A俺死んだ? Qはいそうです
新作です。初のオリジナル物です。ジャンルは俺TUEEEEEEアクション。こういう物が苦手な方はブラウザバックを推奨します。
『ソレ』はある場所にいた。そこは宇宙空間に似た、漆黒の闇の中に無数の白い光が行きかう空間。その中において異質な赤い光を纏う『ソレ』―――光の塊が人型をかたどっている様なものは思案する様に歩き回っていた。足場もない場所を歩き回っていた『ソレ』は立ち止まると、まわりを見るように頭に当たる部分を動かす。そして、手に当たる部分を伸ばしまわりを飛び交っていた白い光の一つをつまむようにして持つ。次の瞬間、『ソレ』は一際強く発光し、その場から姿を消していた。
消える瞬間、『ソレ』の口元にはまるで笑っている様な裂け目があった。
◆
なんかベッドが硬い。
そんな感覚にうなされながら二割か三割か起きてる頭で考える。瞼越しにではあるが、外が明るい様だ。
…ま、関係ないな。寝る。
「ええい起きろっ」
「ぐげっ」
腹部に衝撃がはしる。何だ? 何されたんだよ俺? 思い瞼を一気に引き上げるがそこには
「知らない天井……が、ない!?」
そこに広がっているのは見慣れた網目模様の白い天井ではなくすがすがしく広がる青だった。太陽が適度に光をふりまき、心地よい風が頬を撫でる。気温も涼しめで気持ち良く、少々床が硬いが良い気持ちいi………zzZ zzZ
「起きろって言ってるだろうがあああああ!!」
「ぎゃああああああああああ!?!?」
痛い いたい イタイィィィイイイ!?全身が全方向から痛いって何がどうなってんだよ!?
幸いなのか意図的なのか分からんが痛みはすぐに引いた。が、それは余韻を多大に残しており、全身が弁慶の泣き所となってしまったのかと思うくらいだった。
………痛い
「うがー体が痛いー……?」
全身の痛みにうめきながら体を起こしたんだが、どうも部屋の壁の色が違う。メガネをはずしているので良く見えないが、茶色の本棚か白い壁かが起きたら最初に目にする物のはずだが。はて?
「眼鏡メガネ~」
「ほら」
「んあ、ありがとう」
誰か心優しい人が俺のメガネを取ってくれた。家族の誰かだろうか。声に聞き覚えがない気もするが。
そうして渡されたメガネをかけた俺は渡してくれた人の顔を見たわけだが
「……泥棒?」
目の前にいた幼女を指さしながら、俺の口はそんなことをのたまっていた。
「誰がだっ!起こしてやったのに!」
「ぐげっ ちょ、いきなり蹴らないで!?」
その小さな体のどこから出てるのか分からない強い脚力で蹴られて転がる俺。何か違和感を感じる。ゴロンゴロンと転がるが部屋の壁にぶつからず、そのうち勢いが無くなって自然に止まった体を起こす。
「……えーと、どちらさん?」
「君たちに言わせるなら神、等と呼ばれるに等しい存在かな?」
「…………ふうん?」
なんかよく分からんが俺ってまだ寝てる?
「なら頬をつねってあげよう」
「はえ? いたたたたたた!」
幼女に頬をつねられた。痛いって言うことはこれは夢じゃない? 起きたら目の前に電波幼女がいることが? ちょっと訳が分からない。
混乱してどうすればいいかわからない俺を前に、幼女は妙に低い声で言葉を続ける。
「混乱してる様だね? まあ、この状態で落ち着いてる様な人物だったなら切り捨てているが。そうだな、端的に事実を伝えようか。君は死んだのさ。まずはこのことに納得してくれたまえ」
「………」
やべぇ、なにがやばいってこの状況がやばい。俺ってば勉強のしすぎでノイローゼにでもなったか? というか何故幼女。幼女に対する願望でもあったのだろうか、俺。そんなもの自覚した覚えはないが、心の内では~、というやつか? うーむ、否定出来んな、俺ならありうる。
「そこは否定してほしいものだがね……。不安になって来るよ、これからが。まずは釈明だが、これは君の夢やら願望やらそんなものは一切関係ないよ。まあ、夢が眠っている状態で見るものだと仮定するなら、間違いではないかもしれないが。なにしろ君は永眠しているのだから。そうだね、最初にまわりを良く観察してごらん」
そう言われて自分のまわりのことに意識を向ける。幼女に言われて落ち着くなんて情けないが、まあ仕方ないか。
と、内心言い訳しながら周りを見たわけだが
「おおう、流石夢か。やっぱ夢で空を飛ぶってテンプレだよね」
「飛んでいるのではないさ。君はちゃんと足場に立っているだろう? それじゃあ、詳細の説明を始めてもいいかな? ま、信じなくてもいいんだがね。どうせ君に起こることは変わらない」
幼女に言われた通り、俺は空中に立っていた。ちゃんと足の裏に足場がある。高度は雲より少々低いと言ったところか。ついでに幼女を観察する。金髪でふわふわな髪、整った目鼻立ち、頭に乗った月桂樹の冠……月桂樹の冠? なんというか現実離れした幼女だな。今更驚かないが。服装は古代ギリシャ人みたいな布を巻きつけたような服。そして何より目を引くのがその目。人を引き込むような、圧倒するようなその目は赤い光を宿していた。
なにか分からないがあれは、あの目はやばすぎる。
それと声か。何回聞いても幼女の声ではない。例えるなら、そうだな、優男系の美青年がこんな声だったら違和感無いな。というか、今だと違和感がすごい。
「それじゃ死因かな。君の死因は原因不明の心臓発作。ま、不幸だったね」
「デ○・ノートかよっ!?」
静かに聞いているつもりだったが思わずツッコんでしまった。いやだがしかし、今回は悪くないと思うんだ。
「君の気持も分からないでもないが、何か特別な要因があるわけじゃないのさ。低い確率だが、確率があるなら誰かが当たる。今回はたまたまそれが君だったってこと。続けよう。そして不幸にも君は死んでしまったわけだが、ちょうど良く私は退屈していたんだ」
「どうしようもなく退屈していた私は思った。なにか娯楽を求めようと。その時に友達から聞いた話をおもいだしたのさ。曰く、自分の不注意で死なせてしまった魂をお詫びとして別の世界に転生させてやった馬鹿がいるそうなんだ。その話を聞いた時は私も笑った物だがね。私たちよりもよっぽど下等な魂に慈悲をかけるような手間をするなんて、とね。だがしかし、考えなおせばそれは十分娯楽になるんじゃないかと閃いた私は、魂の通り道に行って君の魂を取ってきたというわけさ」
これは……いわゆる神様転生と言うやつなのか? ずいぶん理不尽な神様な気がするが。俺が転生するのはあんたの暇つぶしの為かよ。
「魂…とかそこらへん詳しく聞いても?」
「構わないさ。それじゃ授業の時間だ」
そういうとどこからともなく黒板が出現する。
「魂って言うのはね、中身なんだよ。そして体は器。中身は再利用が効くが、器は使い捨てだ」
「つまり……輪廻転生?」
「おおむね合ってるかな。その循環の範囲が地球等というちっぽけな範囲ではなく、同じ魂レベルの全魂ってとこがちがうがね。記憶は器にくっついていて魂には残らないよ、私たちレベルになると違うけど」
「魂レベル?」
「そう。魂にはレベルがある。要は内容量のちがいだね。内容量が大きくなれば大きくなるほど振るえる力が大きくなっていく。最低位の君たち人間は世界に対して何も干渉できないが、最高位の私たちは世界を作る事さえ遊びのレベルだ。君たちにとっての100なんてのは私たちにとっての0,1にも満たない。そういうことさ」
なんというか、スケールのでかい話だ。疑問も残るが。
「しつもーん」
「どうぞどうぞ」
「なら俺の目の前にいるのはなんで幼女の姿をしているんだ? 声は青年だし、どういうこと?」
「ふむ、君に私はそう見えているのか。私たちのことを先に軽く説明してもいいかな?もちろん疑問にも応えよう」
「分かった。はじめてくれ」
「では私たちのことだ。私たちは中身と器が同じなのさ。私たち自身が器であり中身だ。あるいは中身だけとも言えるのかな? 魂ってのは不安定なものでね、自分の存在を安定させる為に器を求めるのさ。だが、私たち最高位の魂をもつものは自分の力で自分を安定させることが出来る」
「魂が形ある器を求めるのは、その器の外見や記憶で自己を確立させるため、他人に自分を認識させるためなのさ。しかし私たち程の魂は持つ力に個々の特徴を持っている。なので個別に認識できるし、認識されるなら自己の確立は容易だ」
「んー? つまり普通の魂は色がないから色を上から塗って、あんたらの魂は元から色つきってことOK?」
「おおざっぱだが大体あってるかな」
「それで私が幼女な件だが、私たちの魂に色が付いていると言っても同じレベルの者にしか認識できはしないんだよ。君は多分、自分の中の神のイメージで私を見ているんだろうね。見た目が幼女と言うところでは無く、声が青年のものであるという見た目との齟齬が君の神というイメージなんじゃないかな?」
「ほー、納得…とまではいかなくても理解はできる理由だな」
なんというか凝ってるな。これが現実にしろ夢にしろ。
「でさ~、今の状況が夢じゃないって証明できる?」
「難しいだろうね。現実と夢の境なんて本人がどっちと思ってるかで変わってしまうものだ。だがしかし、これから起こることを夢だと思ってるよりは現実だと思った方が楽しめると思うがね?」
そこらは様子見かな。でもなぁ、死んだって……死んだって、んなこと言われてもなぁ。
「で? 神に等しい力を持つアンタが俺を娯楽に使うって、具体的にどういうことさせるわけよ?」
「ふむ、私の友達が一つ世界を作ったんだ。それのモチーフが君が普段やってるMMORPG『ワン・オブ・ロード』なのさ。ということで、君をその世界に放り込んで、それを肴に酒でも飲もうという魂胆なのさ」
「………」
分かっちゃいたがすげえスケールの話だ。ってかアレか。今こそ普通に話しているが、俺はアンタらにとって観葉植物とか瓶に入れて巣を作るのを観察する蟻程度の存在なのか。
「わかってなかったのかい?ま、そういうことさ。ただしかし、そのまま放りこんでもすぐ殺されてしまうだろうし、それじゃ肴にならない。だからいくつか特典を授けることにしよう」
呆れたような声で言った後、特典を授けるなんぞと言いだしやがった。拒否権なんてないんだろうなぁ。はぁ~、新しい世界か。新しい生か。家族なんぞが気になるところではあるが、死んだそうだしなぁ俺。下手したら俺は娯楽の為に殺された可能性もあるな。
「いやいや、それはないよ。むしろ、君がそんな死に方をしたからこそ私の目についたのさ。その歳でそんな死に方はさぞやるせないだろうと思ってね」
「じゃあなんでちょうど良く俺のやってたゲームがモチーフの世界なんてあるんだ?」
「ふむ、私たちは世界の創造に飽きてしまってね。それはある程度パターンが決まってしまったからだ。だがしかし、君ら人間の創作意識はすごいね。唯一私らからも褒められる所だ。ということでいろんなゲームを元に世界を作ってるのさ。それはその一つ」
本当か? 考えても無駄か。俺に分かることではない。
「それじゃ続きだ。特典は三つ、一つは君がゲーム内で使っていたキャラのスペックを君にあげよう。二つ目は疑似的な不老不死、指輪物語のエルフと同等なものだ。たった百年程度では詰まらないからね。そして三つ目だが、これは君にゆだねよう。さあ、何がいい?」
「……そうだな、絶対に揺るがない健康とか大丈夫か?」
「無理だね。それは物理的な器をもつ者には無理だ。ちなみになんでそれを求めたんだい?」
「もともと俺は皮膚が弱くてな、いろいろと苦労したんだよ。だから、それをどうにかしたかったんだが、そうか、無理なのか」
「その目的にそった能力か。なら薬師なんかの知識と技能を完全習得なんてどうだい? 薬の材料は必要だろうが、自分の皮膚を守ったりするのは容易いだろうよ」
「そうか、ならそれで」
「それじゃ目をつむりたまえ」
ギュッと、目をつむった俺の頭に何か温かい物が流れてくる。それは体全体に広がり冷えて行く。完全に自分の体が冷えたところで、目を開けていい、と言われ目を開ける。
視界に何も変わったところはない、いや若干遠くが見えるようになったか? そう思い少し目を凝らすと
「なぁっ!?」
一キロも二キロも先の光景がすぐ近くで見たように拡大される。
「ふむふむ、上がった自分のスペックに驚いてるようだね? 自分の服装も見てみたまえ」
そう言われ自分の体を見る。着ているのはさっきまで来ていたスウェットのパジャマではなく、俺がゲーム内で着ていた装備、運回避型物理盗賊装備だった。
「一つ、多分最後の質問だ。俺のコレクション(・・・・・)は付いてくるのか?」
「当然だ。アレは君の代名詞だろう?」
ニヤリ、と怪しげな笑みを浮かべた神に等しい者に、俺も自棄でニヤリ、と返す。
「さて、最後に確認だ。君はあちらの世界で何をやってもいい。こちらからは何も要求しない。ただ、君が何かに巻き込まれやすいように世界に働きかけるかもしれないが、ね」
「絶対に俺を選んだことを後悔させてやるよ」
「ふっふっふ、どうだろうね。多分無理さ。せいぜい私たちを楽しませてくれ」
確認事項も連絡事項も終わったのだろう。神は幾何学的に両手を動かし始める。
「ああ、そうだ。世界を元にしていると言っても国家もマップもまるで別物だからね? それとこっちで独自進化したものもあるみたいだよ」
「で、その世界の移動はどうするんだ? やっぱテンプレ的に落とし穴か? 扉か?」
「移動、ね。下を見たとき気付かなかったのかい?ここは既に、君の地球ではないよ?」
「え?」
思わず下を見てしまう。その時足元の支えが無くなり、同時に上からかなりの力―――横目に幼女が足を振り上げるのが見えたから、かかと落としだろう―――が俺に突き刺さり、俺は地面に向かってダイブしていた。
たたきつけ型異世界転移、そんなもの俺が世界初だろうな~。
読んでくれた読者様に感謝を、そして感想をくれたら更に奮起しちゃう。
拙い文章ですが、これからもよろしくお願いします。