表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

魔獣の壺シリーズ

魔獣の壺 - 番外編 - アリスの旅立ち

作者: 夢之中

???:(アリス、アリス、、、)

辺りを見回しても、真っ暗で何も見えない。


アリス:(誰?誰なの?)


???:(アリス、アリス、、、)


その時、突然目の前が真っ白になり、

ゆっくりと視界が晴れていった。


アリス:(ここはどこ?)

目の前には、巨大な門らしき人工物があった。

そして周りを見渡すと、小さな広場のような場所だった。

少し後方は、下方が見えているので、崖になっているのだろう。

アリスは慎重に崖に近寄ると、その先を見た。

遥か遠くに街らしきものが見える。

真下は、降りるのが不可能なぐらい、急な斜面になっていた。


アリスは、一度身震いすると、巨大な門らしき物の方を向き、

ゆっくりと歩きだした。

何故だかは分からないが、そこへ行かなければならないという

気持ちだけはあった。


アリスがそこに到着すると、その巨大な物は、音もなく、

そしてゆっくりと観音開きに開きだした。


何の躊躇いもなく、門をくぐる。

そこが建物の中だというのは、すぐに分かったが、

人が住むには、巨大すぎる作りだった。

アリスは、自分が小人になって、

お城に迷い込んだような感覚にとらわれていた。


アリス:(ここはお城?それにしても大きい。

    もしかして、私が小さくなったの?)


アリスは、理由は分からないが、まっすぐに進むことが

正解だと感じていた。

そして、自分の感を頼りに通路を進んでゆく。

巨大な柱が左右に延々と並んだ通路のような場所に到着した。

通路の先は暗く、空気が淀んでいる感じがした。

延々と続く通路をゆっくりと進んでいくと広い空間にでた。

目の前を見ると、そこには巨大な壷があった。

それに近づくと、どこからともなく呪文のような声が

聞こえてくる。

何を言っているのかは分からなかったが、

なぜか危険であることだけは分かった。

声が聞こえなくなると、上空が急に明るくなった。

上を見上げると巨大な火の玉があった。

それが自分に向かって落ちてきた。


アリス:「きゃっ、、、。」

アリスは、キョロキョロと周りを見回した。

そこはベッドの上だった。

アリス:「夢か、、、。」


もう、この夢を何回みただろうか?、そう思えるぐらい昔から

見る夢だった。

最初のうちは、恐怖で震えていた。

何回も見るうちに恐怖は薄れ、

次第に夢を楽しむ自分がいることに気が付いた。

しかし、最後の火の玉だけは、別だった。


父の仕事の関係上、様々な人が家にやってくる。

食事の席に私も参加することも多かったため、

その会話から魔獣を知ることができる環境であった。

私が知っていたのは、人間と魔獣が戦っていること、

父がその戦いのために多くの出資をしていること

ぐらいであった。

私が魔獣王の事を知ったのは、勉強を教えてくれる先生が

討伐隊に参加することになった時だった。

討伐隊が出発してから2ヶ月後、先生が参加した部隊が

全滅したことを知った。

その時は、幼かったのかもしれないが、全滅という言葉から

死を連想できなかった。


夢は、これらの魔獣に関する色々な情報から見ているものだと

教えられていた。

そして、私もそれを信じていた。

今思えば、幼い頃に私の中にいた、あの人がいなくなってから

見始めた気がする。

あの人に喜んでもらうため、乳母に悪戯をしていた

あの頃が懐かしい。

そのせいなのか、今でも怒られない程度の悪戯を

やってしまう自分がいた。


連合暦20年3月1日、そう、この日の夢は今も忘れない。

その夢は、いつもの夢とは違っていた。

真っ暗な中、私を呼ぶ声は、温かくそして優しかった。

そして、その声は、耳から入ってくるというよりも、

直接頭の中に語り掛けてくるように思えた。

そう、あの人との会話のように。

残念ながら、その夢の大半は思い出すことができなかった。


???:((あなたは、選ばれました。

    勇気をもって立ち向かうのです。))


この言葉だけが唯一覚えているものだった。

しかし、恐怖に立ち向かう勇気、使命感が

心の底からじわじわと湧いてくるのだけは感じていた。


この夢を見てから、色々と考えた。

私は、いったい何に選ばれたのだろうか?

魔獣王を倒すことだろうか?

神聖魔導士の教育を受けてはいたが、神聖魔導士では魔獣王を

倒すことは出来ない。

それは分かっていた。

力がほしかった。

1人では何もできない。

そして、魔獣王討伐隊に志願するしかない事を悟った。

魔獣王討伐隊に参加するためには、A級以上のライセンスが

必要なことを知った。

そのために、傭兵にならなければならない事も。


最初に向かう先は決まった。

カイン王国だ。

そこで、傭兵になり、そして魔獣王討伐隊へ志願する。


自宅の図書室で、色々と傭兵の事も調べた。

しかし、そこには、傭兵になるための資料は無かった。


ここまで情報を集めたあと、ふと思った。

何故、魔獣王を倒さないといけないのだろうか?

魔獣との共存は不可能なのだろうか?

この結論はすぐに出た。

歴史を知っていれば明らかだった。

私は、様々な歴史書を読みなおした。

ザイムでの戦いは、一方的な虐殺だったと書かれている。

現に魔獣に襲われた後でのザイムの生き残りは皆無だった。

転移の魔法陣が完成する前は、各王国間の移動中に襲われる

旅行者が後を絶たなかった。

各王国の魔獣襲撃の記録もあった。

何人もの非戦闘員や女子供が殺されている。

魔獣に情けは無いのだ。

全ての魔獣がそうではないという人もいるかもしれない。

中には良い心を持った魔獣もいるかもしれないと。

私も最初にそれを考えた。

しかし、魔獣王に反旗を翻す魔獣がいないという事は、

そのような勢力は無いか、或いは潰されてしまった

という事だろう。

もし、恐怖に駆られて行動に出れなかったとしても、

人間が虐殺されているのを黙ってみている行為自体が、

自己保身を優先する行為だと思った。

信念よりも自己保身を優先しているということだ。

行動自体が全てを物語っている。

例えこのような魔獣と同盟を結べたとしても、

何もしないか、あるいは勢力図が変化すれば、

いずれ裏切るだろう。


もうこれは、生きるか死ぬかの戦いなのだ。

決して怖くないわけではない、周りで何人もの人が魔獣との

戦いで死んでゆく。

魔獣と出会ったら、逃げるか倒すかしかない。

魔獣は、いくら倒しても減る様子がない。

しかし、逃げれば、自分を追う魔獣の数が増え、

窮地に至る可能性が大きい。

結局は、生き残るには、倒すしかないのだ。

最初から、結論は出ていた。

いくら魔獣を倒しても終わりは無い。


倒すしかないのだ、魔獣王を。


自分なりの結論を出してから、すぐ行動に移った。


----


親愛なる お父様、お母様へ


私は知りました。

生まれる前から続く魔獣との闘いを。

多くの血がながれ、多くの知り合いが命を捧げました。

しかし、一向に終わることのない無限の恐怖を。


誰かがそれに終止符を打たないといけません。

誰なのかは分かりません。

私であるとも言えません。

私で無いとも言えません。


今の私では、それを成す事は出来ないでしょう。

しかし、そのための行動を起こすことはできるのです。

もし私であるならば、行動しなければなりません。

行動しなければ、そのチャンスを消してしまうのです。


私は、魔獣王討伐隊に志願すると事を決めました。

もう、誰にもこれを止めることはできません。


皆が平和に生きる世界、それが私の望みなのです。


                 アリス


-----


連合暦20年3月14日の深夜、

私は、置手紙を残して一人で家を出た。

そう、魔獣王を倒すために。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ