1374 「紹介-外伝Ⅱ-Ⅰ」
御厨 傑
大学生。 ホラー系のサイト運営者兼動画投稿者。 ホラー映画だと最後に死ぬタイプ。
国内に散らばる怪談を検証する為、定期的に心霊スポットを訪れている。
元々、非日常に強い興味を抱いており、それを垣間見られる心霊スポットは彼の興味を非常に刺激する物だった。 今回は少し前に撮影を頼んだ親友が本物の心霊現象に遭遇したとの事で検証の為に現場へと足を運ぶ。 最も大きな理由は好奇心だが、もう一つの目的は心霊現象を記録する事で友人の助けになれるのではないのかと期待していたからだ。
先日に起こった集団失踪事件の生き残りとなった彼の友人は周囲から謂れのない誹謗中傷を受けており、引っ越しを余儀なくされた。 それでも付きまとってくる者が一定数いるとの事で元々修学旅行をサボるつもりでいた友人を無理に行かせた手前、責任を感じていたのだ。
そんな理由で向かった端境という街だったが、そこで失踪した条件などを再現し、異界へと足を踏み入れるべく挑む。 その結果、異界ではなく異世界――コスモロギア=ゼネラリスへと辿り着いてしまった。
帰還方法が存在しないとの事でこの世界で暮らしていかなければならない事となったが、彼には問題があった。 御厨 傑という人間は「非日常」に惹かれる人間ではあったが、非日常は日常がないと成立しない概念。 つまり、安全である日常が担保されていないと落ち着かない。
それにより彼の心は非日常から離れ、安定した日常を求めて焦りに焼かれていた。
だからこそ彼は接近中の異世界――オラトリアムへの威力偵察に参加したのだ。
そこに帰る為の手段があると信じて。
異世界転移者ではあるが、転移特典のようなものは手に入らなかったので戦闘能力は皆無。
身体能力も一般人のそれだった。 地平の塔で学んだ魔導鉄騎の操縦技能はあるが、それも並。
能力的には何の特徴もない彼だったが、襲撃の際は運よくオラトリアム外縁から内部へと侵入する事で生きながらえる事に成功したが、それで運を使い果たしたようで森の奥で変わり果てた親友と再会し、侵入の罰として生まれてきた事を後悔する程の目に遭った後に処分された。 死亡。
彼と彼の友人はその後、消えた人間として怪談の一部――非日常の象徴となった。
それが本人にとって幸せか否かは誰にも分からないが。
戝前 博
大学生。 傑の親友。 彼と一緒に端境へと向かった一人で運転手として呼ばれた。
怪談や怪奇現象に関しては興味はあるが半信半疑。 ホラー映画だと真っ先に死ぬタイプ。
今回もどうせ空振りで終わると思っていたので、彼女である藍子との旅行のつもりで参加していた。
目論見は外れ異世界へと迷い込む事になったが、傑を恨むような事はなかった。
ただ、藍子をこんな場所に連れてきてしまった事だけは強く後悔している。
その為、何を置いても藍子を優先すると決めていたので、オラトリアムへ向かう一団には加わらなかった。 長生きするという点ではその選択は悪くなかったが、本当にただの延命にしか過ぎなかったので判断としては間違ってはいなかったが正解でもなかった。 最期はグロブスターに寄生され異形と成り果て、愛する人を喰い殺す結果に終わる。 その後、オラトリアムで食肉として潰された。 死亡。
寳生 藍子
大学生。 博の彼女。 彼に付き合う形で参加。 ホラー映画だと死ぬ為に配置されるタイプ。
怪奇現象はあまり信じていない。 今回は博との小旅行のつもりで同行していた。
異世界に転移した事は大きなショックだったが、博が居れば大丈夫と思っていたのでメンバーの中で一番悲観していなかったのかもしれない。 博との出会いは合コンだが、人数合わせに呼ばれた事もあって交際経験はなかった。 そんな理由もあって博との関係は非常に良好で結婚も視野に入れている。
ちなみに近々、親に紹介する予定だった。
コスモロギア=ゼネラリスに飛ばされた時も不安ではあったが、博が居ればどうにでもなる。
そう信じて彼女は変わった日常を受け入れようとしていた。 藍子のそんな性格を誰よりも理解していたからこそ博はオラトリアムへはいかなかったのだが、襲撃が決まった時点で彼女達に未来はなかった。
偵察に向かわなかった結果、多少の長生きはできたがオラトリアムによる襲撃の際、グロブスターに寄生され異形へと変わり果てた恋人によって喰い殺された。 死亡。
西ケ迫 暢
フリーター。 傑とは中学からの付き合い。 今回は撮影係として参加。
ホラー映画だと馬鹿な事をして割と早くに死ぬタイプ。
心霊現象は割と信じている。 正確には存在して欲しいと思っていた。
適応能力に優れており、転移してコスモロギア=ゼネラリスにも真っ先に馴染んだ。
何だかんだと要領がよく、割と上手に立ち回れる男ではあるが好奇心が強く様々な事に何かと首を突っ込みたがる。 所謂、噂話が大好きな人種。
傑と決定的に違う点は心霊現象や怪奇現象は好きだが、それ以上に自己顕示欲が強いので超常的な何かの撮影に成功すれば一躍有名人になれるのではないかと思っていた。
その楽観故に今は無理でもいつかは帰れると信じていた事と自分が死ぬわけがないといった根拠のない自信を生み、その結果としてオラトリアムへの偵察に参加した。
結局、それが間違いだったと言わざるを得ない状況にはなったが。
こんな性格だが傑達に対する友情は本物で誘ってしまった事を後悔していた。
その為、自ら囮を買って出たのだが、結果は何も変わらなかった。
オラトリアム内部に侵入した事によって住民達の怒りを買い、精神が崩壊するまで痛めつけられた後に処分された。 死亡。
影沢 愛那
大学生。 傑達に同行する形で参加。 心霊現象の類は全く信じていない。
ホラー映画だと終盤に死ぬヒロイン枠。 基本的に自発的に行動せず流されていく性格。
傑達が検証に向かい切っ掛けとなった事件で行方不明となった妹の手がかりを探す為に同行していたのだが、それすらも彼女の意志ではなかった。
事件以降、行方不明になった妹を探す為に血眼になっている両親に手を貸してきたが、自分を顧みない二人に彼女はちょっとした疎外感を感じており、そんな彼女の態度を両親は薄情と感じたようだ。
進まない調査への苛立ちもあって影沢に強く当たり始める両親に彼女はもう何かもがどうでもよくなっていた。 傑達の調査に参加するのも両親から離れる口実と自分に何かあれば少しは心配してくれるのではないか? そんな気持ちもあって乗り気はしなかったが参加した。
結果的にではあるが影沢は行方不明となり、両親は深い絶望と後悔を味わう事となるがそれを彼女自身が知る事は永遠にない。 オラトリアムへの偵察に参加したのはもしかしたら帰れる手段が見つかるかもしれないと言っていた暢の言葉を少しだけ信じたから。
何かと世話を焼いてくれる傑がちょっと気になっていたが、その気持ちが形になる前に彼女の人生は終わりを告げた。 オラトリアムの内部に侵入した事により、生まれて来た事を後悔するような目に遭った後、喰い殺された。 死亡。
兒玉 剛良
会社員。 影沢同様、行方不明になった息子を探す為に同行。
ホラー映画だと雑に死ぬタイプ。 まずは自分の事で他は二の次、三の次なので、思い通りにいかないと非常に文句が多い。 道中もしつこく同じ質問をするので傑は鬱陶しいと思っており、博と暢、藍子はほぼ無視、影沢ですら知らない顔をしていたので誰にもまともに相手にされていなかった。
自覚もないので彼等の態度を受けて無礼なガキ共と傑達を内心では見下している。
コスモロギア=ゼネラリスに転移し、息子に何が起こったのかを凡そ察したので意地でも帰ろうと強引に戻ろうとしたのが今回の悲劇の始まりだった。 ある意味では全てのトラブルの原因。
大雑把な転移により、辿り着いたオラトリアムで彼は不法侵入者としての歓迎を受けその生涯を終えた。
少なくとも楽には死ねなかった。 死亡。
誤字報告いつもありがとうございます。
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