攻撃は使えない。

 後は少し削った後、隙を見て突破を試みよう。


 確かに彼女は強いが、それは生まれ持った身体能力に依る強さだ。 

 はっきり言って、狂暴な魔物と変わらない。

 力だけで技が拙いのだ。 もう、実力の底が見えたので、時間をかければ仕留められる。


 だが、今はその時間が惜しい。

 ここはやや強引に突破するのが最良。

 次に光が途切れたら残りの魔石を破壊して屋敷へ向かう。 


 半分になった光は躱すのが難しくなく、常に右側へ身を置けば当たる事はない。

 そして光が途切れた。

 よし。 行――。


 後方で衝撃音。 二つの影がこちらに向かって飛んでくる。

 いきなりの状況に私は攻めるのを中断。 距離を取って音がした方へと視線を向けた。


 そこにはさっきの広場に居たトウドウ聖堂騎士ともう一人見慣れない姿をした聖堂騎士。

 恐らくは異邦人だろう。 彼等の後を追うように何かが現れる。

 数は四。 一つは広場に居た少年。 残りは完全な異形だった。

 

 まず目を引くのが頭が二つある異形の魔物。

 残りは人に似た形をしているが人ではない異形の人。

 恐らくはダーザイン側の異邦人だ。


 「藤堂君か! 状況は!」


 ミナミ聖堂騎士が仲間に声をかける。

 

 「三波さん……。 すまない、こんな所まで侵入を許してしまって……」

 「そんな事はいい。 北間君もいるようだが葛西君はどうなった?」

 「葛西は彼女と戦っていた筈ですが……」


 トウドウ聖堂騎士は言い澱む。 

 それを聞いて何かを察したミナミ聖堂騎士が歯軋りのような音を漏らす。

 

 「貴様……貴様貴様貴様……葛西君を殺したのか……許さん……許さんぞ!!」


 ……ここに来て彼等が介入してくるとは……時間をかけ過ぎたか。


 内心で歯噛み。

 怒りに燃えるミナミ聖堂騎士は私に長剣を突き付ける。

 勘違いと言っても信じて貰えないだろうし、簡単に逃げられそうもない。

 

 私は何も言わずに剣を構えた。

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