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扉シリーズ

ー扉ーショートストーリー 逃げられない

作者: 烏丸 嵐太郎

     ‐逃げられない‐


今、私はとあるビルの扉の前にいる。

何とも言えない重い雰囲気、ここには私の会社のお得意様がいるのだが・・・

入りたいけど開けれない、扉の前にいるだけで伝わるこの何とも言えない雰囲気は私を足止めする。

「何か、視線を感じるというか・・・ブキミ・・・入りたくねーよ、でも」

意を決して扉を開ける。

秋のカラッとした空気に交じって扉の向こうから生暖かい湿った空気が漂ってくる。

「やばい」と心で叫んだがもう中に入ることしかできなかった。

足が勝手に前に進む、奥から誘いの声が聞こえるようで気持ちが前に進んでいたのだ

昼間のビルの中なのに真っ暗で先が見えない「まさにみたいな雰囲気を出してんじゃねーよ」独り言を叫びながら誘われるように奥に入っていく


人を感知したかのように薄暗くライトが付く、後ろの扉がそっと閉まり私の目の前にはもう一つの扉が現れる。

「開けなきゃいけないんだろうが怖いよ」独り言をつぶやく

そして、扉を開ける。

またしても真っ暗な空間それでも中へ入っていく「誰かいますかー?ハザマ商事の坪倉です・・・」暗闇に言葉を発して何も帰ってくるわけでもなくその声はその空間へ消えてゆき、まるで何かに反射したかのように人のうめき声のようになり反響する。

「こえーよ、帰りたい、本当にこのビルで合ってたのかな?」

そんな時、背後に違和感を感じた。

首筋に息を感じる・・・なんだ?

そう思い振り返ると人がいた「うあーっ」当然叫び声をあげる。

背後の人物も声を上げた「ぎゃーっ」

走り逃げる私にそいつが追いかけながら私に放つ「待ってー、おいてかないでー」

?私は気づいた。

あの人はお化けじゃない?「すいません驚いて逃げちゃって」私は謝ると彼は私に返す

「私も驚かせてすいません、ここから出たくて必死で」

「なんだそういうことですか!だったらすぐですよ」

私はさっき入ってきた扉に手をかけた。

だが男はすぐに言葉を返す。

「そこ、開けても出れないよ!」

背筋がぞっとした。

「またまたー、そういう冗談言わないで下さいよ」

扉を開けると暗闇と扉のいっぱいある部屋・・・

「え!」私が声を上げると彼はこういった。

「閉じ込められてるんです。私たち」

その部屋の真ん中に歩きながら二人は向かう、男はまた話しかける。「私、知ってるんです、この空間、変な男が作って、来た人を閉じ込めて楽しんでる・・・陰気臭いでしょう、私、その最初の犠牲者ってわけ」

「どの扉を開けても外に出れないし、戻って出入り口の扉を開けてもまた変なところにつながる・・・えっへっへ」

なぜか男に違和感を覚えた。

「気味悪い奴だな、閉じ込められてんのに」そう思いながらも私も必死で出入り口を探す。

だけど、どこを開けても変な空間につながる。

「これって本当に出れるのでしょうか?」

「私にはわかりません、決まったルートがあるとか、なにか法則があるわけでもなさそうなので・・・ちなみに私ここで10年ほどさまよっているんですよ」

その言葉を聞いて絶望した。

「まじかよ、俺どうしよう」

それでも必死で出口を探した。何時間立ったのだろうか、ふと時計を見ると12時?

あれ、時間が進んでない?

「あのー、さっきあなた10年さまよってるって言ってましたけど、

時計かなんか持ってるんですか?」

そう答えると、「ああ、持ってますよ」おもむろに懐から懐中時計を取り出す。

その時計はチクタクと音を立てて時を刻んでいた。

「うそ!もう6時って夕方じゃないですか。冗談じゃないよ部長に怒られる」

早く出なければと思いながら無心に目の前にある扉を開いていく、だがその傍らでほくそ笑む男は何も手伝おうとしない、それにイライラしてきた私は男に怒鳴りかけた。

「お前も出たいんだろ!だったら一緒に出口さがせよコラ」

近づいてきた男は笑いながら俺に話しかけてきた。

「ははは、面白いでしょ?俺がな、ちょっといたずら心で変なビル、作ったんだ、そしたらどうだよ作った本人、出れなくなっちゃった。」

「普通さ、十年もたてば出れると思うじゃん窓一つないなんておかしいと思うじゃんへへへ」

「気づいたよ迷ってから半年たって、これさ俺、死んでんだわ、ビルなんてはなっから存在しないの!」

「俺の妄想の中から生まれたビルなの!」

「それをあなたが見つけてくれたの!」

「もう、逃がさないから」

「お前、これから俺の友達な」

男はニヤと笑うと目の前の扉を開けて私をその中に突き飛ばした。

「もう、外には出れないから、お前はもう俺の中に居るからさ、ひひひひひ」

そのセリフを聞いた私は完全に戦意を喪失した。

もう逃げられないと私は悟った。



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