1094 「焼出」
大聖堂内部は片付けと清掃がかなり進んでおり、焼け焦げたり破壊された壁や床、調度品の類も修理や交換がされているので随分と綺麗になっていた。
ちなみにグノーシス由来の天使の像やエンブレムの類はすべて撤去されている。
いつも通りサベージは外で待機となり、俺は珍獣と柘植達を連れて内部を進む。
内部の改装作業は完全に終わってはいないので作業員が忙しそうに行き来していた。
城の方も派手に壊れているのでここと同様に修繕と改装作業中だ。
珍獣達は周囲が気になるのかキョロキョロとあちこちを見回している。
ホールといくつかの廊下を抜け、地下へ続く通路へと向かう。
下への直通の階段へ続くホールは早い段階で改装されたので半ばで途切れていた階段もしっかりと床まで伸びていた。
俺がここを攻めた際に通ったルートをそのまま通って下へと向かう。
ただ、今回は特に急いでいないので飛び降りるような事はせずに素直に螺旋階段を下りる。
最下層へ辿り着くとこちらでも大勢のオークやゴブリンが大量にあった小部屋を全てひっくり返して中の物を片端から運び出していた。
連中には物の重要度は分からないので壊れやすそうな物とそうでない物で分類し、多少の目利きができる者が確認して価値がありそうな物は更に別に分けている。
そこを抜けて最奥の扉へと続くホール――珍獣の妹を処分した所だな。
柘植達には始末した事は伝えているが、珍獣には言っていない。
タイミングを見計らって自分達で伝えるとの事だったので好きにさせていた。
こちらは俺が派手に散らかしたので、まだ掃除が終わっておらずデカいモップを持ったオークがガシガシと擦り付けて床にこびり付いた汚れと格闘している。 あの辺は確か幼女枢機卿を粉砕した所か。
本人より床についた汚れの方がしぶとそうだなとどうでもいい事を考えながら奥へ入る。
扉は破壊したので修理せずに取り払っており、そのまま通ると例のオブジェクトが見えて来た。
「おぅ、兄ちゃん。 待っとったで」
オブジェクトの前では首途とその部下が様々な器具で調べているところで、少し離れた位置にアブドーラが居た。
「どうだ?」
「あー、悪いけどなーんも分からんなぁ。 材質不明、サンプル取ろうにも何やっても傷つかへんし、中身を調べよう思って色々やったけど魔力を弾きよるから手応えなし」
一応、教皇から得た情報は伝えているので、新しい発見があればと思ったのだが特にはなさそうだ。
「前情報は貰うとるけど、それ以上はあかんな。 そこの台座も調べたけど本体と同じモンでできとる以上はさっぱり、動かしたいなら兄ちゃんの言う通り対応した聖剣、魔剣を突っ込まなあかんわ」
「動かしたのか?」
「いや、人間以外は入ったら分解されるって話は聞いとるから試しとらん。 ぶっちゃけ、ウチでこれ使える奴は殆どおらんやろ」
この様子だと洗脳した連中も怪しいな。 ここまで使えないと本当に価値がないな。
「そうか。 で? 満足したか?」
「ん? あぁ、もう見る所もないし満足したわ。 ぶっ壊すんなら他を引き上げさせるからちょっと待ってくれ」
首途はそう言うと手を叩いて注目させた後「調査は終わりや! 引き上げぇ」と声をかけると奴の部下は手際よく片づけを始めると早々に引き上げて行った。
数分も経たない内にこの場には俺と首途、珍獣と柘植達、アブドーラのみとなる。
「……ロー殿。 間違いないのですか?」
静かになった所でアブドーラが口を開く。 あぁ、その事か。
教皇の記憶にあったので、ファウスティナの行動は大雑把だが掴んでいた。
ウルスラグナで随分と派手に暴れたようだ。 オラトリアムの近くにも来ており、育て親の古藤氏を追いかけまわした事であの近辺の地形データを持って帰って来ていた。
とどめに配下を増やすタイプの珍しい転生者がいたけど引き込めなかったのが惜しかったとか、抵抗されたのが鬱陶しかったとか言っていたので間違いないだろう。
「あぁ、直接手を下した訳じゃないだろうが、この中に居る女がお前の父親を追いかけまわして殺すように指示した。 実質、殺したようものだな」
それを聞くとアブドーラは憤怒に表情を歪めてオブジェクトに何度も拳を叩きつける。
当然ながら傷はつかないが抑えが効かないようなので満足するまで待つ。
いきなり暴れ出したアブドーラに珍獣は驚いたのか、ビクリと身を竦ませた。
「旦那。 これは一体――」
「あぁ、あいつは中に居る女に親を殺されてな。 八つ裂きにしてやりたいぐらい恨んでいる」
「ま、人の事は言えへんけど、好き勝手やって方々で恨みを買っとったみたいやしなぁ」
柘植達に簡単に事情を説明をしている間に気が済んだのかアブドーラが肩で息をしており、拳からは血が滴っている。
「満足したか?」
「申し訳ありません。 取り乱しました。 中の女を引き摺り出す手段は?」
「残念ながらないな。 こいつから出たいなら自発的に外に出るしかないらしい」
――ただ、成功するかは怪しいが、出てきたくなるようにはできる。
対応した台座は――まぁ、九番以外はどれでも行けるだろ。
一番近くにある魔剣用の台座に突き刺すと、特に抵抗なく奥まで入った。
同時に魔剣を第二形態に変形。 魔力を充填すると内部で破壊力に変換し、全てを焼き尽くさんと光り輝く。
「全員下がってろ」
俺がそう言うとその場にいた全員が来た廊下の方まで下がる。
外からの攻撃は大抵は弾くようだが、中からならどうだ? 第一形態でガワから削っても良かったが、面倒なので中から焼き尽くす事にしたのだ。
どうせ自発的に出てくる気がないだろうし、痛めつけて生き地獄を味わわせてやりたい連中からすれば不完全燃焼になるだろうがこれで駄目なら我慢して貰おう。
発射。 七本分の魔剣の力を収束させた光線が台座から本体へと直撃する。
それによりオブジェクトが光り輝き、内部から籠った衝撃が響く。
破壊は行けそうだな。 もう一発発射しようとした所でオブジェクトから光の塊が飛び出して来た。
それは転がるように地面をのた打ち回りながら形を成す。 全身焼け爛れて酷い有様だが、ファウスティナだった。 効果があるかは微妙だったが、中身を焼けばダメージは入るのか。
「――――――!!!」
声にならないのか苦痛のあまり変な音を喚き散らしている。 ゴラカブ・ゴレブの効果が乗った光線を喰らった事で、たまらずに出て来たようだ。 この様子だと効いていると見て間違いないな。
「アブドーラ。 そこに転がっているのがそうだ。 好きにしていいぞ」
「ありがとうございます。 ここでは見苦しい物をお見せする事になるので持ち帰っても?」
「構わない。 ただ、必ず殺せ」
アブドーラは大きく頷くとまともに動けなくなっているファウスティナの足を掴んでそのまま引き摺る。 廊下へ消えて行った所で珍獣が我に返ったのか「待ってくれ」と追いかけて行った。
さて、中身も無事取り出せた事だし、後は本体の処分だな。 俺は再度魔力を充填して光線を発射した。
誤字報告いつもありがとうございます。




