入学式1
桜が舞い散る春の終わり、1人の男子をめぐる大波乱を巻き起こすとは、誰一人として知らない当事者本人たちですら・・・
春のぬくもりを感じながら歩く人々を威圧と冷気で道を空けさせる一組の男女、女というよりおばさんは、40代後半ながら、派手な衣装と厚化粧でもう少し上にも感じられる。このおばさんは、裕福そうな、装飾品を身の纏、満面の笑みで歩いている。このおばさんが威圧を放ち、男のほうが冷気を放っている。冷気といっても本当に寒さを放っているわけではない。その男は、20いかないであろう歳である。痩身ですらっとした身長でより細く見える。しかしこの男の顔は、隣のおばさんとは違い、何も感じてないであろうポーカーフェイスと、いうよりもすべてに絶望を感じながらも無表情を徹しているような顔。一言でいえば、死んだ顔である。
そんな2人が歩を進める場所は、開校僅か30年ほどの国立大学「日本総合大学」である。
ここは、日本の第一次産業衰退に伴い、今後の不況・恐慌対策として設立された。法学科・商業科・工業科・農学科・総合科の5科に分かれており、一般的な大学と何ら変わりがない。しかし、この大学の違うところは、入試が全学教科受けなければいけない。入試教科は、国・数・英・理・社のほかに専門知識テストとして各学科の専門教科も志望学科関係なく受けなければいけないのである。そのテストから志望学科と入試の結果で合否が決まる。場合によっては、志望学科の変更を学校側から要請することもある。希望通りにならなく理不尽極まりないが、この大学を卒業するということは、今後のビジネスに関わるのである。「日本総合大学出身」という肩書だけで卒業から定年後まで安泰が確約されている。一流大学の上を行く大学なのである。よって、入試倍率は総合定員200に対し、平均100倍になる。よって、各都道府県の特定受験会場において、受験が行われている。
その難関大学の入学式が今日行われる。着々ながら異様な雰囲気の中式は進んでいく。異様な雰囲気というのは、総理および天皇の挨拶、農林水産大臣や各方面の社長からの祝辞など、基本を逸脱した式だからである。そして、最後の言葉とし、入学生主席による決意表明である。
司会に呼ばれ、檀上に上る男性は新入生特有の顔を輝かせる様子も緊張する様子もなく、淡々としゃべりだした。
「決意表明 私は、この難関国立日本総合大学に入学できたことを心より嬉しく思います。この学び舎で多くを学び、今後の日本再建に尽力していく人材となり、最終的には日本国の首相となりたいと思います。 ―中略― 新入生代表 総合科 神野大地」
それは、教師陣すらも驚くほど完璧な決意表明であった。
付け加えておくと、神野は全教科においてトップを取ったことにより、入学前から有名人となっていたのである。
初めての投稿です。拙い文ですいません。中途半端な終わりになってしまうことが今後もありますので、もし気になって今後も読んでくださるのであれば、話数をためてから読んでください。