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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
7章

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189 「巨魚」

 着地と同時に俺と夜ノ森は散って、行動を開始する。

 魔物達は俺達が降りてきた瞬間、待ってましたとばかりに標的を変えて襲いかかって来るが、そう来るであろうことは読めていたから散ったんだがな。


 地中から触手が襲いかかって来るが、お前らの対策は練ってあるんだよ。

 俺は武器を抜かずに下から襲い掛かって来た触手を躱して逆に掴む。

 その状態で魔法を使用<枯死>だ。


 掴んだ触手から水分が抜けて急速に萎れて行く。

 

 …このまま干物にしてやるよ。


 魔物も自分の身に起こった事に気が付いたのか、触手を強引に引っ張って自切。

 俺の手にはカラカラに乾燥した触手が残った。

 何かスルメみたいだな。

 

 試しにちょっと齧ってみた。 ちょっと噛み辛いけど食えないほどじゃないな。

 味があんまりしなかったが、喰えそうだったのでもう一口。

 周囲の連中が絶句していたが気にしない気にしない。


 それを隙と捉えたのか足元から大量の触手が飛び出し俺の全身に絡みつくが、寧ろ好都合だ。


 <枯死>を使って接触部分から水分を奪い取る。 俺の全身に絡みついた触手が次々と萎れて行く。

 それにしてもビックリするぐらい効果があるな。

 この魔法は接触しないと威力が出ないので、使用頻度はとても低かったがこういう相手には覿面に効くようだ。


 連中の攻撃手段が触手による接触を伴った物が大半なのも成果に一役買っている。

 まぁ、相性だな。

 俺の方は問題ないが、夜ノ森はどんな感じか――。


 雄叫びが聞こえた。

 少し驚いたので声の方へ視線を向けると夜ノ森が触手をひっ掴み、一本背負いの要領で魔物共を砂から引き摺り出しているのが見える。


 「今よ! 皆、仕留めて!」


 人間語で指示を飛ばしているが、身振りで何を言っているのか理解したのだろう獣人達はお返しとばかりに引きずり出された魔物に襲いかかる。

 その間に夜ノ森は負傷者の援護や、大きく動いて敵の注意を引いたりと随分な活躍だ。


 この調子ならすんなり片付くが……。


 さっきとは比べ物にならない規模の地震。

  

 ――પોતાને સમર્પિત કરો. હું ભૂખ્યો છું.


 そして脳裏に響き渡るさっぱり理解できない謎言語。

 出たか。

 

 『注意しろ! 厄介なのが出て来るぞ!』


 俺は声を張って周囲の獣人達に警告する。

 それを受けて各々身構えた。

 さぁ、何処から来る?…と言うか動けたんだな。


 自分が動けないからこそ手下を動かしていたものかと思っていたのだが、違ったのか?

 地響きのような音が周囲から響く。

 音が聞こえた方向へ振り返る。


 ――やはり海か。


 音が徐々に大きくなっていく。

 変化は直ぐに現れた。

 海面が一気に大きく膨らみ、何かが――。


 「おいおいこれは…」


 思わず声が出てしまった。

 でかすぎるんじゃなかろうか?

 どう見てもこれ山よりでかいんじゃ……。

 

 海面を突き破って現れたのは巨大な魚だった。

 暗褐色の外皮にあちこちに付いている巨大なヒレ。

 質感は見た感じ岩のように見えるが、全身に大小様々な亀裂が走っている。

 

 巨大な目が睥睨するようにギョロギョロと細かく動く。

 

 「シーラカンスかな? …これはまいったね。予想以上だ」


 いつの間にか降りて来たアスピザルが困ったような声を上げる。

 シーラカンス? 古代魚か何かだったか。 朧気だったが確かにあんな感じだったな。

 サイズは桁違いだが。

 

 ――હું ભૂખ્યો છું. હું ભૂખ્યો છું. હું ભૂખ્યો છુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછુંછું!!!


 咆哮。

 声にならないそれと俺達の脳裏に響くそれは明確な意思を以ってその場にいた全員を打ち据える。

 

 「…っ!?」

 「うは、すっごいなぁ」

 

 余りの声量に俺とアスピザルは思わず顔を顰める。

 少し離れた所に居る夜ノ森も耳を抑えて膝を付いていた。

 何言ってるか分からない上にうるさい。

 

 『あ、あんなの、どうすりゃいいんだよお…』


 一人の獣人が思わずと言った表情で呟く。

 それを切欠に周囲に絶望が伝播して、全体の戦意が急速に萎えて行くのを感じる。

 これは不味いな。


 実際、目の前――と言うにはやや距離があるが、それを差し引いても尋常じゃないでかさの怪獣だ。

 今までも巨大な魔物は見て来たが、あいつは文字通り桁が違う。


 「どう見ても全長150~250…いや、下手すれば300mぐらいはありそうだね」


 その後に昔見た特撮の怪獣よりでかいや、と呟くのが聞こえた。


 「俺も驚いている」


 驚くアスピザルと同様に俺もそんな事しか言えなかった。

 いやいや、でかすぎだろ? どうなってんだよあれは。

 後ろから足音。 振り返ると、離れていた夜ノ森が近づいて来るのが見えた。


 「あの人達はもう無理よ。 逃がした方がいいわ」

 

 夜ノ森は戦意が萎えかけた獣人連中を指してそう言う。

 だろうな。 あの様子じゃ居ても使い物にならんだろうな。

 折角、助けてやったんだ。 囮に使うのは勿体ないか。


 『おい、あんた等は街に戻ってこの事を報告してきてくれ』


 呆けている獣人の肩を掴んで揺すり、強引に現実に戻す。

 

 『あ、あぁ、あんたは……』

 『取りあえずだが、やれる事はやっておく』

 『わ、分かった。 援軍を連れて来る!』

 『早めに頼む』

 

 内心で期待はしてないがと呟きながら逃げるよう促した。

 獣人は尚も何か言いかけていたが「さっさと行け」と言って肩を押す。

 よろめきながらも獣人は俺を見た後、仲間に声をかけて撤退を始める。

 

 「周りを逃がしたのはいいけど、アレどうしよっか?」

 「その前に確認だが、あいつはさっきから何を喚いているんだ?」


 俺は一縷の望みをかけてそう質問した。

 内容如何によっては逃げようと考えたからだ。


 「あぁ、さっきの? お腹がすいたってさ」


 脳裏に存在した逃走の二文字を握り潰す。


 「放置して逃げるって手はダメそうだな」

 「そうだね。どうやって倒そうか?」

 

 …と言うかあいつは動けないんじゃなかったのか?


 疑問は直ぐに晴れた。

 よく見ると何かを咀嚼しているように口が動いている。

 海の魔物を喰って多少は回復したようだ。


 この様子だと放っておけば遅かれ早かれ動いていただろう。

 どちらにせよ逃げるのは論外だ。

 俺は背のハルバードを引き抜く。


 「取りあえず、ぶつかってから考えよう。 あんたが言っていた通り、まだ本調子じゃないだろうし、やるなら今だろうな」

 「そうだね。 じゃあ、頑張ってみようか」


 



 『何だありゃ…』


 自分の居る位置からかなりの距離があるにもかかわらず、圧倒的な存在感。

 有り体に言えばでかい。それも半端なく。

 それを見て俺――日枝 顕宗は思わずそう呟いた。


 今はウズベアニモスへ向かう第二陣を率いて向かっている最中だ。

 そろそろ街が見えて来るなと思った矢先にあれが見えた。

 あの巨大な魔物。どう見てもウン百mはあるぞ。


 どっから湧いて来た?

 隠れていたにしてもでかすぎるぞ。

 十中八九あの化け物がアスピザルやローが言っていた敵の親玉だろうが――。


 『どうすりゃいいんだあんなデカブツ』


 街の復旧の支援も兼ねた第二陣なので人数はそれなりに連れて来ては居る。

 だが、あれに突っ込ませるには不安しかないな。

 踏みつぶされて全滅するのが容易に想像できる。


 周囲の兵たちにも動揺が広がっているのが伝わるが、俺は空気を読まずに喉奥から無理矢理に笑い声を吐き出す。


 『ははは、すげえな。 どんだけでかいんだよって話だ。 だけどよ、あいつを仕留めたら暫くは飯には困らねえな』


 やや、わざとらしいかもしれんが無理矢理笑い飛ばす。

 何もしない内から圧し折れられては敵わん。


 『そうですな! それよりも保存の方法を考えるべきでしょう』

 『ははは、あれだけでかいなら食いでもありそうだ!』


 一部の察した連中が俺に追従して笑い声をあげる。

 多少はましな雰囲気になったが、向こうに着いたら具体的な手段を見せないとまた士気が落ちるな。

 そう考えると気が重いが、あんな奴が上陸したら俺の国から見ても他人事じゃない。


 ……にしてもあれどうしたもんかねぇ。


 正直、勝てる気がこれっぽっちもしないが――。

 脳裏に先行した三人の顔が浮かぶ。

 あの連中に期待するとしよう。


 実際の所、見てないから実力等は未知数だが、少なくとも俺の知らない知識を溜めこんでいるのは確かだ。

 そこに突破口を見出せればいいんだが…。

 はっきり言ってあのサイズをどうにかしろとか完全に俺のキャパを越えている。


 戦う事を想像してみたが…。

 まぁ、簡単にはやられない自信はもちろんあるが、逆に仕留められるビジョンが全く浮かばない。

 いいとこ嫌がらせぐらいにしかならなさそうだ。


 不意の轟音で俺の思考は強引に遠くの化け物へ向く。 

 どうやら動きがあったようだ。

 距離のお陰で何をやっているかよく見えないが、何かを飛ばしている?


 何かが大量に着弾して砂が舞い上がり、巨大な砂煙が立ち上るのが見えた。

 恐らくだが、何者かと交戦に入った可能性が高い。

 ウズベアニモスの連中が逸ったか、連中が仕掛けたか。


 どちらにしても状況はもう動いている。 

 これは少し急いだ方が良さそうだ。

 

 『先を急ぐ!全員ペースを上げるぞ!』


 俺は声を上げた後、目的地に向けて駆け出した。

 

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