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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
9章

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257 「救援」

視点戻ります

 ダーザインの自爆機構。

 制約と呼ばれるそれは対象の死亡、もしくは組織を裏切った場合に作動。

 対象とその周囲を完全に消し去る。


 裏切の定義とは何か?

 それは裏切ったと自覚(・・・・・・・)する事。

 本人が裏切を働いたと考え、それを実行すればボンッという訳だ。


 だがこの仕掛けには欠点があった。

 要は自覚なしで裏切ればそう見なされなずに作動しない。

 いつかのオールディアでやらかした奴が何故あんな真似ができたのかと言う答えもそれのようだ。


 ちなみにその件のもう一人の首謀者であるヴォイドはそもそも仕込んでいなかったと。

 流石に聖堂騎士に細工は難しかったようだ。

 話を聞けば聞く程、ダーザインと言う組織の脆さがみえてくる。 穴だらけじゃないか。

 

 …話を戻そう。


 どういう理屈かは知らんが問題は思考と言う訳だ。

 なら話は簡単。 裏切ったと自覚する前に脳を乗っ取って思考を弄繰り回せばいい。

 捕まえたフラグラの手首は魔法道具で空間を繋げてあそこに配置していたようで、指の傷口からそのまま脳まで攻め込んだ。


 フラグラは自分に何が起こったのか分からないまま俺に喰われて死んだという訳だ。

 変なギミックを仕込んだままの奴を配下にするのは抵抗があったので、完全に吸収しておく。

 ついでに記憶も頂いたので、色々と事情も分かった。


 話は数日前に遡るが、ここに集められた連中はアスピザルの思惑がどうのとか話し合いつつ、到着を待っていたが、そこに前首領が軽やかな足取りで現れた事で事態が動く。

 寝たきりじゃなかったのかよと突っ込みたかったが、どうも事情があるようだ。


 アスピザルの父親――プレタハングには連れが居た。

 テュケの使徒。 要は転生者だな。

 しかも片方には見覚えがあった。 王都で仕留め損ねた蝙蝠女だ。


 正直、俺が辺獄へ飛ばされた原因はこいつだ。 結果が伴ったから恨んではいないが不快な思いをしたのは確かだったので、見つけたら始末してやろうと決めていた。

 ここに来ているとはついているな。 今度こそ殺そう。

 残りの片方は蜻蛉か。 これまた色物が来たな。 まぁ、転生者は全員色物か。

 

 蜻蛉は使徒アキノ。 テュケ所属の転生者で、支給した技術や道具類の説明によく来るらしい。

 記憶を見た感じ、技術担当と言った所か?

 

 蝙蝠は使徒ウメモト。 こいつはあまり顔を出さないから顔を知っている奴は少なかったようだが、フラグラは数少ない面識があった面子に含まれていたようだ。

 まぁ、王都でやっていた事を考えると隠密性が要求される暗殺や諜報担当と言った所だろう。


 俺はそこで納得する。 あの時はステファニーとか名乗っていたが、本名あるじゃないか。

 やっぱりあれは偽名か。 まぁ、あのナリでステファニーとか冗談は顔だけにしとけよって話だな。

 いっそ怪奇蝙蝠女にでも改名したらどうだと言ってやりたくなる。


 さて、そいつらは何をしに来たのかと言うと、アスピザルを排除して前の首領を再び立てようと提案して来たのだ。

 正直、引退した癖に何を出しゃばっているんだと言ってやりたくなるが、夜ノ森の話通りの人物なら…まぁ、やる気になるだろうな。


 その親父とやらはアスピザルを随分と嫌っているようだし、フラグラを含めて他の連中もそこまで驚いている様子はなかった。

 手下どもからすればあの親子の不仲は周知の物だったらしい。


 記憶を覗いただけの俺ですら分かるからな。

 会話の何と薄っぺらい事か。 露骨なぐらい上っ面だけの会話だった。

 連中からしたら付き合いの浅いアスピザルよりも長い付き合いの親父の方を取るのは、頷ける流れだったな。

 

 それにテュケの連中から特典として強化処置をして貰えるらしく、ダーザインの掲げるスローガンを考えると断る理由は皆無だろうよ。

 アスピザルの人望の無さに小さく溜息を吐くが、よくよく考えると俺も似たような物だから何とも言えんと思い直す。


 残りのハリヤとか言う転生者と幹部の掌握を済ませたプレタハングはアスピザルの処分を表明。

 驚く程の行動力で段取りを組み、始末の算段を付ける。

 その行動にはまったく躊躇が無い。 美しい親子愛だな。


 それにしても疑っている事は良く分かったが、どうやってアスピザルの裏切に確信を――いや、そんな物はないのか。 あの父親はアスピザルを切っても問題なくなったから切る事を決めた。

 恐らくはそれだけの話なのだろう。 その点はアスピザルも同じだ。


 協力者を得て勝算が出来たから裏切った。

 

 …親子…か。


 俺はぼんやりとまぁ、そんな物だろうなと考える。

 子は親を選べない以上、合わない奴が親なら折り合いを付けるか排除を狙うかの二択だ。

 アスピザルは後者。


 そして親にとって子供は盆栽みたいな物だろう。

 自分にとって都合の良い形になるように育てる物だ。

 上手く行かなきゃ枝を切るなり折るなりして矯正。

 

 要は自分に都合の良い、理想を押し付けるだけの存在だ。

 上手く行けば流石俺の子と我が物顔で褒め、逆なら出来損ないと殴り倒す。

 俺の知っている親ってのはそう言う生き物だ。 プレタハングにとってアスピザルは出来損ないだった。


 それだけの話だ。

 さて、ダーザインの首領親子の美しい家族愛を確認できた所で、具体的な情報を確認しよう。

 連中はアスピザルや事前に街に入っていたジェルチ達の動向はかなり細かく把握していたようだ。

 

 実際、あの二人は勘がいいのか、合流せずに街に潜伏していた。

 その時点で二人も粛清対象にほぼ認定。 

 何とも思い切りのいい事で。


 アスピザルと繋がっているのは明白だったので、集まった所を一網打尽にするのが基本方針だったらしく、監視を緩めずに固まるのを待つ。

 獲物が揃った所で、次の段階に移行。

 

 ここから先はシンプルだ。

 テュケから来た連中とダーザインに残った転生者に加え、戦闘に長けた者をかき集め、数で押し潰す。

 アスピザル達は身軽に動くために部下を連れずに街に入っているから、この手は効果的だ。


 転生者の数は同数。 そして部位持ちの数は上。  

 加えて位階が二以上の部位持ち全員を駆り出しての包囲。

 最後にテュケが新しく開発した魔法の武具を装備した特殊な人員を配置。


 隠れ家は数はあるが連中が使いそうな場所は限られている以上、絞り込みは容易だ。

 それで当のアスピザル達は見事、網に引っかかり現在襲撃を受けているらしい。

 向こうも充分に仕留められると見越した戦力を揃えているだろうし、今死なれると困る。

 面倒だがさっさと助けに行くとするか。


 どうも俺の正確な情報は入手出来ておらず、助っ人で呼んだ冒険者と言う認識だった。

 俺はあぁと納得。 フラグラが一人だった事にも説明が付くな。

 脅威度は低いが不確定な要素なので念の為に潰して置こうとフラグラを送ったようだ。


 アスピザルや夜ノ森に戦力を集中したかったようで、要は俺に人数を割きたくなかったって事だな。

 お陰で楽に返り討ちにできたのは幸運だった。

 ついでに面白い物もいくつか手に入ったしな。


 個人的には美味しい相手だった。

 俺は魔法で姿を消した後<飛行>で空を飛ぶ。

 場所は街の北端、船の停泊場や倉庫等の物資の集積場が集まった場所だ。


 管理している連中が連中だ。 人払いや封鎖はお手の物だろう。

 念の為、高度を上げて接近。 敵の転生者共は全員飛べるから気を付けるに越した事はない。

 数分も経たずに目的地が見えて来る。


 …もう始まっているようだな。


 音が聞こえないのは魔法道具か何かで消しているのだろう。 

 前に俺もやったしな。

 戦況は――厳しいか。


 アスピザル、夜ノ森は比較的優勢。

 石切は建物を壊しながら中を移動しているようで見え辛いが、押されてるな。

 残りのジェルチ達はダメそうだ。 明らかに劣勢で、やられるのも時間の問題か。


 派手にやっているが少し離れた所でテュケの転生者とプレタハングが戦いを眺めていた。

 これで全部か?

 いや、特殊な魔法の武具とやらを装備した奴が見当たらんな。


 どこだ? というか武具って具体的に何なんだ?

 フラグラも詳細は知らされていないようで記憶になかった。

 探していると不意にテュケの転生者――蜻蛉の方がすっと手を上げる。


 同時に戦場から離れた建物数か所で小さく光が弾けた。

 間髪置かずに夜ノ森達に何かが命中。

 何をしたか良く分からんが、大した威力の攻撃だったようでほぼ全員が深い傷を負っていた。


 位置は散っていて距離は目算で七、八百メートル。

 一ヶ所に数人が建物と同じ色のフード付きローブを被っており、これは意識しないと見つからんな。

 ちらりと戦場に目を向けると、アスピザル達が動けなくなった所で高みの見物を決め込んでいた連中が悠々と顔を出していた。


 会話内容は分からんが何か得意げに喋っているのは分かる。

 大方、この状況のネタバラシでもしているのだろう。

 あの様子なら少し時間的に余裕がありそうだ。


 転生者共も止めない所を見ると、命までは取る気は無いのかもしれんな。

 聞けばテュケって連中は研究や開発に力を入れているらしい、そう考えるのならアスピザル達はこれ以上ない貴重な素材だろう。


 俺は視線を下に戻して手近な連中の真上に移動。

 この距離ならはっきりと見える。 数は三人、内二人は屈んで筒状の物を構えている。

 残りは目の前で何らかの魔法を起動しているようで目の前の空間がレンズのように歪んでいた。


 まるでスナイパーみたいだな。

 そんな事を考えながら急降下。

 連中が俺に気が付いていないようなのでさっさと片づけるとしよう。

 

 音は出したくないので真上から<風刃Ⅱ>を二連。

 屈んでいた奴と、魔法を使っている奴の首を刎ねる。

 同時に着地。 残りが俺に気が付いて振り返る前に顔面に拳を叩き込む。

 

 喰らった相手は声を出す間もなく崩れ落ちる。

 そいつを掴んで建物から飛び降りて、死んだ連中の自爆をやり過ごす。

 さて、調べさせてもらおうか。


 まずは意識を失っても放さなかった装備品からだ。

 強引に手から引き剥がして検める。


 これは?


 その武器は少し意外な形状をしていた。

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