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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
ΑφτερⅠ Λοωε ανδ ψοθραγε αρε θσελεσς ςιτηοθτ αβιλιτυ

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1269/1442

1268 「運用」

明けましておめでとうございます。 

今年もよろしくお願いします。

 ――戦力の損耗率0.5パーセント。


 一部だが動きのいい個体がいるお陰で少数ながら撃破されている。

 型落ちの無人機だが、スペック的にそう簡単に撃破される事はないはずだった。

 オデッセイは撃破された際の記録を保存しながら、敵の戦力評価を上方修正。


 特にスローネ、ケルビムクラスは固有の能力を備えている事もあって、想定以上の戦闘能力を発揮している。 この戦いはオデッセイの有用性を上に認識させる為の評価試験でもあった。

 同時に無人兵器運用のデモンストレーションも兼ねている。 運用コスト、人的資源の節約――要はどれだけ費用対効果が高いのかを見せつける為にこんな回りくどい事をしていた。


 その為、敵軍には是非とも頑張って欲しいとオデッセイは期待している。

 同時にバックアップとして用意されている教団の混沌騎士達にも見せ場を作らなければならかったので簡単に終わらせるのは何かと都合が悪かった。 オデッセイはあくまで奉仕する存在。


 その為、奉仕対象の面子を潰すような真似は極力避けたかった。

 アンホーリーによる侵食は問題なく進んでいる。 有効と判断したオデッセイは次の作業へと移行を開始した。

 


 神聖騎達は隻腕となった巨人の腕があった部分を狙う。

 内部機構が剥き出しになっているので効果があるのではないかと期待したからだ。

 だが、彼らの攻撃は不可視の障壁に阻まれて効果があるようには見えない。


 ――クソッ! どうすりゃ倒せるんだ!?

 ――黙って攻撃を続けろ!

 ――駄目だ。 ドミニオン級以下の攻撃はほとんど受け付けない。

 ――だったら、やれる奴を援護すればいいんだよ!


 戦場では様々な言葉が攻撃と共に飛び交う。

 状況は拮抗状態に見える。 だが、それは意図して作られた状況であると誰も気が付かない――いや、そんな事実は知りたくない、知る必要のない事だからだ。


 彼らの自分達は戦えているといった現実逃避に近い思考は、その直後に起こった出来事に叩き潰される事となる。


 「……嘘だろ」


 誰かがそう呟いた。 何故なら彼らが見たのは世界回廊から姿を現した巨人だったからだ。

 

 「アレが最強戦力じゃなかったのかよ!」


 巨人の圧倒的な巨体、火力、そして存在感。

 どれをとっても神聖騎や深淵騎とは比較にならず、敵の最大戦力で撃破すれば瓦解を狙えると思い込んでいた。

 実際は思いたかったのだが、次々と全く同じ存在が現れればあの巨人ですら敵からしたら上位の戦力でしかなかったのだ。


 追加で現れた巨人の数は八。 地上に居るのを合わせれば合計で九体もいる事になる。

 そして追加で現れた八体は最初に現れた巨人の行動をなぞるように砲を構えた。

 戦力の全ては戦場に集結しており、巨人を阻む存在は皆無。 仮に居たとしても止められなかっただろう。


 砲口に光が集まり放たれる。 気付いた者達はどうにか防御しようと障壁などを張り巡らせたが、光の柱は彼らの必死の抵抗をあざ笑うかのようにあっさりと突破。 次々と大陸に穴を開ける。

 大陸に開いた穴の中心の全てにはセフィラが存在しており、この世界に十体存在する貴重なセフィラの名を冠する神聖騎はラーガスト王国の一騎を残して全て蒸発。 そこにあった生活の営みと文明諸共に跡形もなく、完全にこの世から消し去ってしまったのだ。 次いで、巨人達は穴を開けた大陸に向けて切り離した腕を射出し、楔のように打ち込んだ。



 ――アンホーリー設置完了。 相互リンクにより侵食スピード増加。

 戦場のセッティング完了。 騎士団に増援依頼――完了。

 どうかお力添えを。 オデッセイは新たに獲得した人工知能らしからぬ「気遣い」を隠し、バックアップに支援を要請した。 



 「は、はは、ふはははは! よく言った! 助けを乞われたならば征かねば騎士ではない! そうだろうジオグリス!」

 『あ、はい、そうですね』


 最初に設置された塔――アンホーリーに内蔵された転移装置を用いて現れたのは一人の女騎士。

 身に纏うのは軍服、腰には剣一本。

 そしてそれに続くのは彼女の部下達。 彼らは各々愛機を駆って戦場へとその姿を現した。

 

 銃のような物を持った機体、剣のような物を持った機体、背中にミサイルポッドを装備した機体と様々だが、共通している点は現在周囲で暴れている機体より高性能だという事だ。

 

 『ところで団長。 なんで機体持ってきてないんですか?』

 「馬鹿、お前、切り札はここぞって時に使わないと格好良くないだろ?」


 一人だけ生身で戦場入りした団長にジオグリスはついに機体に乗って来る事をうっかり忘れたのかと憐れみの籠った口調で尋ねるが、彼女は敢えてそうしたと胸を張る。


 『あ、舐めプっすか。 騎士の風上にも置けない最低の行いですね』

 「ち、ちがうし! 温存してるだけだもん!」


 ジオグリスの鋭すぎる指摘に団長はやや涙目になってそう答えた。


 『いや、「もん」て……』

 「う、うるさい! いいかジオグリス、ここはお前が仕切れ! 私は大将首を取って来るからな!」

 『あー……道分かります? 迷子になりません?』

 「お前、私の事を何だと思ってるんだ!?」

 『面倒臭い女』

 「チクショー! お前、帰ったら覚えとけよ!」


 団長はそういって姿を消した。

 消えたのではなく高速で移動した事により、姿が消えたように見えたのだ。

 

 『お父上はあんなに立派な方だったのにどうしてこうなったのか……』

 

 色々な人に影響を受けた所為かどうにもキャラが安定せず、周りからの彼女は奇人変人のカテゴリーで括られている。 欠片も擁護できない点にジオグリスは静かに瞠目した。


 

 『これで十!』


 雅哉のケルビム=エイコサテトラの高速突撃に因り敵機を撃破する。

 数が全く減らない。 徐々に押し込まれているどころか、セフィラの大半が潰されたと聞いてほぼ詰んでいると本陣のルクレツィアから連絡があった。


 戦場にいる者達は現実から目を逸らすように命を燃やして戦っているが、一度でも我に返ってしまうと戦う気力は残らず消え失せるだろう。 それ程までにこの世界は終わっていた。

 雅哉も他と同様で戦場の熱気に当てられて、僅かな可能性を信じて戦っている一人だ。


 考える事はルクレツィアの事。 彼女の為に俺は戦うと折れそうな気持ちを奮い立たせる。

 一機でも敵を倒す――ただそれだけを――

 そんな彼の思考は、本陣が襲撃されているという報告の前に消し飛んだ。

誤字報告いつもありがとうございます。

単行本一巻発売中なので良かったら買って頂けると幸いです。

二巻の予約も開始されたので併せてよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 1月1日についに最新話にたどり着いた(感無量) 謎の存在(こっちの話)から 絶対に全部読め!と言われて 主人公の感性に微塵も共感出来ずに胃がエルマンになりそうになりならが なんとかここまで読…
[一言] 天界の皆さん、困りますなぁ……そう簡単に倒されてしまっては無人兵器の有用性が証明できないではありませんか。 歩行要塞ってエネルギー問題やら建造コストとかの問題がありすぎて量産できるようなも…
[良い点] なるほど。「エンド・オブ・デイズ」は、「インデペンデンス・デイ」より5倍以上大きく、能力は完全上位互換で、さらに量産機である、と…。 オーバーキル過ぎる…。 [気になる点] 勝手に脳内…
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