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パラダイム・パラサイト   作者: kawa.kei
30章

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1158/1442

1157 「抑込」

続き。

 センテゴリフンクスへ殺到する虚無の尖兵。

 その様子を空から俯瞰で見ると黒い何かが街を覆いつくそうとする異様な光景が広がっているだろう。

 まるで砂糖に群がる蟻のように街を黒い何かが徐々に侵食していく。


 街とそこに存在する命が徐々に呑み込まれて行き――不意に街の中心に光が灯る。

 同時に爆発するような衝撃が広がり、街の内部と周辺に存在した虚無の尖兵が一瞬で消滅。

 街を侵食していた闇が吹き散らされる。 これはセンテゴリフンクスの中央に設置されたある装置の効力だった。


 虚無の尖兵は本質的には魔力というエネルギーの塊で、魔法的な何かで形状を維持している。

 つまりは外部からの干渉でそれで崩してやれば形状を維持できずに霧散。 上手く決まれば簡単に撃破――仮にできなくても弱体化を狙える。 戦場にいる者達の大半は知らなかったが、この装置はオラトリアムから仕入れた物なので信用度は高く、効果はかなり期待されていた。

 

 オラトリアムも辺獄で試し撃ちはしているので入念なテストを行った上での引き渡しだった事もあり、その効果は絶大。 干渉を受けた虚無の尖兵は自身の構成を維持できずに消し飛ぶのだが、これにはいくつかの欠点があり、空を焼き払った大魔法と同様に使用に莫大な魔力を要求されるので連発ができないのだ。


 現在、装置の傍で控えていた者達が別で用意された魔力の供給用の装置を使用して補充しなければならない。 当然ながら長丁場になる事が目に見えている事もあって、予備の装置も用意しているので後二回は即座に使える。 合計三機の装置をローテーションで使用する事で敵の侵攻をある程度ではあるが抑える事が出来るのだ。 空を焼き払った大規模魔法と同様に威力がある分、使いどころを見極めねばならない。


 吹き散らされた事によって周辺の敵は一掃されたが、後続が次々と街へと殺到。

 その執拗さには見方によっては執念すら感じられるが、センテゴリフンクスへと向かう影の群れにそのような感情はない。 ただただ無機質に手近に存在する魔力源へと向かい、その形状にこびり付いた残滓のような戦闘技能を以って消滅させる。 感情もなく目的だけ存在する機構。


 影の群れはその勢力を拡大させながら街へと向かっていく。


 ――核たる神剣がある限り、その侵攻は止まる事はないだろう。



 

 轟音。 その戦場で最も存在感を放つのは紛れもなく音だった。

 虚無の尖兵の群れが成す術もなく消し飛ばされる。

 竜や鳥類を象った多種多様な影の群れ。 そして様々な武器や兵器を扱う軍勢でもある。


 その勢いは津波と形容されても遜色ない規模だったが、圧倒的な闇の群れを正面から押し返すすさまじい密度の攻撃。 強化されたエグリゴリシリーズや量産型ザ・コアを装備した砲兵による砲撃。

 街に配置された列車砲の炸裂弾による驟雨。 空中を回遊しているディープ・ワンによる圧縮した水による薙ぎ払い。 ここ――オラトリアムに空いた穴はセンテゴリフンクスに発生した物とは規模が段違いで、最初から形状がはっきりした個体や大型個体が出現していたのだが――


 「結構、そのまま攻撃を続けなさい」


 ファティマは指示を出しながら戦況を見つめ続ける。 現状は問題なく迎撃できている。

 センテゴリフンクスにも現れているので今の所は想定内だ。 敵の攻勢も思った以上ではあったが想定の範囲内で納まっている。 ファティマに言わせれば虚無の尖兵達――タウミエルの眷属は灯りに群がる蛾のような存在だ。 強い魔力があれば襲いかかるだけ。

 

 つまりは高威力の魔力攻撃を続けていれば勝手に寄って来る単純な相手でしかない。

 問題は規模が無限という事だけ。 その無限も終わりがないだけであって瞬間的に発生する量は有限だ。

 情報によれば穴は拡大する事によって出現させる敵の規模に影響を及ぼすが、開く大きさも途中で頭打ちになるらしい。


 理由はタウミエルの生産量は無限ではあるが、生産ペースは有限だからだ。

 つまりは穴が広がり切った段階で敵を一掃すれば一時的にでも隙を産み出す事が出来る。

 作戦の第一段階としては穴の拡大が止まるまで膠着状態を生み出す事。


 この時点でセンテゴリフンクスの数倍規模の敵が出現しているが、オラトリアムにとっては虚無の尖兵との戦いはあくまで前哨戦に過ぎない。 現状での消耗こそあるが、戦力の損失は皆無。

 白兵戦を専門とする者達は出番すらない状態だ。 彼等の出番は敵が攻撃を掻い潜り始めてから――つまりは穴が開き切った後となる。


 その段階になると虚無の尖兵だけでなく上位種である無限の衛兵が出現するだろう。

 本格的な戦闘はそれらが現れてからとなる。


 ――今はまだまだ序盤。 本当の戦いは始まってすらいない。

 

 そんな状態で欠片の損失も出す訳にはいかない。 いや、出す訳がない。

 空からの敵はエグリゴリシリーズとディープ・ワンの攻撃で全て対処できている。

 特に失敗作とされていた追加装備を盛りに盛ったレギオン++とインシディアス++が思った以上の戦果を上げていたのは嬉しい誤算と言えた。


 大型化により威力を大幅に増した光線攻撃は飛行する大型の敵をも一撃で消滅させる。

 当然のように全機、聖剣による支援を受けているので供給範囲内から出ない限り撃ち放題だった。

 火力の向上と引き換えに旋回性能が犠牲になったが、この場面においては関係が全くなく、その性能を十全に発揮している。


 発射された光線が大型の個体を複数体打ち抜いて撃墜。


 「ひゅう! 見たか! 二体撃墜だぜ!」


 操縦していたゴブリンの一人が歓声を上げる。 パイロット達は当然のように勝つつもりなので誰が一番撃墜できるかで賭けていたのだ。

 当然ながら全員が自分に賭けており、同僚に何を驕らせるかを思案していた。

 そしてそれは彼等の間に取り交わされた約束でもある。


 ――皆で生きて帰ろうと。


 地上では大量のオークやトロール、力自慢の大型改造種が交代で量産型ザ・コアによる砲撃を繰り返していた。 今回の戦いに備えて大型化されたそれは彼等の腕力を以ってしても長時間の保持ができない重量で、撃ち終わった者は冷却と魔力の再充填が終わるまでその場に下ろしているぐらいだった。


 強化された事により向上した火力は虚無の尖兵の群れを容易く焼き払う。

 本来なら発射に際してタイミングを取る必要があるが、絶え間なく現れるので撃ち終われば即座に次が発射態勢に入り、そのまま発射する。


 魔力によって生み出された赤い熱線は敵の防御の悉くを無慈悲に食い破って消し飛ばす。

誤字報告いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 地獄の消耗戦に突入しつつあるセンテゴリフンクス側とオラトリアムの対比がひどいw 前者は悲壮感が漂い始めてるのに、こっちはまだまだ余裕。最後まで余裕があるかどうかは怪しいけれど……! グノー…
[良い点] センテゴリフンクスとは打って変わって、盤石の体制のオラトリアム。 敵の規模も段違いなのに、こちらの攻撃の規模も段違いというタウミエルにしてみれば悪夢のような光景。 オラトリアムの全てを結…
[一言] うーん、オラトリアムは攻撃力の桁が違う センテゴリフンクスの方はジリ貧の戦いになってるのに
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