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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
ΑνοτηερⅠ-Ⅱ Στοριες τηατ μακε Ηαρδ ςορκινγ περσον α λιττλε λεσς ηαρδ ςορκⅡ
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1440 「使途」

 俺は臭すぎる芝居を鼻で笑って目の前のガキの見た目をしたアメリアの足を踏み折った。

 悲鳴が上がるが事前に仕込んで置いた魔法道具のお陰で音は外に漏れない。

 平静を装ってはいたが、内心では冷や汗ものだった。 このクソ女、生きていやがったのか。


 体を乗り換えるとは流石に俺も読み切れなかったぞ。 

 ――にもかかわらず先手を打てたのはには理由がある。


 「な、ぜ――」

 「あ? あぁ、種明かしをしていなかったか。 逃げるのにお友達を頼るのはいいが、多少は疑うべきだったな」

 「ど、ういう……」

 「アキノつったか? そいつ頼りの逃走経路だったんだろ? で、お前は二人で逃げる為にここに来た」


 激痛で頭が回っていないのかアメリアの表情は困惑一色だ。

 ここまで言って理解できんとは察しの悪い奴だな。 腰のポーチから魔石を取り出して喉に当てる。


 「こーんな声だったろ? 『大丈夫? こちらは無事だから一緒に逃げましょう』」

 「あ、あぁ……」


 変わった俺の声を聞いてアメリアの瞳に理解が広がる。


 「残念だったな。 お前のお友達はとっくにくたばったぜ」

 

 アキノの残した所持品を確認した際、通信魔石が混ざっていたので、退路の確保に動いていたんだろうなと察しは付いていた。 ただ、逃げるはずのアメリアはロートフェルト様が仕留めたとの事だったので、そのまま放置しようとしたのだが、念の為に使用すると驚いた事に応答があったのだ。


 どうやったのか不明だが、肉体を乗り換えたようだ。

 以前までの俺ならそんな馬鹿なと笑うかもしれないが、この世界には肉体を入れ替える技術が存在するらしく声は違うが、応答した相手はアメリアである可能性は非常に高かった。

 だから俺は魔石を使用して声を変えて合流を呼びかけたのだ。 あの口調を完璧に真似るのは不可能なので戦闘で負傷した体を装って苦し気な話し方でごまかした。


 臭い芝居だとは思ったが、上手くはいったようで見事にアメリアは騙されてくれたという訳だ。

 合流地点に関しても今日に備えて王都中の怪しい建物は一通り調べつくしているので大雑把な位置を指示されれば当たりは付けられる。 


 ……で、ここで待っていたら間抜けがのこのことやって来た訳だ。


 何とか捕獲には成功したのだが、これはどうしたものかね。

 殺すのは簡単だが、この女には色々と喋って欲しい事が多すぎる。

 俺の判断でぶち殺しても特に叱責は受けないだろう。 言っちゃ悪いが、この状況はロートフェルト様の落ち度で俺はその尻拭いをした形になるからだ。


 要はアメリアの生殺与奪に関しては俺に権利がある。

 少し考えた。 確かにこいつは始末した方が後腐れはないが、こいつの頭の中身を改めないで処分する事は後々の面倒事に繋がりそうだと思ったからだ。 本音を言えば今回の襲撃は成功だが、何度もこんな事をやっていればどこかで致命的にしくじりそうで怖い。


 ファティマ辺りはロートフェルト様をお支えするのが我々眷属の使命でしょうと言い切るだろうが、盲目に従うだけではその主を危険に晒しかねない。 特に今回は国から手配までされてしまったのだ。

 聞けば今後は活動の幅をウルスラグナの外へと広げるとの事だったので、こちらの支援の届かない場所でやらかした場合、何もできなくなる。 その辺を回避する為にもこいつは生かしておいた方が良いかもしれない。 


 ……殺しちまえば何の害も齎さないが、何かに使える可能性も潰しちまうからな。


 俺は小さく溜息を吐く。 生かすにしても殺すにしても黙ってやるのは論外だ。

 報告、連絡、相談は組織の基本。 俺はその基本に従ってファティマに連絡とった。



 ――話は分かりました。 期待以上の成果です。 よくやりましたね。


 ――はぁ、どうも。 で? アメリアはどうしましょうかね? 


 事情を話すと流石のファティマも驚いていた。 あの状況で生き延びるとは思っていなかったからだ。

 お褒めの言葉を頂けるのは光栄だが、そんな事よりもこいつをどうするか決めて欲しい。

 弁護という訳ではないが、生かす事の利点は伝えておいた。 


 ファティマは沈黙。 考えている様だ。

 その間に俺は暇だったのでアメリアを全裸に剥いて妙な物を持っていないかの確認を行っていた。

 

 「ふ、こんな幼い子供に欲情するとは聖堂騎士様は大した――モゴ」


 俺は無視してアメリアの口を強引に開けて確認。 

 よし、歯には何か仕込んでいる事はなさそうだな。 尚もごちゃごちゃとうるさかったので両肩も外し、完全に四肢を使い物にならなくして床に転がす。


 徹敵的に調べたので逃げる心配はないはずだ。 かけていた眼鏡は怪しかったので没収した。

 何やら細工が施されているので後で専門家に調べさせる必要がある。 

 この分野は専門外なのでさっぱり分からん。 ファティマはその間にロートフェルト様とも話をしていたようで俺がアメリアに服を着せ終わったところで話が付いたようだ。


 ――どうなりました?


 ――オラトリアムまで移送します。 可能かは不明ですが、死なない範囲で情報を吐かせます。


 ――了解です。 移送はどうします? 俺がやりましょうか?


 正直、完全に逃げられる心配のない場所に放り込むまで安心できない。

 それにオラトリアムに帰ってのんびりしたいというのもあった。 

 久しぶりにスタニスラスと飲みたいしな。 


 ――いえ、貴方には王都でやってもらいたい事があります。 移送の指揮はサリサに執らせなさい。


 まぁ、そうなるよな。 


 ――分かりました。 では手配やらは――


 ――既に済ませました。 回収に人を遣りますのでそこで引き渡しを。


 俺は了解と返事をして<交信>を切った。 


 「随分と沈黙が長かったようだが、私の処遇でも考えていたのかな?」

 「まぁ、そんなところだ」


 <交信>中は無言になるのでアメリアには俺が何かを考えている様にでも見えたらしい。

 俺は内心でふうと一息つく。 取り敢えずだが、王都での仕事は一段落だ。

 だが、最小にこそ抑えたつもりだったが、それなり以上に派手にやったので後始末を考えると頭が痛いな。 以前であるなら胃が痛んだかもしれないが、眷属となって以来そういった悩みとは無縁だ。


 ……健康な体って奴は得難い財産なんだな。


 俺はそんな事を考えながら壁に寄りかかり、アメリアの苦痛に呻く声や質問を無視して回収に来る者達を待った。

誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 現場にエルマンがいるかどうかでこんなに結果が結果が変わるとは……本編では本命を取り逃したのに対し、こちらで完全勝利と言っても過言ではない結果ですね。 グノーシスの聖堂騎士ザカリーと枢機卿ジ…
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